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王力雄:チベット独立ロードマップ(6)

2009-01-26 13:34:04 | 中国異論派選訳
王力雄:チベット独立ロードマップ(西蔵独立路線図)

4、中国は内乱を避けることができない

では、今日日々強大となり、勃興し続ける中国は、内乱に陥ることがあるのだろうか? 今日の状況に対する評価には、これまでこんなに良かったことはないというものもあるし、これまでこんなにひどかったこともないというものもある。とはいえ、多くの人が見る中国は、こんなに良かったことはこれまでになかったし、これまでになくひどいことは見当たらない。しかし、目に見える良いことと、目に見えないひどいことの間には、ほんのわずかの隔たりがあるだけである。人々が全く意識していないときに、これまでになくひどいことが突然水面に現れて、手を打ついとまがないうちに大災害をもたらすかもしれない。今回のチベット事件の爆発の原因の一つは、まさにこれまで「良いこと」しか見てこなかったことなのだ。

実際、今日の中国で良いことは、言ってしまえば経済発展が速いということだけである。この急速な経済発展の代価を明日倍にして払わなければならないことはさておき、常識によっても世の中に永遠に発展し続ける経済がないことは明らかだ。中国経済にはすでに様々な危険が潜伏しており、多くの困難に直面しているのだから、危機は遅かれ早かれやってくる。それに伴って、経済の高度成長に隠されていた社会危機と政治危機もすぐさまやってくる。三重の危機が重なり、政権が倒れ、統治の真空や社会の動乱などの一連の結果が出現するだろう。

目下、中共政権に挑戦する勢力がないので、人々は中共がずっと統治し続けると思いがちである。しかし、大変化は大勢力や大事件が引き起こすとは限らない。小さな積み重ねも同じように崩壊という結果をもたらすことができる。砂を一粒ずつ落とし、砂山をだんだん高くしながら、一粒の砂の落下がいくつの砂の移動を伴うかを正確に計算した研究がある。初期段階では、落下した砂粒の砂山への影響は少ない。しかし、砂山がある程度以上高くなり、「臨界」に達した後は、砂山は「一体性」を持つようになる。その時一粒ずつ落下していく砂粒は一種の「力の波」を生じ、たとえ微細であっても、砂山の「一体性」を通じてそれが砂山全体を貫き、新しく落下する砂の衝撃がすべての砂粒に伝わるようになる。砂山の構造は砂粒の落下に伴ってもろくなってゆく。いつか一粒の砂(たった一粒の)の落下が砂山を崩す。つまり、いわゆる崩壊が起こる。

西側のことわざに、蹄鉄の釘が一本折れたら、馬がつまずいて倒れ、将軍が転んでけがをし、戦争に負けて、国が滅ぶという。その国はもちろん蹄鉄の釘が原因で滅んだわけではない。砂山理論の解釈によれば、国家の内部危機が臨界状態を超えていたのであって、蹄鉄の釘は崩壊の最後の砂粒にすぎない。中国もまた一つの砂山と同じであり、各種の変化と衝撃が絶え間なくその上から落ちてきて、積み重なった結果は遅かれ早かれ砂山の臨界を超えるだろう。蹄鉄の釘までが「不安定要素」になったとき、独裁政権の統制がどれほど厳しくても瓦解を免れない。なぜなら蹄鉄釘一本一本にまで監視兵をつけることはできないからだ。

中共の現在のような政治改革の拒絶は、各種の矛盾を絶え間なく蓄積してゆくので、中国は遅かれ早かれ全面的な危機に陥る。独裁政権の特徴の一つは、予測できないことであり、法則もなければ情報も欠乏しているので、その変化はいつも「突然変異」である。ばかでかいソビエト帝国が瓦解すると事前にだれが予想できただろう? しかし、それは一夜のうちに分裂瓦解した。鎮圧は瓦解を後ろに遅らすことはできる。あたかも砂山が少しでも高くなるよう砂山の周囲をたたき続けるように。しかし、そのようなかさ上げは無限に続けることはできず、いつかは崩れてしまう。しかも、高くなればなるほど、崩れ方も激しくなる。経験が我々に示しているように、大きなシステムは自己保存能力は強いが、いったん崩れたら総崩れになってしまうのだ。

