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宜野湾市長選敗北で「オール沖縄」翁長知事は求心力低下必至?

2016-03-07 21:36:56 | 日記

米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市長選は、1月24日投開票され、安倍政権が支援する現職の佐喜真淳氏(51、自民・公明推薦)が、翁長知事が支援する志村恵一郎氏(63、無所属、翁長県政与党の「オール沖縄」が支援)に約6000票の大差をつけて再選した(投票総数は4万9839人で投票率は68・72%、2012年の前回市長選よりも4・82ポイント増えた)。2014年秋の県知事選以来続いた翁長知事の必勝パターンが初めて崩れた瞬間である。 

折も折、市長選をめぐり、新人候補の元県職員・志村氏が、支援をする翁長知事とともに公職選挙法で禁じられている戸別訪問をしていたとする動画が1月20日NHK沖縄放送局によって放映、その後ネット上に拡散した。県内の民間選挙監視団体の男性が22日、同法違反の罪で志村、翁長両氏に対する告発状を県警に提出した。23日付産経新聞が報じた。市長選は佐喜真氏と志村氏で過熱した。県警は産経新聞の取材に、告発状について「受理か不受理かを含めて答えられることはない」とし、告発状の扱いは現在まで預かり状態にある。 

産経の取材に対し、志村氏選対の本部長代行を務める伊波洋一・元宜野湾市長は「街宣活動の途中に知り合いのところに顔を出すことはよくあり、違法なものではないと理解している」とコメントしたが、これは全く説得力がない。仮に訪問先が知人宅であったとしても、選挙用のたすきと鉢巻で訪問し投票依頼をするのが確認できれば立派な公選法違反である。今回の選挙戦で、NHKが放映したニュース映像には、戸別訪問した様子がすべて残っている。

1996年の普天間飛行場の返還合意から20年、同飛行場の移設問題で市民は二分されてきた。普天間飛行場の名護市辺野古への県内移設計画を推進する政府・与党が推す現職の佐喜真氏が、移設に反対する沖縄県の翁長雄志知事が全面支援した新人の元県幹部、志村氏を大差で破った。これにより、政府は普天間飛行場の地元市長選を勝利したことで計画に一定の理解を得たとして辺野古沿岸部の埋め立てに着手して移設を進める方針だったが、先日の地裁和解案で決着はひとまず先送りに。しかし両者の対立は続くことになる。 

当初の世論調査によれば、少なくとも過半数の投票者が普天間の辺野古移設に反対していたという。にもかかわらず、辺野古移設を事実上容認する佐喜眞氏が勝利したのはなぜか?日米両政府は、辺野古以外に普天間の移設先はないと断言し、翁長知事も県外移設を唱えるものの、自ら代替案を探る姿勢を見せてこなかった。具体的な展望が示されない「県外移設」より、「辺野古工事が止まれば普天間は固定される」という安倍政権の主張の方が現実的だ、と感じる宜野湾市民が多かったのではないか。彼らは普天間基地返還を実現するために、佐喜眞候補に、苦渋の一票を投じたのではないか? 

『沖縄タイムス』1月25日付電子版の記事は次のような見出しを掲げている。
<「どっちか選べなんて酷」宜野湾市民、葛藤抱え1票>
辺野古移設には反発を感じるが、危険な普天間基地の固定だけは絶対困る。これが、過半数の投票者の本音であったろう。 

しかし、なんといっても、翁長陣営の最大の敗因は候補者の人選ミスである。
沖縄の大物保守の息子で、県土木建築部の元幹部職員であった志村氏を選んだのは、保守派、土建業界の切り崩しを期待したからだ。宜野湾市は、伝統的に革新基盤が厚いので、保守の一部を取り込めば勝てる。これが、翁長氏が描いた戦略であった。だが、志村氏本人は、典型的な役人タイプで、知名度も低かった。およそ政治家らしくなく、演説も原稿をつかえながら棒読みするほど不慣れであった。

 一方、佐喜眞候補は、現職市長としての知名度に加え、51歳と若く行動派である。しかも、15年に及ぶ経歴を持つ政治家で、演説はお手のものである。公開討論会などで聴衆にアピールする力には大きな差があった。 

志村陣営の選挙運動の主力は、組織力を誇る共産党が担った。そのためもあり、志村陣営は「普天間基地の即時閉鎖返還(あるいは無条件の閉鎖撤去)」「日米安保条約を日米平和友好条約へ」など「オール沖縄」の本来の路線から離れ、共産党に近い主張すら打ち出した。これでは、保守派に食い込めるはずがない。また、志村陣営の主張は基地問題に集中しがちで、生活に直結する経済への言及は弱く、若い世代の支持を得られなかった。寄せ集め集団であった翁長陣営のまとめ役不在が、選挙運動方針の混乱を招いたと言える。 

元来「オール沖縄」は、辺野古埋め立てを承認した仲井眞前知事への不信任で一致する運動であったが、そろそろ賞味期限切れかもしれない。今回選挙は安倍政権と翁長知事との「代理対決」といわれ、辺野古移設を進める安倍政権は、佐喜真氏の勝利を6月の沖縄県議選、7月の参院選に向けての追い風と受け止めた。その一方、「オール沖縄」の必勝パターンで大敗を喫した翁長知事は、その求心力低下が必至か?


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