Dogma and prejudice

媚中派も媚米派も同じ穴のムジナ
従属主義的思考から脱却すべし
(言っとくけど、「媚米」と「親米」は違うんだよ)

アメリカは、北朝鮮に対して、戦うのを止めたのです

2007-03-21 | 拉致・北朝鮮問題
 15日に朝鮮日報あたりで、米国がバンコ・デルタ・アジア(BDA)を、「資金洗浄機関」に指定するとともに、在米金融機関による取引を正式に禁止すると報じていました。これにより、BDAは息の根を止められたと言えるでしょう。

 「北の資金洗浄に協力するような銀行はアメリカの銀行と取引させない」というメッセージをアメリカは送ったわけで、「各国の銀行は今後、怖くて北朝鮮とは取引しなくなる。」だから、「金融制裁は解除されたのではなく、引き続き行われているのだ」というような指摘が、ネット内で一部なされていました。

 確かに、この時点では、アメリカは、北朝鮮に対する厳しい態度を見せ付けていましたから、上記のような見方も出来ました。

 しかし、20日のニュースでは、件の2500万ドルは全額中国銀行にある「朝鮮貿易銀行」に移管されるいう事が報じられました。これにより、「金融制裁は解除されたのではなく、引き続き行われているのだ」というような楽観的な見通しはもう出来ないことが分かりました。アメリカは、北朝鮮に対して、戦うのを止めたのです。

 kousotsudrさんは自身のブログ「もののふのこころ」で、以下のような分析をされています。↓

BDAへの制裁措置は、確かに各国の金融機関に北とのドル取引が犯罪行為であることを認識させ、震え上がらせるのに十分な効力をもつとは思います。少なくとも、以後は何処も北とドル取引を伴った交易を差し控えるでしょうから、そういう意味では、北は新たな資金洗浄先を封じられていますので制裁は継続されているのかもしれません。

しかしながら、その口座全額を中共保護下の朝鮮貿易銀行に移行させてしまった時点で、幾ら使用目的を制限されようと、そこから先は北の宗主国である中共の一存でどうにでもなるわけです。事実、国務省は「使用先の確認作業は困難である」と逃げてしまってますからね。
つまり、ここから先、北は中共配下の朝鮮貿易銀行を通じた事実上のフリーハンドを得たに等しいと観ています。無論、監視の目はあるわけですから、そうそう好き勝手なことは出来ないでしょうが、頃合いを見計らって動き出すことは必定です。中共は北の核武装に反対しているだけですからね。それ以外の事には目を瞑るはずです。
当のアメリカは今回、政治的考慮を優先させた結果、おそらく中共に北の処遇を委ねたはずですので、核関連の案件以外はもはや、彼らに口を出せないのでは?と思ってます。きっと、彼ら(中共と北)が約束など守るはずがないことを十分承知の上で黙認したんでしょうね。

 「その口座全額を中共保護下の朝鮮貿易銀行に移行させてしまった時点で、」「そこから先は北の宗主国である中共の一存でどうにでもなるわけです。」・・・まさにその通りだと思います。このような事を行ったというのは、アメリカが、「中共に北の処遇を委ねた」事に他なりません。

 また、佐藤健さんは自身のブログ「溶解する日本」で、以下のような分析をされています。↓

だからリストに指定された口座以外の金は凍結解除するけども、アメリカ企業が澳門に事業所を有する企業、多くの記事はこれを澳門にある金融機関もしくはBDAとして報道を流しましたが、元記事では「澳門の金融機関、澳門に拠点を持つ企業」となってたんで、かなり強力な制裁、寧ろ制裁強化となりかけたわけで、そんな中から3月16日に「BDAの経営者が変わらない限り制裁解除はないだろ。」という趣旨のヒルの発言が出てきた。
ここまでは国務省派が対北懐疑・強硬派に押されていたわけです。

