「詩客」今月の自由詩

毎月実行委員が担当し、その月に刊行された詩誌から1篇の自由詩を紹介します。

第9回 島・河邉 由紀恵 森川 雅美

2018-02-16 13:46:06 | 日記
 毎月、多くの同人誌が刊行されているが、なかなか現在を表現するのは難しい。今回はちょっと風変わりな作品を紹介。掲載は2018年1月10日発行の「どぅるかまら」23号。

 島

 河邉 由紀恵

  あめりか朝顔がのびて
  のびて
  南の窓を軒に
  屋根をひろくおおい
  うら庭では
  キヅタやヘデラや
  ヤブカラシが壁にはりついて
  戸をふさぎ
  野いばらやサンザシが繁っている

  ぼんやりした葉むらや
  ばかげた枝や草むらが
  ぐじぐじぐじぐじとからみあい
  隣の空き家は すでに
  ひとつの島になっている

  なかがおうなっているのか
  だれが住んでいるのか
  わからないが
  島を見ていると
  なかから
  こちらの方を
  ぢいっと のぞいている

  びたりびたりと
  なが雨が降り
  島はうらがわから
  ぬれて すこしずつ
  黒くふくらんで
  ゆっくりと
  這いはじめる

 この作品の面白さは、読んでいるうちに少しずつ風景が動いていくことだ。読み進めると気づくのは、ことばが目と耳に訴えながら詩は進んでいく。はじめになんでもない、風景から始まり、島になりさらにはその島が動き出す。これらを支えているのはごく近い視点からの、蠢くような細かい描写だ。さらに、「ぐじぐじぐじぐじ」や「びたりびたり」などの、神経をひっかうよう擬音に特に現れるような、破音のことばの動きがイメージを増幅させる。ひらがなと漢字のバランスが異様な島を、読者の意識のなかに運んでいく。

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