思いつくまま

みどりごを殺す「正義」はありや?
パレスチナ占領に反対します--住民を犠牲にして強盗の安全を守る道理がどこにあろう

于建:社会安定のベースラインを守るために(5)

2010-03-25 20:06:06 | 中国異論派選訳
 鬱憤晴らし事件の第三の特徴は、権威ある情報がないことです。インターネットが広まってから、携帯のSMS〔ショートメールサービス〕が広まってから、中国には権威ある情報がなくなりました。(PPT)これは2006年8月の浙江省瑞安市です。瑞安は温州市の管轄下の小さな市ですがとても豊かです。この人が飛び降り自殺をしました。彼女は誰でしょう? 英語を学んだ大学卒業生〔の高校英語教師〕で、瑞安の金型会社の社長の息子に嫁ぎました。シンデレラが白馬の王子に嫁いだのですから、彼女は幸せなはずだったのに投身自殺したのです。彼女が自殺してすぐに夫が〔実際は発見した警備員が〕警察に通報しました。警察署は自殺として処理したのですが、彼女の家族は認めず、特に彼女の教え子が認めませんでした。教え子たちはこの写真をネットに掲載し、ネット上で全国人民、温州人民、瑞安人民に問いかけました「こんなにきれいな女性が自殺するでしょうか?」。全国のネットユーザーはすぐに「あり得ない」と返しました。「こんなにきれいで、こんなに輝いていて、まなざしも素晴らしい生活にあこがれているのに、何で自殺なんかするもんか!」。そして大勢の人がネット上で彼女は他殺に違いないと分析し、その殺害方法を議論しました。彼女の教え子はその分析を見て、「全国人民がみな自殺ではないと言っている、僕たちはどうすべきか? 先生のために真相を糺さなくてはならない」となりました。真相をただすために何をしたかと言うと(PPT)夫の親の工場を襲い、政府に押しかけました。

 ですから、現代の科学技術は中国の政治形態を変えたと思います。例えばある人が高級な時計を身に着けていたとします。携帯電話にはほとんどカメラ機能がありますから、写真を撮ってネットにアップロードし、「この人は国家公務員で某部門の指導者だが、彼の給料でこの数十万元の時計を買えるだろうか?」と書きます。ネット上で検索すると、十八代前の先祖まで探し出せます。妻の仕事、息子の仕事まで調べられます。そして最後に汚職官僚だという結論を出します。この結論は面倒なことを引き起こします。以前ネットの無かったころは時計を証拠に汚職官僚を告発しても、市共産党委員会書記が荒唐無稽なことだと言うでしょう。今庶民がネット上で汚職官僚だと言う見解を発表したら、その役人には面倒なことになります。市共産党委員会書記が調べないと言っても、民衆は許しません。民衆は、彼は汚職官僚なのに市共産党委員会書記はなぜ彼を調査しないのかと言い、市共産党委員会書記も調べられます。この書記は何をやってきたのか、検索して、この二人が以前一緒に仕事をしていたことも見つけるでしょう。そうなると市共産党委員会書記は自分が調べられないように、彼を調べるしかありません。そこで市共産党委員会はすぐに調査することを決定します。調べると確かに汚職官僚でした。今の人はみな調べたらぼろが出ます。インターネットが普及してからは、人を陥れるのも簡単になりました。私たちが会議を開いている時、1カートン200元のあなたが高級なタバコを人に贈るとします。彼が入ってきて席に座ると、タバコを渡し、写真を撮ってネットにアップロードする。国家公務員なのに何でこんなに高級なタバコが吸えるんだ? 調べたら汚職官僚の同じような物語が出来上がります。少し前にある検事長が高級車を運転している写真がネット上に載って汚職官僚ではないかと騒ぎになりました。ですからインターネットが普及してからは以前だったら「細かなこと」が「事件」になるのです。

