Sightsong

自縄自縛日記

ニコラス・ローグ『ジェラシー』

2008-11-24 00:03:14 | ヨーロッパ

特に海外から帰ってくると、緊張の反動で1日は虚脱しているもので、買い物以外ろくに何もしなかった。こんなときはインターネットか映画くらいしかないので、夜ビールを飲みながら、ニコラス・ローグ『ジェラシー』(1980年)を久しぶりに観た。

ニコラス・ローグは好きでいくつも観た。妙に耽美的なところ、例えて言えば割れたガラスの破片に映った狭い時空間が遭い乱れるような感覚。自分の趣味を直接的に映画に紛れ込ませるあざとさも悪くない。(あざとさ、というのは、それがスパイスではなくて観客に気付いて欲しいと言わんばかりだからだ。)

この映画では、グスタフ・クリムトエゴン・シーレの絵、トム・ウェイツビリー・ホリデイキース・ジャレットの音楽がはまっている。特にキースは、『ケルン・コンサート』のソロピアノが使われていて、あの甘ったるさが、愛憎劇に重なると堪らない気分にさせられる。主演のテレサ・ラッセルは、ポール・ボウルズ『シェルタリング・スカイ』を読んでいるが、その後恋人役のアート・ガーファンクルと一緒にモロッコに旅するのも「気分」だ。

ローグの映画は、ジョン・マルコビッチ主演の『ハート・オブ・ダークネス』(1994年)を観たのが最後だ。言うまでもなく、コッポラの『地獄の黙示録』と同じ、コンラッド『闇の奥』を原作としている。こちらも、コッポラ作とは違う意味で傑作だったとおもう。

その後どうなのかと調べてみると、2007年に超能力もの『Puffball』という映画を監督しているようだ。現在80歳。もう映画が日本公開もされないが、再評価してほしい映画作家である。


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