本当に安定した社会には多くの統合メカニズムが必要である。それには政権だけでなく、道徳倫理、法の支配、健全な市場、国家化された軍隊、そして宗教団体、民間社会、多党制などなどがある。このような多元並存のメカニズムが社会の長期的安定には不可欠である。多党制のもとでは政権党が下野しても、反対党がすぐに引き継ぐので権力の真空による社会秩序の混乱を防止することができる。しかし、多事多難な今日の中国は行政システムと警察的手段による一党独裁政権への統合である。ほかの統合要素はすべて政権によって侵食されてしまったので、政権に従属しているか、異端勢力として「萌芽のうちに消滅」させられ圧政のもとでは成長できないため、どちらも統合を担う力はない。このような社会は、一方では挑戦を受けることがないので異常に安定し、もう一方では巨大な危険を内包している。いったん政権が崩壊したら、全中国が統合の真空状態となり、内乱に陥り、長期にわたって秩序を回復できない。

その時が来たら、現在武力で制圧している民族矛盾が一気に爆発し、民族独立運動も嵐のように盛り上がるだろう。独裁中国の鎮圧能力は内乱によって瓦解し、あるいは内部抗争で消耗する。大一統(訳注:大中国主義)にこだわる中国民主派の人が言うような、将来の中国の民主政府はこれまでどおりチベット独立を認めないなどというのは、空念仏に過ぎなくなる。内乱に陥った中国のどこに民主政府があるだろうか? 民主政府はどうやって中共に撲滅され、空白となったその他の統合メカニズムの中から生まれるのか? その時がくれば中共が中国を人質(死なばもろとも)とした結果を知るだろう。中共が中国を支配できなくなり、したがってチベットを支配する能力を失った時、中国にはチベットを支配できるいかなる他の勢力も存在しないのだ。

5、決戦はチベット

ダライラマが独立を放棄したのは、誰もが知る通り現実に対する一種の妥協である。将来もしチベットが独立を実現できるとしたら彼はそれを拒絶するだろうか? 中共統治者が彼に取り合わずに、チャンスを利用して彼の独立放棄を法的事実(訳注:協定化)にしないとは、何と愚かなことであろうか。中共の政客・策士にとっては、中共失脚の前途を考えることはタブーだから、目をつぶって知らぬふりをしており、ダライラマがチベット問題のカギであり、扉を開くこともできれば閉ざすこともできるということを考えようともしない。もし中国が内乱に陥ったとき、チベット問題に進展がなかったら、ダライラマにはチベット独立を再び呼びかけ、国際社会に支援を呼びかける十分な理由がある。彼が認めたチベット独立の放棄を中国が無視した以上、だれもその変化を約束違反と非難することはできない。その時、ダライラマのチベット人に対する訴求力と西側への影響力は、チベット独立について比類なき影響力を発揮するであろう。彼一人の威力は百万人の軍隊に匹敵する。

中国と西側の二種類の本質的に相容れない政治制度は、グローバル化の時代に交錯して、根本的には疎遠になるほかない。価値観と利益の二重の衝突は双方を不可避的に最後の決戦に向かわせる。そして力強い世界の民主化潮流の中で、負けるのは独裁中国しかない。チベットは世界最後の独裁大国の天敵になるであろう。「人権は主権よりも重い」という観念は、すでに西側で中国に切り込む剣として鍛えられている。そしてチベットは決戦の戦場を提供している。多くの歴史的要因の影響を受けるので、今はだれも具体的な進行過程を予測できない。しかし、いわゆる決戦といっても両軍の対峙にはならず、経済と外交の分野で結果が出るだろう。中国は開国して数十年がたち、現実主義の経済発展のための外国資本・技術・市場に対する節度のない追求は、中国の生存の命綱をかなりの程度西側の手に握らせた。それは中国が存亡の危機に直面した時、西側の手配を受け入れるほかにほとんど選択の余地をなくさせている。

