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于建:社会安定のベースラインを守るために(1)

2010-03-17 12:00:19 | 中国異論派選訳
于建:社会安定のベースラインを守るために
――北京弁護士協会での講演

時:2009年12月26日 所:北京財政部講堂
  
 みなさんおはようございます。私は1987年に弁護士になって、8年仕事をしました。今は社会科学院農村発展研究所で仕事をしているので、弁護士業務はしていません。私が今日お話しするのは「社会安定のベースラインを守るために」ですが、本来は「憲法を社会安定のベースラインにしよう」とするつもりでした。なぜこのテーマなのか? それは中国社会に一体何が発生しているのか、これらか何が発生するのか、我々に何ができるのか。これらの問題について簡単な整理を行うためです。
 
 中国はすでに衝突の多発期に入っていますが、これからどこに向かうのでしょう? これは非常に議論のある問題です。長い間、中国社会について最も基本的な見方がありました。それは中国社会には非常に大きな動乱が起こるだろうというものです。この見方について今年の初めごろたくさんの人が議論していました。中国は2009年とそれ以降に動乱が発生するという意見が伍凡さんやイギリスなど国外のマスメディアから出ました。今年初めごろ私は雑誌『財経』に文章を発表しました。私の見方は、中国社会には多くの問題が起きているが、全体としては安定しており、2009年に動乱が起こることはないだろうというものです。つまり、動乱の可能性は存在するが、中国社会の硬い安定構造のゆえに、動乱の発生までにはまだ一定の距離があると思います。

 しかし、最近私は中国の何人かの一線を退いた部長級の幹部〔国務院各部部長、省・自治区・直轄市の共産党書記と行政の長。だが部長級と言うときは実際は副部長級も含むことが多い。〕と話をしましたが、その中の一人は中央の中心的シンクタンク部門の中心人物でした。彼は次のように話しました。「君は中国社会に動乱は起こらないと言うが、私は必ず遠くない将来必ず起こると思う」。私はまた何人か重要な役職にある指導幹部を訪問しましたが、彼らも中国の動乱は避けられないと言っていました。では本当にそうでしょうか? 私自身もますます分からなくなってきました。ですから魏大忠弁護士と魏汝久弁護士にここに呼んでいただいた時、実は私はすこし自信不足でした。この問題について私は全国各地の共産党と政府の機関や中央党学校など、国内外で1年間話してきて、今日ほど自信がなかったことはありません。なぜでしょう? それは、私が彼らを訪ねたあと、彼らの判断が私の見方に影響したのです。彼らはなぜ中国に動乱が起こると考えているのか? 一体どうすればいいのか? 二三日前に何人かの弁護士が私の家に来て、この問題について議論しました。もし一部の主要なエリートでさえ中国社会に動乱が起こるといるとしたら、我々法律化は一体どうすべきか? その時の結論は憲法が中国社会の安定を維持するベースラインであるということでした。ですから、私がテーマを「社会安定を守るベースライン」に変えたのは、皆さんと中国に一体どんな問題が起きているのか? なぜ社会安定のベース覧異を探し求めるのか? そのベースラインとは何か? について議論するためです。

 実際年初めには、中央の指導者も2009年は苦しい状況が続くと思っていました。今日は12月26日で、あと4日たてば年越しですが、ますます多くの兆候が、情勢が緊張を深め深刻化していることを示しています。このような社会情勢の最も直接的で最も顕著な表現は集団示威事件です。1993年と2006年では、集団示威事件が8,709件から90,000件に増えていて、2007年、2008年そして今年も90,000件を超えました。最も重要なのは特大集団示威事件が増加していることです。その増加は確かに政府当局者の国家についての判断を揺さぶっています。表面的に見れば、立派なビルが建って、広い道路が通って、みんなまるで繁栄を謳歌しているようですが、実際はこれらの事件が当局者の中国の前途に対する自信を動揺させているのです。
  
 まず初めに中国で一体何が起こっているのか検討しましょう。ここ数年私は中国の集団示威事件について簡単な分類を行っています。概ね権利擁護、不満の発散〔もしくは鬱憤晴らし〕、騒乱の3類型に分けることができ、権利擁護は主体により農民・労働者・市民の三つに分けることができます。
  
