鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2007.11月の「国府津・小田原宿」取材旅行 その6

2007-11-24 06:20:21 | Weblog
 「町の外側には門と番所があり、また両側にはきれいな建物があった。町筋は清潔でまっすぐに延び、そのうちの中央の通りはとくに道幅が広い。郊外の町々を含めると、半時間では通り過ぎることはできない。およそ1000戸ぐらいの家々は、小さいけれども小ぎれいで、大抵白く塗られていた。多くの家は方形の土地に小さな庭園を設けていた。」

 ケンペルは、「うるさくつきまとう子どもたちには辟易(へきえき)」したとも記しています。いつの時代でも子どもたちは好奇心旺盛で、場合によっては遠慮がない。「トージン(唐人)だ!トージンだ!」とでも言って、ずーっと街道筋を付いてきたのかも知れない。

 そう言えば、ベアトが写した小田原宿欄干橋町の写真に、好奇心旺盛なはずの子どもたちの姿がまったく見えないのは不思議です。

 時刻は16:30を過ぎたので、今回の取材は、この「ういろう」前で終えることにして、道を戻る。御幸の浜交差点を左折。左手に小田原市立三の丸小学校の立派な校舎と、小田原城の堀と城。

 馬出門跡があり、「よみがえる馬出門 国指定史跡小田原城跡 馬出門枡形復元工事 小田原市」と書かれた看板が目に入りました。その工事のため馬出門(土橋・「めがね橋」とも)は平成21年3月30日まで通行止め。この復元工事が完成すると、このあたりの雰囲気はまた大きく変わるに違いない。

 左手に学橋。

 同じく左手に「本は心の糧(かて」)と書かれた看板を掲げた「お濠端古書店」。こぎれいな店内をざっと見る。郷土本もかなりある。

 このお堀沿いの道は「お堀端通り」。夕暮れで灯(ひ)ともし頃ということもあって、道ゆく人も何か楽しげで、なかなか風情のある通りです。

 中央三井信託銀行小田原支店前を右折。小田原駅に到着。17:09発の小田急、新宿行き急行に乗りました。箱根湯本から来た急行ですが、小田原で下りる人が多く、座ることが出来る。しかしあっという間に満席になりました。

 今回の「国府津~小田原宿」の取材、いやあ、面白かった。やはり歴史が詰まっています。人との出会いもありました。とにかく話を聞いた人たちがみな丁寧に教えてくれた。特に「籠常」のおばあちゃん。温かい人情に触れた思いがしました。

 国府津町の西側に、あんなにレトロな商店や建物が残っているとは意外な発見でした。やはり歩いてみるもの。映画『三丁目の夕日』など、昭和30年代が一つのブームになっているようですが、その「昭和レトロ」が味わえるところでした。建物を紹介するガイド・パネルや歩道を整備するだけでも「町おこし」につながるのでは、と思われました。

 行政が推進したようですが、小田原市の「街かど博物館」の取り組みはすばらしい。「博物館」ということなので、気楽に入れる。「何か買わなくては」と思わなくてもよい。そこのところは店の人もわきまえておられる。小田原の老舗が、箱根の多くの温泉旅館や小田原城下の人々(「お得意さま」)に支えられていることがよくわかりました。

 ベアトが写真を写した場所については、「なりわい交流館」前の案内板や「なりわい交流館」の中の町割図で、店の名前や位置がわかり、とても参考になりました。現場を踏まえてこそわかることが多いことを、今回も痛感しました。しかし、ベアトの写した小田原宿の写真については地元の人でも知らない人が多かったことはやや残念。小西薬局のご主人が知っていたぐらい。あの写真を大きく拡大したものが、あの「なりわい交流館」の中に展示されていたら、なかなかインパクトがあって面白いだろうな、と思いました。

 小田原は町としての歴史が古く(東京〔江戸〕よりも古い)、歴史が詰まっています。各所にある石碑(町の由来を記したものなど)やガイド・パネルが、そのことを教えてくれました。行き届いた配慮に、人々の町の歴史に対する誇りを感じ取ることが出来ました。

 小田原市内の旧街道沿いは、今回初めて歩きましたが、新宿を左折してすぐに右折して真っ直ぐに本町まで延びる道筋は、往時の賑わいはなくなっているものの、閑静な趣のある通りだと思いました。町並みの歴史的景観を保存するとともに、時間帯によって車を通行止めにするなどして、「歴史の散歩道」として生かす取り組みが出来ないものか、と思われました。

 そういったことを思いながら、あっという間に海老名駅に到着。普通に乗り換えて座間駅に着いたのは18:06でした。


○参考文献
・『外国人の見たHakone ─避暑地・箱根の発見─』(箱根町郷土資料館)
・『箱根と外国人』児島豊(神奈川新聞社)
・『小田原市史ダイジェスト版 おだわらの歴史』(小田原市立図書館)
・『あるく見る 箱根八里』田代道彌(かなしんブックス)


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