東京里山農業日誌

東京郊外で仕事のかたわら稲作畑作などをしていましたが、2012年4月に故郷の山口県に拠点を移して同活動をしています。

大学生による稲刈り,脱穀,縄ない体験

2007年10月19日 | 農業体験

 今年も恵泉女学園大学の学生による稲刈りをしました。6月に田植えした田んぼ隣に小学生が田植えした稲を稲刈りしました。彼女達が田植えした稲を刈り取りしたがったのですが、田んぼの構成と稲刈りの順序としてやむなく今年は小学生が田植えした稲を刈り取りしました。

                 鎌の使い方に注意しながら稲を刈り取り


 逆に、小学生達は大学生達が田植えした稲を刈り取りします。このように必ずしも田植えした稲を刈り取るわけではありません。田んぼの構成上、日付の早い順に小川方面の田んぼから稲刈りしていきます。

              めいめいに稲を刈り取って結束


 稲刈りを始める前に、刈り取った稲を束ねるワラを作ります。槌でワラをたたいて柔らかくして、さらに水に浸して稲の結束用のワラを作ります。次に、鎌の使い方と刈った稲束の結束方法を教えました。稲はノコギリ鎌という稲刈り専用の鎌を使います。この鎌の刃先はノコギリのような細かいギザギザが付いています。

                刈り取った稲束を、結束用ワラで結束


  最初は慣れない手つきで結束         次第に上手になった結束
 

 刈り取った稲をワラで結束すると、次に竹竿に掛けて乾燥しなければなりません(はさ掛け)。干すときは、稲束を二又に分けて又の部分を竿に掛けます。二段にした竹竿の下段から稲を掛けていきます。下段がいっぱいになると上段に掛けていきます。

               刈り取った稲を次々に竹竿に掛けて乾燥


    最初は下段の竹竿に稲を掛ける   下段が掛け終わると上段に掛ける
 

 時間の関係で1時間ほどで稲刈りとはさ掛けを終了しました。刈った稲は青々してみずみずしい稲の香りが漂います。充実している穂は重く垂れ下がります。約一週間ほどで乾燥が終了します。しかしながら、一週間は待てないため、今日彼女達が脱穀するのは14日に高校生が稲刈りして干した稲です。一方彼女たちが今日稲刈りして干した稲は小学生達が脱穀に使います。このように、稲は高校生,大学生,小学生の間で受け渡されるようにして使われます。
 稲刈りとはさ掛けが終わると、今度は脱穀をします。最初100年以上昔の江戸時代に作られた「千歯こぎ」という脱穀機を使っての稲の脱穀です。始めに、その千歯こぎを組み立ててもらいました。彼女達はパズルを解くように組み立てを楽しみました。

           千歯こぎの組み立てに挑戦、まるでパズル解き


    一度は組み立て失敗              だんだん完成に
 

 千歯こぎの組み立てが完成すると、早速脱穀の開始です。さっき稲刈りした稲はまだ乾燥していないため、今日大学生が脱穀するのは先日高校生達が稲刈りして干した稲です。稲は程よく乾燥していました。櫛のような歯に稲穂を通すと、稲穂から外れた籾がパラパラと音を立てて下に落ちます。とても面倒くさい脱穀方法ですが100年ほど前は画期的な脱穀方法だったそうです。確かに穂を一本一本から籾を取ることに比べれば当時は画期的に効率的だったのでしょうね。

       千歯こぎの櫛の歯に稲穂を通すと、パラパラと籾が取れて落下


     交代して千歯こぎで脱穀      稲束を一度に通すと束がバラバラに
 

 次に明治時代には考案された足踏みの脱穀機を使いました。これまた、当時は画期的な脱穀機でした。勢いよく回転する歯に稲穂を当てると、面白いように奇麗に脱穀できます。
 しかし、最初うまく足踏みしないと歯が逆回転してしまいます。そして、稲穂を歯に当てると回転力が弱まるため、そのつど足を強く押さなければなりません。しかし、彼女達はすぐに要領を覚えました。そして、楽しそうに笑顔をまじえながら脱穀作業をしました。

         回転する歯に戸惑いながらも、すぐに脱穀の要領を会得


 この足踏み脱穀機は子供達にも人気があります。そのリズミカルな動作が体に心地よいのではないかと思います。回転歯が回る音や歯車が回る音も、とてもリズミカルで心地よい響きです。この脱穀機を毎日のように使った昔はとても心地よいはずはなかったのでしょうが、現代人には何か訴えるものがあるようです。

