思考の部屋

日々、思考の世界を追求して思うところを綴る小部屋

NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」・愛と正義

2011年02月22日 | 哲学

 先週の土曜日に、時々ブログで紹介しているNHK教育の<Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」>が放送されました。

 ゲスト出演されたのは、希望や愛、絆(きずな)をテーマにした歌で人気のシンガー・ソングライター、川嶋あいさん。そして今回の知識人は、あのジョン・ロールズの訳者で倫理学者の東京大学大学院教授の川本隆史先生でした。

 ”あの ”とは、我がブログで盛んに取り扱った「ハーバード白熱教室」のサンデル教授の講義にも登場した現代的”正義 ”の考え方を伝統的理論を一般化し、これまで有力的な伝統的な支配の原理功利主義に疑問を投げかけより優れた代替え案(公正としての正義)を提示したジョン・ロールズの思想が紹介されたからです。

 ちなみにサンデル教授はこのロールズ批判で学者として有名になりました。だからと言ってサンデル教授が功利主義者でないことは皆さんがご存知だと思います。倫理学者と哲学者の違い、倫理学と哲学、どこがどう違うのかこの問題については今朝は言及しないことにします。

 サンデル教授の名が出たのですが、昨夜はタレントで映画監督のたけしさんの番組「たけしのIQ200~世界の天才が日本を救う~」にサンデル教授が出演されるととのことでしたので、帰宅後早速見ました。


(テレビ信州「たけしのIQ200~世界の天才が日本を救う~」から)

 大相撲八百長事件、北朝鮮の拉致問題などについてカント哲学、上記の功利主義など専門的な話で分かりやすく講義されていました。久しぶりにサンデル教授の政治哲学が聞けたこともあり、「善く生きる」ために自分はどう考えていくべきなのか、思考することの大切さを教えられたように思います。


(テレビ信州「たけしのIQ200~世界の天才が日本を救う~」から)

 現在図書館から5冊ほど借り受けていますが、前回も話したようにこのジョン・ロールズ先生の『正義論 改訂版』はその中の一冊です。この本は800頁超の大作本、他の本も合わせて2週間ではノートにまとめることは不可能ですが、コピーも含めどうにか知悉の努力はしたいと思っています。

 今回の「わたしの思考探索」では、ロールズの正義論の中から”正義 ”の2原則が紹介され、またすばらしい詩が紹介されましたので今朝はそのことについて引用も含め感慨を述べたいと思います。

<引用>

 第l原理


(NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」から)

 各人は、平等な基本的諸自由の最も広範な仝システムに対する対等な権利を保持すべきである。ただし最も広範な全システムといっても〔無制限なものではなく〕すべての人の自由の同様〔に広範〕な体系と両立可能なものでなければならない。

 第二原理


(NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」から)

社会的・経済的不平等は、次の二条件を充たすように編成されなければならない。
(a)そうした不平等が、正義にかなった貯蓄原理と首尾一貫しつつ、最も不遇な人びとの最大の便益に資するように。

(b)公正な機会均等の諸条件のもとで、全員に開かれている職務と地位に付帯する〔ものだけに不平等がとどまる〕ように。

第一の優先権ルール(他の何ものよりも自由が優先すべきこと)
 正義の諸原理は、辞書式順序でもってランクづけられるべきであり、よって基本的な諸自由は自由のためにのみ制限されうる。これに関しては二つのケース(事例・主張)が存在する。

(a)<〔あくまでも平等に分配しつつも〕自由の通用範囲を縮減すること>(a less extensive liberty)を通じて、全員が分かち合っている自由の全システムを強化するものでなければならない。

(b)<〔自由をいったん〕不平等に分配した上でその通用範囲を縮減すること>(a less than equal liberty)は、自由の適用範囲が縮減された人びとにとって受け入れ可能なものでなければならない。

 第二の優先権ルール(効率と福祉よりも正義が優先すべきこと)

 正義の第二原理は、効率性原理および相対的利益の総和の最大化原理よりも辞書式に優先する。そして公正な概会〔均等原理〕は、格差原理よりも優先する。これに関しては二つのケースが存在する。

(a) 機会の不平等が認められたとしても、それは機会が縮減された人びとの諸機会を増強するものでなければならない。

(b)過度な貯蓄率が課されたとしても、それは〔後継世代のための貯蓄によって〕困窮生活を強いられている人びとの重荷を結局のところ軽減するものでなければならない。

 注釈をつけておこう。上述の諸原理と優先権ルールには、もちろん不備な点がある。ここで施した以外にも複数の修正が必要であることは間違いないが、諸原理の言明をさらに複雑にするのは控えたい。

