Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

東博「飛騨の円空」展

2013年01月23日 21時22分56秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
      

 昨日、東京国立博物館で「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」展を見ることができた。
 確か以前にやはり東博の平成館だったと記憶しているのだが、円空上人と木喰上人の二人の作品をかなりの数であったと思うが見たと思う。そのとき私としては円空上人の作品の方が好みだなと感じた。
 今回は高山市内に現存する円空仏100体が展示されている。



 会場に入ってすぐに展示されているのが上に示した「賓頭廬尊者座像」。信者の手でなでられたのであろうピカピカに黒ずんで光っていて、そして木目が実に美しい。よくこれだけ磨き上げられたと思うほどだ。これほど信仰されたのであれば、像自身も、作った円空上人も満足ではないかと思うほどだ。この尊者は撫で仏と呼ばれるそうだし、これ以上に撫でられている仏像は他にもあるかもしれないが、木造の像で350年くらいも撫でられ続けたら像は跡形もなくなってしまう。元の形をとどめて大切にされながら伝えられてきた歴史を垣間見たような気がする。このような作品がまず目に飛び込んでくる展示もなかなか心憎い。

   

 次に目に飛び込んでくるのが、高さが2メートルを越える二体の「護法神立像」。一本の木を4つに割いて作られたものらしい。説明では怒りの表情で、村に邪気が進入するのを防ぐためのものだったとあった。そういうことなら村の境界付近に据えられたか、そのような場所のお堂などに納められていたのかもしれない。しかし両目がつりあがっているものの、私には「怒り」の表情にはどうしても思えなかった。見る角度にもよるのかもしれないが、口元が目と平行して上向きに円弧を描いているので、微笑んでいるように見える。そして口の周りがへこんでいるので笑窪のような具合だ。円空上人という人の性格の反映なのか、それはわからない。邪気や悪を退散させるかもしれないが、訪れるものを歓迎する柔和な顔にも見えてしまう。それが円空仏の魅力なのだと思う。



 そして上に掲げた「十一面観音菩薩立像」はいかにも円空の像らしい目元をしている。頭の上の観音の顔は三十三観音の顔とそっくりだと思う。実は十一面ではなく六面とのことで、それぞれ飛騨山脈(北アルプス南部)の乗鞍岳、穂高岳、焼岳、錫杖岳、双六岳、笠ヶ岳をあらわすとのこと。山登りが好きな人はこれはお守りにするといいのかもしれない。

   

 次は、「三十三観音立像」。目元は、浅くてそれでいて戸惑いなくさっとひかれたと思われる勢いのある彫り、いかにも円空像らしい円空像だと私は思う。典型的な円空仏の表情のような気がする。
 実際は31体しかないそうで、病気平癒を祈る人に貸し出された後戻ってこなかったのがあるため、2体少ないのだということの説明があった。いかにも円空像らしい説明であるが、話の真偽のほどはいかがなのであろうか。特に真相究明は必要ないと思うが。この像、図録の中では他の像と同じような光線を利用した写真と、図録の表紙のように光を最小限にした写真と二つがある。光線の具合でこんなに雰囲気が変わるのも仏像の魅力のひとつである。私は後者のような雰囲気で仏像と相対するのが好きだ。好みは分かれるであろうが、この方が私にはしっくり来る。静かで無言のたたずまいがとても好ましい。

    

 その他今回私の心に残った像は、上記の「不動明王立像」と「如意輪観音菩薩座像」。彫りの深い顔と対照的に、不動明王は剣が少々曲がって顔にくっついているところに可笑しみも感じられる。自在な造形技術ではないだろうか。
 後者の如意輪観音菩薩座像は頬に当てた手が何とも心憎い。これも菩薩像としては彫りが深くて表情が豊かである。衣文の曲線も美しい。不動明王立像と対照的な落ち着きがある。

 今回の展示、私は展示の仕方、並べ方にとても感心した。照明を暗くして、程よいスポットライトで照らし出された仏像の数々、そして像の後ろに張られた濃い緑色を貴重とした布地、よく見ると黒く木立をかたどった文様が施されている。鬱蒼とした飛騨の国の奥深い森をイメージしたのであろう。それを前にした荒削りの、土着信仰と調和を仕切ったような円空の仏像
に似つかわしい展示室のしつらえである。並べ方もいい。
 そしてもう一度見に行きたい企画であった。

 ただこれほどの人が鑑賞に訪れることを考慮するのであれば、部屋はあまりに狭かったように思う。並べ方もいいのだが、混雑するとその意図する展示コースでは人の流れを処理し切れなくて、人とぶつかってしまう。出雲の時のようにせめてもう一室準備してほしかった。
 平日であの人ごみだから、休日や、春休みにあたる会期末にはゆっくりと鑑賞できないような気がする。



 この円空展の記念講演会が1月26日、3月9日に行われるとの情報が入ったのだが、いづれもすでに予定が入っていて申込すら出来なかったのが残念であった。行かれた方の感想が是非とも聞きたいものだ。



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