     手に持った稲束を回転歯に当てながらリズミカルに足踏み


  この脱穀機はダイエットになるかも     稲束を裏表と回しながら脱穀
 

 千歯こぎや足踏み脱穀機を脱穀すると落ちた籾を拾い集めます。そして、網を通して大きなワラくずを取り除きます。籾を通してワラくずを通さないように、約1cmX1cmほどの網の目になっています。

              ワラくずが混じっている籾を網で選り分け


 網でワラくずを取り除いた籾ですが、まで細かいワラくずが混じっています。この細かいワラくずを取り除くのが唐箕です。この農具が発明される前は、自然の風や手で扇ぐ箕を使ってゴミを取り除いていました。私の祖母はよく川の土手に行って、箕に入れた大豆を上から落として自然の風でゴミを取り除いていました。この唐箕は手でファンを回して人工的に風を起こして、籾や豆などをゴミを取り除く農具です。風がない時や屋内でも使えるためとても重宝します。「唐」と書くので、古代中国の唐から伝わったのでしょうか。

         手回しで風をおこしながら籾を落とす、最初は四苦八苦


   最初、要領が分からず苦心         原理が分かると使い方は簡単
 

 これまでは人力で脱穀しましたが、次は動力を使った脱穀をしました。昭和20年代の古い石油発動機を動かして、ベルトをつなげて脱穀機を動かします。足踏み脱穀機と違ってあっと言うまに脱穀が完了します。また、ワラくずも奇麗に選別され、さらに米袋に籾が自動的に入ります。今のコンバインに比べれは非効率かも知れませんが、当時は画期的に効率的な農具だったのです。

        発動機を回して、その回転をベルトを通して脱穀機を作動


 この発動機を使う脱穀では、手や足を動かすことがないのでとても楽です。少々音がうるさいのを我慢すれば楽しく早く脱穀することができます。ただし、これ以降の脱穀機などの農機具開発には、石油やガソリンを使ったエンジンが不可欠になります。つまり農作業はより効率的になりますが、高価格の農機具が必要になりそれを動かす石油やガソリンも必要になりました。

            石油発動機の音を聞きながらの脱穀作業


   籾は自動的に米袋に入る        稲束が吸い込まれないように
 

    あっというまに脱穀完了            籾が取れて奇麗なワラ束に                
 

 現代では脱穀したあとの稲ワラは使い道がありません。しか、昔は縄にしたり,わらじにしたり,むしろにしたりと、有用な使い道がいくらでもありました。中でも一番使われたのが縄ではないでしょうか。今でも縄は農業資材として売られています。しかし、今では縄などに利用される稲ワラは極わずかです。ほとんどの稲ワラは、捨てられるか田んぼに切りワラとして散布されておしまいです。
 今回彼女達に、昔よく夜なべしながら作られた縄ない機(「縄撚り機」とも言う)を体験してもらいました。昔、私の祖母は夜になるとこの機械でよく縄をなっていました。なった縄を売れば、ちょっとしたお小遣いになったのでしょう。

           本当は一人で操作しますが、彼女達には3人で操作


 リズミカルに足を交互に踏みながら縄ない機を動かします。二口の受け口からそれぞれにワラの茎を入れると、受け口が交差するところで撚られて縄になります。この機械の難しいところは、足踏みしながら二つの受け口にそれぞれ絶え間なくワラを入れ続けるところです。
 最初、私が一人で縄をなって見せました。彼女たちは何の農機具か最初分からなかったようですが、縄が撚られるところを感心したように見ていました。一人では扱いが難しいため彼女達には、足踏みの係り、右の受け口にワラを入れる係り、そして左の受け口にワラを入れる係りの三人で動かしてもらいました。まず、足踏みの要領が分からず困ったようでしたが、すぐに覚えて楽しく縄をなうことができました。

       足踏み係り、右ワラ挿入係り、左ワラ挿入係りの3人で操作


  要領が分かると楽しい操作          リズミカルな縄ない作業
 

 彼女達は今後、自分達が田植えして稲を刈ることはもうないでしょう。むしろ、十年後位に自分が生み育てる子供が稲刈り体験する時に、懐かしく今日のことを思い出すのではないかと思います。
 今回の体験を通じて、自分達の命をささえる大切な食料がどのようにして作られているのか,食料を生産する自然やそれに関わる生き物の貴重さ、そして、未来をになう子供達のかけがえのない教育の場として里山の大切さを知ってもらえたらと思います。

        今回稲刈りなどを体験した、留学生を含む大学生と先生

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