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波は重なり合っても(衝突しても)「独立性」を保つ


波は重なり合っても(衝突しても)「独立性」を保つ


月刊科学雑誌 『Newton』
2009年01月号
2008年11月26日発売
株式会社ニュートンプレス


素粒子の世界も支配する物理学の根幹
「波動」の正体
音,電磁波(光,電波,X線…), 地震波,電子の波まで

協力 江馬一弘/中村健太郎/増田 章/山中浩明/米谷民明

http://www.newtonpress.co.jp/science/newton/back/back09/n0901.html


P42~43 より



波の基本的な性質
複雑な形の波も、“きれいな波形”の重ね合わせでできている
波がぶつかり合うと、何がおきる?


二つの波が衝突しても、波は元の形を保つ

二つの波がことなる方向からやってきて、“衝突”したら(重なりあったら)、どうなるだろうか? 物と物の衝突なら、ぶつかってはじけ飛んだり、こわれたりするだろう。

 高さ(振幅)1の山状の波が、左右から進んでできて中央で“ぶつかる”ことを考えよう(右ページ上のイラスト)。二つの波はある瞬間、完全に重なり合い、山の高さは2になる。しかし、元の波は“生きている”。その後、二つの波はすれちがい、高さ1の山が二つ、ふたたびあらわれるのだ。通常、波は“衝突”の前後で「独立性」を保ち、ほかの波からの影響を受けないのである※2。物体の衝突と、波の“衝突”は大きくことなるのだ。 
 たとえば、下から青色(波長が短い)、左から赤色の光(波長が長い)を照射することを考えよう(右ページ中央のイラスト)。赤色の光は、青色の光と“衝突”しても影響を受けず、右側のスクリーンに映るのは、やはり赤色だ。


※2 : ただし、水面波の振幅が大きい場合は、二つの波が影響しあうこともある。




波は重なり合っても
「独立性」を保つ


高さ1の山状の波どうしが近づく(1)。二つの波が重なり合い(足し算され)、高さ2の山状の波となる(2)。二つの波が、いったん重なり合ったとしても、元の波は“生きている”。その証拠に、その後、高さ1の山状の波二つがふたたびあらわれ、遠ざかる(3)。このように波は“衝突”前後で影響を受けず、独立性を保つのである。














光も「独立性」を保つ

左から赤色の光を照射し、下から青色の光を照らす。右側のスクリーンにうつるのは、赤色の点であり、赤色と青色がまざることはない。











通信・放送用の電波の「変調」

無線による通信・放送では、電波を“変形”させて、情報をのせている。電波の変形のしがたは「変調」とよばれる。変調の方法はさまざまあるが、上では、AMラジオ放送で使われる「AM(振幅)変調」を示した。上の「送りたい情報の波形」とは、たとえば、音声や映像の情報をグラフであらわしたものである。

AM変調では、送りたい情報の波形に合わせて、“情報の運び役”である「搬送波」の振幅をかえてやり(右向きのオレンジ色矢印)、電波(変調波)として送信する。「電波の周波数(振動数)」といった場合、この搬送波の周波数のことをさす。受信側は、変調波を受信したあと、情報の波形をとりだす(復調:左向きのオレンジ色矢印)。なお、AM変調は、「波の足し算(重ね合わせ)」ではなく、「波のかけ算(送りたい情報の波形×搬送波)」に相当する。

























前ページのイラストには、きれいな波紋をえがいたが、実際の海の波は、通常、もっと複雑な模様をえがいている。さまざまな波長や振幅の波が、さまざまな方向からやってきて、それらが重ね合わさることで、実際の波をつくっているのだ(イラスト中央)。

 逆にいえば、複雑な形の波でも、分解すれば、“きれいな波形”の重ね合わせとして考えることができる。ここでいうきれいな波形とは、波長や振幅が一定の波のことだ※1。この後のページでも、きれいな波形を例にして、さまざまな波を紹介していくが、それはきれいな波形がすべての波動現象の基本だからである。

 以上のことは、すべての波動に当てはまる。この後に紹介する地震波、音波、光、電波なども、実際の波形は複雑だが、きれいな波形を基本として考えることができる。


※1 : “きれいな波形”とは、数学で「正弦曲線(サインカーブ)」と
      よばれるもののこと。
      中央のイラストのAの縁の赤いラインが正弦曲線である。
      さまざまな波長・振幅の正弦曲線を、さまざまに位置をずらして
      重ね合わせれば、どんな複雑な波形もつくりだすことができる。




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