 <理想的ではない状態を扱う理論> に取り組む際には、次のことに注意しておけば足りる。すなわち、二原理の辞書式の順序づけとそれが合意する価値評価とが、多くのケースにおいてじゅうぶん妥当と思われる複数の優先権ルールを示唆するということ。本番では、多種多様な実例を挙げて、これらのルールがどのように使用しうるのかを説明し、それらの説得力を示すよう努めてきた。このように、<理想状態を扱う理論> における正義の諸原理の順序づけは、理想的ではない状況における当該原理の通用を熟考・反照するものであると同時に、そのような適用の導きともなる。その順序づけが、最初に取り組むべき諸制限はいったい何に関してなのかを特定してくれる。

 <理想的ではない状態を扱う理論> のもっと極端で複雑に入り組んだ事例では、この二つのルールの優先権はおそらく機能しないし、満足のゆく解答はまったく見つけ出せないだろう。けれども私たちは、<最後の審判の日> (the day of reckoning)〔=正義の諸原理がそもそも役立たなくなるような事態〕 の到来をできるだけ先延ばしすべく努力し、さらにそのような日が決して来ないように社会を編成しょうと試みねばならない。

<以上同書p402~p405>

 the day of reckoning=報いの来る日・最後の審判日。この言葉からも解るとおりロールズの思想には信仰のバックボーンがあるようです。決して違和感を感じるものではなく、説得力のある原理とルールだと思います。

 この番組では、川本先生が大平数子さんの『慟哭』という詩集から、次の詩を紹介してくれました。この詩は『正義論 改訂版』の訳者あとがきにも紹介されていて、素晴らしい詩でと思っていましたが、番組でその背景を聞き感動しました。


(NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」から)

子どもたちよ
あなたは知っているでしょう
正義ということを
つるぎをぬくことでないことを
”あい ”だということを
正義とは
母さんをかなしまさないことだということを
 (大平数子「慟哭」1955年発表より)

 大平数子さんは広島生まれの詩人。22歳で被爆、夫と二男を亡くし病のため長男とも会えない日々を送りました。慟哭という詩は絶望の淵から生まれた詩。

このように番組では紹介されていました。

 ロールズ先生の次の文章も紹介されました。


(NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」から)

 愛する者たちは、他人の不幸や正義の身代わりになろうとする。
 家族や友人、恋人どうしは大きな危険を冒してでもお互いに助け合う。
 正義を貫くことはそうした<愛の冒険>の一側面にすぎない。
    (『正義論』から)

 愛と正義の改革。ロールズ先生の倫理学の求めるところはそこにあるようです。

 愛による正義論は机上の空論なのか、最後にそのような問題が投げかけられていました。そして最後の最後に川嶋あいさんがとても印象的でした。


(NHK教育Q~わたしの思考探究~「幸せを感じる社会とは」から)

<・・・・・思いやりと優しさ、・・・・・自分だけ幸せであればいいという考えではなく、みんなが幸せになれる社会をあらゆる瞬間に考えていきたいと思いました。>

という感想を述べられていました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 以前「思いやり」という言葉について言及しました。最近よくつかわれる言葉で、上記でも川嶋あいさんが「思いやりと優しさ」という表現で使われていました。絶体絶命の危機を体験しないと、本当の思いやりは身につかないというようなことを私は高みに身をおいたようなことを書きその後その検証をすることを続けています。

 「思いやり」という言葉は、誰それの思いやりというように「(主体・主語)の思いやり」という表現で使われます。自分が行なう思いやり、父母の思いやり、他人からの思いやりそこには、思いやりという働きかけを行う主体が存在者としています(存在)。存在者の存在という言葉をハイデガーは使いますが、「存在」という言葉には「働きかけ」という概念が包み込まれているという発想は非常に勉強させられ「やまと言葉」に対する私の考え方にも通じるところがあるように思っています。

 さて話が長くなってしまいますが、この思いやりの主語に「母」を想定しまう。すると優しさと厳しさの今は亡き母を思い出します。すると上記の大平数子さんの詩がより一層警鐘を鳴らしてくれます。

 さらにこの主語に「自然(しぜん・自燃)」という言葉を代入します。そこに見えてくる優しさと厳しさ、そうすると我々人類が直面する現象の中に、優しさと厳しさを見ることになります。

 さっと思い出すのが恵みと災害、歓びと苦難・・・・・・。対峙しているようでいて存在、働きとしての現象の中で、今自分自身が何をしているのかがよく目立ってきます。

 「幸せを感じる社会とは」がこの番組「Q~私の思考探究」の今回のテーマでした。

 川嶋あいさんは「あらゆる瞬間に考えていきたい」旨を話していましたがこれはとてもすごい言葉だと思いました。

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