 場合によっては私たちは確かにネットの力を利用する必要があります。腐敗現象を白日の下にさらし、さらに法的な処理にゆだねる。私はいつも思うのですが、現代社会の化学技術は政治生態の多くを変えてしまいました。今日は張居正という名の陳情農民が来ていますが、私が政法大学で講演したとき、彼は一つの包みを持ってきました。その中からペン型ボイスレコーダーのようなものを取り出したので、私は何かと聞きました。ペン型ボイスレコーダーはたくさんありますが、それはビデオカメラでした。私は驚いて「あんたはスパイ稼業かね」と言いました。彼は「何がスパイなもんか中関村で200元で買ったんだ」と言いました。私は信じられなかったので、彼にお金を渡して「俺にも買ってくれ」と言いました。彼は二三日後に1本送ってくれました。そして、他にもボタンぐらいの大きさのもあって、やはり200元ほどだと教えてくれました。私はその時驚いて中関村に行ってみました。確かにあちこちでそれを売っていました。腕時計型、ボタン型なんでもあります。その後私が家内と話すときはまず彼女がペンを持っていないかどうか、ボタンはカメラじゃないかとチェックしています。元々ハイテクで、トップクラスのスパイが持っていた装置を今では普通の庶民が使えるようになっているのです。いつ撮影されているか分かりません。

 私はかつて複写機が中国農民と政府の関係を変えたと言ったことがあります。ご存じでしょうが、裁判を起こす農民は、ポケットの中にたくさんの中央通達のコピーをもっています。複写機を馬鹿にしてはいけません。もしそれがなければ、農民と政府の関係は違っています。私はある時、当時は湖南省で調査をしていましたが、現地湖南の農民が政府に行って、通達を机に叩きつけて「あんたは中央に反対している。我々こそ中央の政策の執行者だ」と言っていました。政府の人間は驚いて「我々がいつ中央に反対したと言うんだ?」。農民「中央通達を見てみろ。税は頭数で徴収してはならないと書いてあるだろう。何で頭数で徴収するんだ」。その役人は通達に確かにそう書かれているのを見て、緊張しました。彼にとって面倒なことになりました。「いつこの通達を手に入れたんだ。俺は見てないぞ」。麻雀をやっていて見逃したのでしょう。ですが、農民は裁判のために毎日この問題を考えています。多くの農民がコピーしている通達は時に私たち弁護士より多いくらいです。もし複写機がなければ、農民はこんな啖呵が切れますか? できません。通達を指導者の前に示しても、指導者は机をたたいて「中央通達の偽造だ」と言うでしょう。どんなにうまく転記しても、1字ぐらいは間違うでしょうから。

 私が湖南省会った農民の一人について、私の本の中で農民宣伝家と紹介しました。彼はどんな農民でしょう? 彼に会う前は、私は彼のことを弁の立つ、恰幅のいい人だと思っていました。会ってみると、彼はこれ以上ないぐらい実直な農民でした。彼は何をしたのでしょう? 当時は税手数料の徴収時期でしたが、彼は広東省に出稼ぎに行っていて不在でした。地方政府の役人は彼の棺桶を現物徴収で持ち去りました。彼が戻って棺桶が持ち去られたことを聞くと、出稼ぎを辞めて、拡声器と録音機を買って、中央の農民負担軽減の通達を人に読みあげてもらって録音しました。それから彼は毎日天秤棒を担いで政府庁舎の前に行き、どこかで徴税があるとそこに行って拡声器で中共中央の農民負担軽減通達を流しました。現地の地方官吏は彼を非常に恨みましたが、彼を取り締まることもできませんでした。彼は中央の政策を宣伝しているのですから!

 以前私は彼に、「あなたはなぜ録音機で録音したんですか?」と聞きました。彼は「第一にわしは年をとって字が良く見えないし、すらすら話せないから、毎回読むのは大変だ。第二に一番大事なのは、わしは先生に録音してもらった。録音してから、地方政府にこの通達の録音テープはたくさんあって、あちこちにバラバラに置いてあるから、取り上げようとしても無駄だと言った。この録音テープはみんな中央の政策の通達だから間違ったことはいていない。たとえいつか逮捕されても証拠があるから怖くない。わしの言葉じゃなくて、共産党中央の言葉なんだから」と答えました。見くびってはいけません。私が本を書いた時彼を何度もインタビューして、農民の知恵と農民の法律を利用して不法な政府に対抗する勇気を深く知ることができました。もし複写機がなかったら、彼らは抗議することができるでしょうか? もし録音機・録音テープがなければ、彼は宣伝することができるでしょうか? できません。なぜなら地方政府は農民が中央通達を偽造して、反動宣伝をしたと言い張ることができるからです。ですから、私たち弁護士はこの面で農民に及びません。私は皆さんに、現代科学技術をもっと利用することを提案します。証拠集めと言わずとも、少なくとも身を守るために。私は話したことをいつも録音録画しています。