 まず権利擁護活動について、労働者に何が起こっているのか、農民に何が起こっているのか、市民に何が起こっているのかについて、概観しましょう。  

 現在の中国農民問題について、私は以前『現代中国農民の権利擁護闘争』という本を書きました。この本で私が調査したのは湖南省の農民で、書いたのは2004年以前の中国農村です。2004年以前の中国農村で何が起こったのかという問題に答えようとし、得られた結論は中国農村の2004年以前は主に徴税反対闘争です。(PPT)これは私が2002年に湖南省の農村調査をした時の写真です。当時政府は断固として食糧上納拒否・納税拒否、合理的費用上納拒否をする不法分子を取り締まると言っていました。食糧上納拒否とはみなさんご存知のように年貢〔農業税〕を納めないこと、納税拒否とは国税やほかの税を納めないこと、合理的費用上納拒否とはいろいろな名目の税外税を納めないことです。後二者を合わせて税費用問題と呼んでいます。(PPT)之は2002年に私が江西省の農村で撮った写真です。これは政府が「年貢と国税は拒否できない」と宣伝しています。(PPT)2002年12月22日、湖南省の農村調査をしていたときにこの写真を撮りました。この農民たちは農民協会を組織しました。ここから遠くないところにかつて毛沢東が最初の農民協会を組織した場所があります。ここに夏明翰という名の一人の偉大な人が現れて「主義が正しいのだから、打ち首になってもかまわない。俺夏明翰を殺しても後に続く人がいる。」と言いました。この地方の農民がみんな私にこの言葉を話しました。「主義が正しいのだから、打ち首になってもかまわない。俺×××を殺しても、後に続く人がいる」と。「あなた方はなぜ農民協会を組織したんですか?」と私はこの場所で彼らに聞きました。彼らは、農民協会を組織したのは地方の汚職官吏と闘い抜くためだと答えました。当時私は心中衝撃を受け、戻ってから中共中央に「農民の組織的抵抗とその政治的リスク」という表題の報告を書きました。その中で私は天下の憂うべきは民権にあり、天下の恐れるべきは民怨にあると述べました。これほど多くの農民が汚職官吏に対して怨恨を抱いているのですから、政権はそのリスクを考えるべきです。

 その報告は、社会科学院が重要報告のあつかいで中共中央に提出しました。その後中央は重要な措置をとり、温家宝が人民代表大会期間中の2004年の3月5日に、農業税〔年貢〕の取り消しを宣言しました。宣言すると全ての人民代表が立ち上がって拍手しました。

 農業税の取り消しは当時の湖南農民と関係深いです。(PPT)この人は彭栄俊という名です。彼は当時農民協会組織化のリーダーでした。2008年12月6日、彼は改革開放30年十大農民英雄に選ばれました。私が今日言いたいことの一つは、中国の政治変化は必ずしも中央の政治理念の変化によるのではないし、指導者の人民に対する愛によるのでもなく、主に社会からの圧力によるのです。当時中央は、このような社会的圧力の下で、農業税徴収によって得ら得る利益とコストを比較して、農業税を放棄した方がいいと判断したのです。政治的、経済的な考量の上で、中央は初めてこの決定を下したのです。農業税が取り消されたとき、多くの人が中国の農村問題は解決すると思いました。私は解決しないと言いました。そして状況はすぐに変化しました。(PPT)これは中央〔テレビ局〕の「焦点訪談」の集計データです。毎日非常に多くの人が「焦点訪談」に電話で苦情を訴えています。これは中央テレビ局がそれらの訴えを記録したものです。私は中央テレビ局と契約を結び、私がいわゆる機密システムを閲覧することを許可しました。それを見ると今日誰が誰を訴えたのか、どんな裁判がおこされているのか、どんな問題が起こっているのかが分かります。私は毎月レポートを二つ提出し、最近中国で焦点になっている問題が何かを報告します。焦点訪談電話システム資料を観察すると、2004年6月から土地問題が中国農村の中心問題になっていることが分かりました。

 まず農村土地問題にはどんな特徴があるのか分析してみましょう。2004年9月2日、私は『南方週末』に土地問題が中国の焦点になっているという調査報告を発表しました。

 まず双方当事者が変わりました。(PPT)これは文化大革命以降に共産党省委員会書記が包囲されたある事件です。当時の四川省共産党書記が何が起こったのか見に行って、農民に見つかってしまったのです。彼を救出するために武装警察隊を使いました。この写真を見てください。写っているのはどんな人でしょう? 年寄り、お婆さんです。私は中国農民の納税拒否を調査していたとき一人の婦人に会いました。彼女の父親が殴り殺され、家には娘一人しかいないので、彼女が納税拒否していたのです。ですが土地問題では、大勢の老婦人が一線に立っています。なぜでしょう? 私は彼女たちに聞きました。「一つ目、私たちは年寄りだけど、子孫のために土地を残さなければならない。二つ目、地方官吏は私たち年寄りに手は出せない。」と言っていました。以前私はある文章の中で彼女たちをソフトパワーと呼びました。年寄りと見くびってはいけません。地方政府は確かに彼女たちを恐れています。政府は若者が集まってきても排除すれば済むと考えていますが、この老人たちは排除したら病院に運ばなければいけなくなります。