 この流れが変わり始めたのが土曜日で、ヒルの発言のトーンが変わり、日曜にはトウカセンからも「全口座解除」が流れたわけですが、一部の政権内高官の反対を押し切ってこういう結論が出たわけですから、ブッシュ自身がこれに乗ったのがこの時だと思います。
この決定の論拠となったのは、”朝鮮半島非核化の前進に比べたら金融制裁なんてのは些細な問題だ、そんな些細な問題で6カ国協議のプロセスが停滞するのは許容できない。"という理屈であり、北鮮にカモられるのはわかっていてもとにかく停滞はいかん、つまり前のめりですね。
でこの点に関してアメリカと中共と南鮮、あえて加えるなら北鮮の指向性は一致した。

 それにしても弱く成り果てたもんですよ、アメリカは、そしてこんな国しか頼りに出来る国のない我が国が情けない。

 先週、土曜日の時点で、ブッシュのツルの一声が、有ったのかもしれません。完全に潮目が変わりました。

 以下はDaily NKの2月5日の記事です↓。 - 米 'BDA カード' 自ら足の爪を抜いて北の核廃棄可能か?

アメリカはこの間、北朝鮮が‘スーパーノート’と呼ばれる 100ドルの偽札を製造するために、偽造防止用インクまでまったく同じものを使ったと主張してきた。したがって、北朝鮮に不法行為を一切認めて、偽造紙幤の製造に使われた銅版と装備などを破棄した証拠も出すよう要求した。

しかし、最近のアメリカの発言をめぐり、‘北の核問題解決’が優先だという米国務省と、‘偽造紙幤問題は法に従って’という財務省の間に一定の意見の調整があったのではないかという憶測が出ている。

このため、任期が2年余りしか残っていない状況で、ブッシ政権がBDA問題によって、重要な北の核の解決に成果を出すことができなかったら、北朝鮮の核問題を悪化させた政権という烙印を押されるのではないかというジレンマに陷っているという観測もある。

 ‘北の核問題解決’が優先だという米国務省と、‘偽造紙幤問題は法に従って’という財務省の間の確執が先週末まで、尾を引いていたという事かもしれません。そして、北朝鮮の核問題を悪化させた政権という烙印を押されるのを怖れたブッシ政権が、「金融制裁のような些細な問題で、6カ国協議のプロセスが停滞するのは許容できない」という断を下したのでしょう。

 また、この記事では、最後に次のような懸念を述べて終わっています。

今回は94年当時合議したが中断された、重油の年間50万トンの提供と、軽水炉提供以上の物を、北朝鮮が要求する可能性が高い。6カ国協議関連国が突き出せる誘引策はあまり多くない。また、北の核廃棄の過程で、プルトニウムだけではなく、アメリカが主張した高濃縮ウランの問題も必ず指摘しなければならない宿題として残っている。

こうした状況で、アメリカが手に握っている‘BDAカード’を北朝鮮に容易に渡してやる場合、北の核ゲームの分銅は北朝鮮側に移る公算が大である。

もし6カ国協議で北朝鮮が‘非核化の初期の措置の履行'というジェスチャーを取る場合、アメリカは不器用な楽観論を広げて北にひきずられて失敗した、12年前の過ちを繰り返す可能性もある。

北朝鮮はこの間、政権維持のために軍事的緊張の誘発→交渉→経済援助→緊張誘発→交渉→経済援助というサイクルを繰り返してきた。核放棄の意志はないということだ。専門家も皆、北朝鮮は最終的に核を完全に廃棄しないと同意している。

したがって、ブッシュ政権末期といっても、躁急な成果主義に頼るのは危険である。米国務省はブッシュ政権が重要なのではなく、'アメリカの安保'が重要だと思わなければならない。

北の核の完全な廃棄のために、もう少し長期的観点で近付く目が何よりも必要な時である。

 北朝鮮に対する大きな武器であった‘BDAカード’をアメリカは無力化してしまったわけです。最大の障害?を乗り越えた、ブッシュと金正日は、今後、ゴール(=国交正常化?)に向かって邁進する事が予想されます。





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