 第四の特徴は、規則のベースラインがないことです。前に権利擁護運動について話した時、私は繰り返し彼らは規則を守ると言いました。しかし鬱憤晴らし事件には規則のベースラインがありません。殴る・壊す・奪う・放火するという行為がしばしば、しかもどれか必ず発生します。もしそれがなければ鬱憤晴らしとは言えません。今年一年も何回か大きな鬱憤晴らし事件が発生しました。海南東方事件や四川南充事件などです。

 権利擁護と鬱憤晴らしについて話しましたので、次に騒乱について話します。騒乱と鬱憤晴らしはどう違うのでしょう? 皆さんこれを見てください。(PPT)2008年9月湖南省で発生した騒乱です。人民政府の表札を壊しています。こういうことはしばしば起きています。この地方のこのスーパーマーケット、民衆はこのスーパーを襲いました。結局発端になった事件とこのスーパーは全く関係ありませんでした。これが人権擁護活動、鬱憤晴らし事件と騒乱の最も重要な違いです。騒乱は無関係な人を攻撃します。権利擁護運動は権利侵害者と政府を対象とし、鬱憤晴らし事件も政府と権利侵害者を対象としますが、騒乱は無関係な人に向かいます。次にこれを見てください。これはどこかカーニバルに似ていませんか。スーパーを襲い、商店を襲って、非常に楽しそうです。2008年10月の国慶節期間中、個々の商店はすべて閉じていました。結局本当に野戦軍を投入してやっと秩序を回復しました。この種の行為を私たちは騒乱と呼んでいます。騒乱にはもう一つイデオロギーが引き起こすものもあるでしょう。2008年3月のラサの問題も騒乱だと思います。最重要な問題は無関係な人に向かうと言うことです。今年新疆で発生した問題について、一部の人はテロ活動だと言っていますが、私は違うと思います。やはり騒乱です。

 以上が私の現在の集団示威事件についての簡単なまとめです。権利擁護活動の主な特徴は比較的明確な利益要求があること、鬱憤晴らし事件には明確な利益要求が無く、主に怨恨の発散です。騒乱と鬱憤晴らしの最も重要な違いは騒乱は主に無関係な人、つまり無辜の人を対象にします。ある事件が無辜の人を攻撃の対象にし始めたら、それは騒乱です。

出典:http://www.chinaelections.org/newsinfo.asp?newsid=169507

(転載自由、要出典明記)

関連記事
社会安定のベースラインを守るために(1)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/3d9b7c69e6a560faae20b62a338ec1e4
社会安定のベースラインを守るために(2)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/68c0c153f2ed66b144393aa139edf448
社会安定のベースラインを守るために(3)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/f025983f728ea8229d9a49b2fd8cc302
社会安定のベースラインを守るために(4)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/996137350847de8ddc64d3d8e98fff38
社会安定のベースラインを守るために(6)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/5c13243453ae895f37f806ea6d015ad3
社会安定のベースラインを守るために(7)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/ba9f6e854d7e94740fd42587392474e3
社会安定のベースラインを守るために(8)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/74ba5c2a06c6ffbb339d006eeeb54c55
社会安定のベースラインを守るために(9)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/bca89623778adeb768f8fdd5ba6c2748
社会安定のベースラインを守るために(10・完)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/4e1c8327a310eff2efa1f9a048ddbd81
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 中国乳業労働者の告白 | トップ | 許志永:戸籍にかかわらす一... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国異論派選訳」カテゴリの最新記事