こんなことを言ったら耳が不自由な方に失礼になるが、聾者を演じるのも大変だったろう。NHKが放送した佐村河内氏の姿は、まさに「現代のベートーベン」の表現に違わない神秘性まで兼ね備えていた。後頭部を壁に打ちつけながら「音符が天から降りてくる」。天才のみしか言いえない言葉だと多くの視聴者が思ったことだろう。だが、空中楼閣は「共犯者」の告発によってものの見事に砕け散る。楽譜を書けなかった。楽器を演奏できなかった…。こうなったら被爆二世の信憑性、不自由な足にまで疑惑の目が向けられる。佐村河内氏は謝罪文を公表し、近く公の場で直接謝罪したいとしている。彼の作品のコンセプトは受難。それを自身のハンディキャップで補強した。彼を支持した多くのファンもそこに共感した。だがそれが全てまやかしだったとすれば、支持はそれまで以上の逆風になり彼に襲い掛かるだろう。
最初の嘘は悪意に満ちたものではなかったろう。だが、与えられた称賛が嘘を拡大していき、不可逆点を容易に超えていったのだろう。「一つの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負いこむか滅多に気付かない。一つの嘘を吐き通すために別の嘘を二十発明しなければならない」=スウィフト。恐ろしいことだね。
最初の嘘は悪意に満ちたものではなかったろう。だが、与えられた称賛が嘘を拡大していき、不可逆点を容易に超えていったのだろう。「一つの嘘をつく者は、自分がどんな重荷を背負いこむか滅多に気付かない。一つの嘘を吐き通すために別の嘘を二十発明しなければならない」=スウィフト。恐ろしいことだね。