ここで例をあげて考えてみよう。たとえば中国の内乱と経済危機が同時におこったら、中国経済はすでに世界と一体化している以上、難関を乗り切るには世界経済を握る西側諸国の援助が必要である。西側諸国がもしチベット独立承認を交換条件としたら、崩壊の淵から抜け出し、より大きな災難を避けることを急ぐ中国政府(その時まだ政府があれば)は、たとえ望まなくても独立を承諾せざるを得ないだろう。もう一つの可能性は、その時の中国が民国初年に似た分裂状態に陥ったとしたら、一方でまったく余裕がなくてチベットの独立運動を弾圧する力がなく、もう一方では中国の主人になろうと必死の各勢力が西側諸国の承認を争うだろう。西側の承認があってはじめて国際社会で合法的に中国を代表することができ、西側が送り込む資源を獲得できるのだから。西側は合縦連衡して交換を行うことができる。いずれかの勢力がチベット独立承認文書に署名することを承認したら、そちらを援助する。かつてモンゴル独立の時はソ連の支持だけしかなかったが、国民党政府も共産党政府も抵抗できず、受け入れるしかなかった。将来の中国が直面するのは西側列強同盟であるから、それに抵抗できようか? 平時に統一を叫んでいる各勢力は、中国の主人になるためにはいろいろな耳触りのいい理由をつけて(無数の庶民の命を救う、など)争ってチベット独立協定文書に署名するだろう。似たような状況は、民国初年に何度も演じられた。中共も、レーニンが「生まれたばかりの政府に一息つかせる」ために署名したブレストリトフスク条約を、一貫して高く称賛してきた。この条約はソビエトロシアがドイツに百万平方キロ以上の領土を割譲し、60億マルクの賠償金を支払うことを定めており、すこしも中国のチベット喪失に引けを取らない。この種の現実主義精神はまさに中共の本質である。

中国の庶民はさらに現実的だ。今回のチベット事件で西側と対抗したのは都市に居住し、インターネットを使いこなし、メディアと近く、中国の現状に既得利益を有する一部の人々にすぎない。彼らの声は増幅されたが、人口比は極めてわずかである。中国の一般民衆(下層庶民、つまり労働者・農民・出稼ぎ労働者・請願者など)にとっては、身近な公正・人権・自由・民主の方がはるかにチベットの帰属より重要である。ただ彼らには声を上げるパイプがなく、メディアにも注目されず、独裁の圧政に対しても最も抵抗能力が乏しい。しかし、中国で最初に「オリンピックは要らない人権が要る」と叫んだのは、まさに黒竜江省の土地を奪われた農民だった。すぐに鎮圧されたとはいえ、これこそが中国を観察する本当の視点だと気付かせた。いったん全中国が危機に陥り、人々の生存が脅威にさらされれば、煽られた民族主義はたちまち雲散霧消する。かつて河南省の餓えた人民が食糧を届けてくれた日本侵略軍を歓迎したように、はるか遠くのチベットの帰属は問題にはならず、重要なのは一刻も早く切実な苦境を脱することだ。ゆえに、将来の中国の危機が十分深刻であれば、チベット独立への同意は大した反対には遭わない。

国際社会に認められた中国政府がチベット独立協定に署名することに同意したら、国際法上の効力を生じ、その後政府が代わって改めてチベットを占領しようとしても、そのとき中国に国際社会全体と西側陣営に対抗する実力がない限り、実現の希望はない。現代の世界では各地で繰り返し試行されてきた国際監督の手法――国連の介入・平和維持部隊の派遣・分離ゾーンの設置・国際援助の実施など――によって確実に独立チベットの安全を保証するだろう。そして、チベットが独立国として数年間維持されれば、変更不可能な既成事実となり、永く存続することになる。

ロードマップはここで終るが、終点から振り返ると、もしいつか中国がチベットを失うとすれば、原因は民主ではなく独裁であるということがはっきりと見て取れる。中国の独裁政権を中国統一の保証とみなす「愛国者」たちは分裂よりも独裁を選ぶと公言するが、このロードマップが示すのは、全く逆の結論――独裁こそが分裂を招く――である。

2008年 北京にて
(全文完結)

原文:http://www.minzhuzhongguo.org/Article/sf/200811/20081117084502.shtml

参考:<チベットの真の自治のためのメモランダム>全文
http://blog.livedoor.jp/rftibet/archives/51146451.html

関連文章
チベット独立ロードマップ(1)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/2ef1cc767204f12eabb9cbd727d91548
チベット独立ロードマップ(2)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/0ff44f54f233cb296c1ab0eafb74f928
チベット独立ロードマップ(3)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/1e38df56380bb6a52b5c17871cd0c7f1
チベット独立ロードマップ(4)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/3a53e3e0803b96c4807a55f9c5665c01
チベット独立ロードマップ(5)
http://blog.goo.ne.jp/sinpenzakki/e/ad0b149a99460cc9b1333fe1463878f7

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