 次に訴える対象にも変化が生じています。農民の納税拒否のときは主に県政府や郷政府に訴えていましたが、土地問題で訴えるのは市政府・省政府さらには中央政府まで行きます。

 さらに地域にも変化があります。納税拒否は主に湖南省、湖北省、江西省、四川省など経済があまり発達していない地区でしたが、土地問題は主に広東省、江西省、浙江省、山東省、河北省など経済の発達した地区です。納税拒否は主に辺鄙な農村で起きましたが、土地問題は都市の周辺地区で起きています。

 最後に方法にも変化があります。納税框日の最も重要な方法は隠れてしまうという方法でしたが、土地問題では収用者の前に出て行きます。

 納税拒否のとき、中央政府には警察力を使って徴税してはならないという明文規定がありました。土地問題では、まだ中央に警察力に頼ってはならないという明文規定はありません。しかし、地方政府はいわゆる社会重点プロジェクトなどの名義で特殊警察隊や武装警察隊を含む武力を頻繁に使用しています。ですから、納税拒否と土地収用拒否では暴力化の程度が違い、外部勢力の介入程度も違います。

 農民の納税拒否のときは、外部勢力の介入は少なかったです。しかし、土地問題では大量の外部勢力が介入しています。それは主に弁護士と暴力団です。多くの弁護士の介入には二つの原因があると思います。第一に、近年の社会的な公民教育・権利意識の普及、公的知識人と公的弁護士の大量誕生で、彼らが農民の後問題に介入してきています。第二に、農民の納税拒否問題では、裁判の代理をしても収入はごくわずかでした。しかし土地問題では、非常に大きな経済的利益を得られるかもしれません。私は経済的利益が間違いだとは思いませんが、現実に多くの弁護士が農民の土地問題に介入するのは、土地問題は比較的多額の弁護士費用を得られる可能性があるからです。

 もう一つは、暴力団の農民の土地問題への介入が非常に深刻です。今日の中国の土地案件の八九割に暴力団が絡んでいます。暴力団は農民に対する発砲を含めて、今は何でもやります。一番ひどいのは2005年6月の定州事件です。鄭州市共産党委員会書記が暴力団を使って農民の土地を奪い、その後有罪判決を受けました。私は以前彼にインタビューしたことがあります。私は彼に「共産党の市委員会書記になるのは大変だったでしょう。接待したり贈り物を送ったり、裏取引したり、いろいろ大変だったでしょう。それなのにあなたは何で暴力団を使って農民の土地を奪ったんですか?」と聞きました。この市共産党委員会書記は私に「濡れ衣だ。私は暴力団を集めていないし、行かせてもいない。市政府から開発を請け負った会社が、政府が解決できないんなら会社が試してみようかと聞いて来たから、私はその場で『お前やってくれ』と言っただけだ。私はまさか本当に暴力団を使って銃弾で農民を撃つとは思わなかった。」と言いました。この市共産党委員会書記は「お前やってくれ」と言っただけです。この言葉は本当に言ってはいけない言葉です。

 2008年3月オーストラリアの在中大使ジェフ・レイビー氏が外交部と社会科学院に私を訪問したいと申し込みました。社会科学院は大変緊張しました。なぜなら普通は一国の大使は他人を訪問しません。社会科学院は対策案作りに、弁護士と同じように会議を開き、人を集めて想定問答を作って、私が答えるべき内容を決めました。ところが彼は私たちが想定した問題は全く聞きませんでした。彼は三つの質問をしました。そのうちの一つは2007年中国の3つの場所の農民が土地の私有化を宣言したが、もしいつか中国の農民が全員土地を私有化したらどうするかという質問でした。私はそれを聞いて、想定問答集にありませんから、全くお手上げです。私は彼に、私たちの調査によると中国の90%以上の農民にまだそのような意識はないと答えました。私は彼に内幕は言いませんでした。そのうちの一つは、そのうちの一つは私の職場の弁護士でない法律専門家が計画したもので、その人のことは皆さん知っていますが、この計画を作った時その資料を私に見せてくれました。しかしいずれにせよ、三か所の農民が宣言したということは、いつか他の農民もそこに行きつくでしょう。

 農村問題の最新動向は、第一に地下資源の略奪が増えています。皆さんご存知かと思いますが、2009年12月12日にまた農民が4人射殺されました。それは地下資源をめぐってです。第二に森林財産権紛争が増加しています。私は5年以内に増えて行くと思います。それはなぜかというと、林地改革がもたらした利益調整です。第三に、農村の環境問題も増加しています。しかも、それが東部から中西部に、工業的な汚染から資源的な汚染に広がっています。つまり採鉱などがもたらす環境汚染と水力発電などがもたらす環境破壊です。

出典:http://www.chinaelections.org/newsinfo.asp?newsid=169507

(転載自由、要出典明記)

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