世界の詩最新事情

毎月1回原則として第3土曜日に世界の最新の詩を紹介いたします。アジア、ラテンアメリカ、中国語圏、欧米の4つに分け紹介。

第16回 楊克(ヤンコー/Yang ke) ―中国― 竹内 新編訳

2018-07-07 17:02:53 | 日記
 楊克(ヤンコー/Yang ke) 1957年広西チワン族自治区南丹生まれ。「朦朧詩」以後、1980年代から90年代に登場した「第三代詩歌」の実力派。「民間」の立場から詩作する代表的詩人の一人。広東省作家協会副主席、国家一級作家。
 次に紹介する詩は『楊克的詩』(2015年・人民文学出版社)から採っており、竹内新編訳による『楊克詩選』(2017年・思潮社)に入っている。「ダイアナ」は、かなり手を加えた。

楊克詩3篇

商品の間を散歩する

商品の間をぶらついていると 耳はペチャクチャお喋りでいっぱいになる
生命活動そのものも消費ということなのだ
揺れ動く無数の人影が
滑らかできれいな物体の表面を駆け回っている
脚が生み出す暴風 大時代なBGM
私の心は明るさに満ち 全身からめでたい気分が放たれる
五官は楽しみのうちにゆったりし
純銀の触覚によって都市の高みを撫でている

現代のエデンの園 物神崇拝の
神殿 私が願い望む安らぎの場所
福音に耳を傾け 暮らしの授かりものに感謝する
私の通る道は どうしても通らなければならない道
そうすることによって私は物質に還り 人類の根にもどり
また別の意義の内に 新たな人生に入ってゆく
敬虔と畏敬を胸に抱いて 祈り
新世紀の戴冠のため
黄金の雨降るなかで 魂は再び洗礼を受けるのだ
1992年9月5日


ダイアナ

明滅しつつ 幻のように現のように
あなたの控え目で穏やかな微笑みは風のなかの蝋燭の灯り
ケンシントン宮殿からウェストミンスター教会堂まで
短い童話の 最後の道のりを進み終えて
控え目で穏やかな微笑みは風に吹き落とされたバラの花びら

その5、6キロの道のり もう戻ることのない絶世の美貌が
国を挙げての送別を受けている
たとえ 一度しか会ったことがない人 それさえない人にとっても
あなたはひそかに跡を追いかけた白雪姫
ビッグベンよ 心にぽっかり穴が開いたのは全世界だよ

あなたの魂を撮影し命を奪ったそのスナップショット
今尚少しも離れずにあなたの後をつけている 逃れようのない災厄の巡り合せ
狂気じみたパパラッチの追尾のうちに 世紀の美女は
メディアに光栄この上ない傑作をもたらし あなたの写真は
しばしば大小新聞の一面全体に公開されたのだった

ずっとカメラの焦点で生活し
最も光を受けるまぶしい人物 あなたは早くから耐え難いほどに疲れ切っていた
ネット上ではどうすることもできなかった甲殻類
宿命の懲罰を受け
沈黙によって答え どんな論評も拒絶した

さぞかし納得できないに違いないよ 女性は砲車に横たわって
がらがら進むのに反逆しているに違いないよ
終にあなたは帰る家のない人の群れのなかをそのように通って行く
壁に囲まれた宮殿を出たブロンドは 紅葉のように
ロンドンの悲嘆にくれる秋空に生き生きしている

ほっそり白い羽の仙鶴は 銀河の遥かに
まばたく目を閉じる方法もなく
依然として地雷で殺害された人の損傷の実態を調べている
エイズ患者を抱擁している 乳房は一対の鳩のように
西空を明るく照らす夕陽のなかを 翼を振るって飛び立とうとしている

ドラマチックな物語のヒロインは 広く名声を得 つぶさに中傷を受けた
現代文明が陳列する超弩級の飾り物
運命が今ひとたび印刷機のシリンダーロールに巻かれたら
あなたには分かるでしょう 分かるでしょう
今日の戦いはやっと始まったばかりでしょう
1997年


人民

賃金を要求する出稼ぎ労働者たち。
手掘りの大平炭坑から伸び出ている
損傷を被った148人分の掌。
売血でエイズに感染した李愛葉。
黄土の高い傾斜地で羊を放牧する与太者。
指に唾をつけて金を数えるお喋り女。
理髪嬢、合法ではない性サービス者。
都市管理当局とゲリラ戦を展開する露天商。
サウナを必要とする
小経営主。

自転車に乗る通勤族たち。
することもなくぶらぶらしている者。
酒場の放蕩息子たち。茶を飲んだり
小鳥の世話をしたりする年寄り。
人をすっかり困惑させる学者。
ひどく酒臭い酔っ払い、ギャンブル好き、荷担ぎ人夫
セールスマン、農民、教員、兵士
御曹司のお坊ちゃん、乞食、医者、秘書(兼愛人)
職場の三枚目或いは
脇役。

長安街から広州大通りまで
私はまだ〈人民〉に出くわしたことがない。
卑小な話をする無数の身体を目にしただけだ。
毎日バスに乗り
互いに暖を取っている。
それを使用する人間は
それがまるで汚れた小銭であるかのように
眉に皺を寄せて、彼らを手渡すのだ、社会へと。
2004年

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