世界の詩最新事情

毎月1回原則として第3土曜日に世界の最新の詩を紹介いたします。アジア、ラテンアメリカ、中国語圏、欧米の4つに分け紹介。

第11回 マヌエル・クアウトレ―メキシコ―  細野 豊

2018-02-06 00:40:59 | 日記
[作者略歴]
マヌエル・クアウトレ=詩人、写真家、文化振興家。1971年、メキシコ生まれ。メキシコ国立大学で言語学とスペイン語圏文学を学び、同大学の戯曲文学演劇学校で演劇の演技と演出を学ぶ。メキシコ・シティ・ラプラタ文学考証調査研究所の調査員を務め、その後メキシコ連邦区政府文化局で、朗読振興プロジェクトに従事。また、ラテンアメリカ詩と詩人会議を設立した。詩集に、『妄想』(メキシコ、1997)、『流浪の肉体』(メキシコ、2003)、『大地の競合』(メキシコ、2003)、『蝸牛の自殺』(アルゼンチン、2005)、『亡命の楽譜』(アルゼンチン、2005)、『死のカタルシス』(メキシコ、2009)がある。『死のカタルシス』の冒頭には、芭蕉の句、「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」が掲載されている。2011年以降、毎年開催されるメキシコ・シティ国際詩祭の実行委員長を務めている。

詩集『死のカタルシス』(2009)より

生命

わたしはきみに手紙を書く
きみのために
素材を集めているから

暗黙の合図
    それは
戦争の金属と戦い
有罪判決として受けた
暗黒を打ち壊すのだ

一粒の涙
    それは
砂漠の砂を潤すが
    黒い土には
    できないのだ

一本の樹
    それは
自由と民主主義の
新たな独裁の
爆弾で焼かれた皮膚を
冷やすために
   空を覆うのだ

わたしは声の襞を
張りつめようとする
生命(いのち)よ
すでにわたしは
    きみのために
       素材を集めた
          と叫ぶために


本能は飛び

   戸口のない
   家々を建てる

亡霊たちのいないところで
    だれかが壁を盗み取り

奇妙な手たちが
ブロックを瀕死の
オベリスクに造り変える

最後の別れを
告げながら
明かりたちが灯る



郷愁は自らを守る

肉体と名前の
     街角で

経済危機となり

   いい加減な雇用
   と堅苦しい数字の
   野心を
   理解しない
   米ドル

口の中で黄土色に
光る
九千キロメートルの
燠が感じられ

われわれを高める
いかなる大地も
来ないだろう

いかなる高みへも
   冬の温もりへも
       届かない



サボテンを

大地からもぎ取り
それが
川となるに
  まかせよ



死はない  

瞬時の
もろさの中に

   言葉たちは
   文字に
     変わり

われわれは
常に
  海の
底へ届く
  潜水服だ
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
« 第10回 ザウリ・キザトーラ(... | トップ | 第12回 ロランド・カターン... »

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事