鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2012.5月取材旅行 福島・三春の滝桜と自由民権記念館 その15

2012-06-14 05:45:00 | Weblog
 三春町歴史民俗資料館・自由民権記念館が開館したのは、昭和58年(1983年)4月のこと。旧藩時代の武家屋敷跡地を利用したものだという。すでに30年以上の歴史を経ていることになります。

 その2年前の昭和56年(1981年)は、「自由民権100年」の年であり、その年秋には河野広中の銅像が完成し、一体は福島県議会の玄関前に、もう一体は広中の出身地である三春町の高台に設置されました(同年12月)。

 その一体については、この歴史民俗資料館・自由民権記念館のある桜谷の上り口、右手の「自由民権ひろば」に立ち寄った時に、目の当りにしました。

 長井純一さんの『河野広中』によれば、このフロックコートを着た広中の銅像は、大正11年(1922年)、東京の芝公園で演説する彼を写した写真に基づいて造られたものだとのこと。

 高橋哲夫さんの『河野広中小伝』の年譜によると、それは彼が73歳の時であり、芝公園や赤坂山王台の普選大会で広中は演説をしています。そして翌年の12月に広中は、小石川区大塚坂下町で亡くなっています(74歳)。

 『河野広中小伝』によれば、大正9年(1920年)、東京で参加者7万人余の普選デモが行われ、そのリーダーには河野広中・尾崎行雄・片岡潜の名がみえるという。その年3月、河野は尾崎行雄・三木武吉らを福島市に迎えて普選大会を開き、6月には上野公園で野外大演説会を行っています。その日には5万人の民衆が詰めかけ、席上、広中は「老骨にムチ打って、舌端火を吐く熱弁」をふるいました。

 以来死去する大正12年まで、普選大会のあるところには、必ず河野の顔があったと高橋さんは記しています。

 「自由民権運動家河野は、幾多の政界遍歴を経ながら、最後にはやはり政治の民主化普選運動に情熱を燃やし、そして燃え尽きたのであった。」(同書P122)

 8:30に開館したので、さっそく歴史民俗資料館に入り、それに付設されている自由民権記念館へと移動しました。

 写真パネルや文書などを中心とした展示であり、予想していたよりも館内は広くはなかったものの、三春町や福島県の自由民権運動の概略を知ることができました。

 加波山事件に関わった福島県人11名のうち、三春の人は5名であるという。

 その内訳は、琴田岩松・山口守太郎・天野市太郎・五十川(いかかわ)元吉・河野広躰(ひろみ)。

 この5人とも学塾「正道館」に学んでいます。

 その中の「五十川元吉」の名前については、中江兆民関係で私の記憶にありました。高知の立志学舎で学び、兆民の主宰する東京の「仏学塾」に短期間ながら滞在して学んでいるはずです。

 また長井純一さんの『河野広中』によれば、広中は2度目の高知訪問の時(明治12年9月~10月・甥の広躰を伴う)、10月18日、植木枝盛を訪問していますが、その時、枝盛は広中に自著『民権自由論』を与え、またそこでルソーの兆民訳『民約論』の写しを閲覧させてもらった(筆写はせず)という。

 福島県や東北地方の民権家に、ルソーの思想を広めていく上で、河野広中の果たした役割は大きかったものと思われます。

 館内には、「自由民権運動研究家 高橋哲夫先生の足跡」というコーナーもありました。

 『加波山事件と青年群像』の挿絵は高橋哲夫氏が描かれたもので、その原画が展示されていました。瑞々しく端正な水彩画で、高橋哲夫さんの人柄がにじみ出ているようでした。

 大正7年(1918年)生まれで平成20年(2008年)に89歳で亡くなっています。

 三春町や福島県の自由民権運動研究においては、中心的な存在であった方であり、館内にも著作が多数並べられていました。

 実は、私は町田市立自由民権資料館で、高橋哲夫さんの本を何冊か目を通しており、その中の一冊、『歴春ふくしま文庫64 風雲・ふくしまの民権壮士』を開いた時、そこに「町田市立自由民権記念館 高橋哲夫 平成十五年十一月」とペン書きされているのを見つけたことがあります。

 それには「イラスト著者」ともあって、「五十川元吉の生家 南町」(P123)、「正道館の門(旧藩校)」(P124)などのイラストを見た覚えがあります。

 高橋さんが『風雲。ふくしまの民権壮士』を町田市立自由民権資料館に寄贈されたのは、亡くなる5年前のことであることを、ここで知りました。


 続く


○参考文献
・『河野広中小伝』高橋哲夫(歴史春秋社)
・『河野広中』長井純一(吉川弘文館)
・『風雲・ふくしまの民権壮士』高橋哲夫(歴史春秋社)
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