鮎川俊介の「幕末・明治の日本を歩く」

渡辺崋山や中江兆民を中心に、幕末・明治の日本を旅行記や古写真、研究書などをもとにして歩き、その取材旅行の報告を行います。

2008.12月「能見台~金沢八景」取材旅行 その9

2008-12-15 05:17:09 | Weblog
 ガイドパネルによると、この琵琶島神社は、北条政子が近江の竹生島から勧請(かんじょう)した弁天を祀ったものだという。もともとは瀬戸神社前面の海中にあって、二つの島を橋で結んでいたとのこと。

 現在は石垣のある突堤になっていて、その先端に琵琶島神社の小さな祠があります。

 この突堤の付け根、左側あたりがかつては石段になっていて、洲崎や野島湊方面への渡し舟が発着していたのです。

 突堤の先端には数人の釣り客がいて、竿を海面に垂れていました。

 平潟湾の向こうには野島が見えます。右手にはシーサイドライン金沢八景駅に停車中の電車の車両が見えます。湾にはおびただしい数の釣り船やレジャーボートなどが停泊しています。湾に沿っては高層住宅なども建っていたりして、谷文晁やベアトなどが九覧亭から見た景色はほとんど失われていますが、かつての雰囲気は感じ取ることができました。

 車が激しく行き交う国道16号線を渡って、瀬戸神社前に到着したのは14:19。ここが保土ヶ谷宿から延びている「金沢道」の終点になります。ここから朝比奈の切り通しを経て鎌倉へと向かう道は、「六浦道」(鎌倉道)であり、鎌倉時代は幕府の所在地鎌倉とその外港である六浦津を結ぶきわめて重要な道でした。

 案内板にもそのことが記されています。

 それによると、六浦庄は中世都市鎌倉の外港で、瀬戸神社は、平潟湾と瀬戸入海をつなぐ潮流の速い海峡を望む地点にありました。鎌倉幕府以来、執権北条氏、鎌倉公方足利氏、小田原北条氏などといった歴代の権力により保護されてきたという。現在の社殿は寛政12年(1800年)に建造されたもの。

 瀬戸神社社叢林は、横浜市指定天然記念物になっていました。社殿の裏はタブノキ・クスノキ・シロダモなどの常緑広葉樹が下部に密生し、尾根状地にはスダジイが、そして谷部にはケヤキの高木が散生しており、かつての横浜市の海岸沿いの自然林の面影を残しているものとして貴重であるという。境内にある大カヤは樹高が26m余、胸高周囲が172cmもあって、関東地方でも珍しいほど成育したカヤであるとのこと。

 境内に入ると、その大カヤ(名木古木指定)やイヌマキ(これも名木古木指定)があり、また鳥居左手にはやはり名木古木指定のクスノキがありました。

 「長崎大学附属図書館 幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース」(横浜)には、「金沢の瀬戸神社」(1)(2)という写真が出てきます。この2枚はまったく同時期に写されたものですが、瀬戸神社の鳥居付近のようすがよくわかります。鳥居前を奥に向かって延びている道が「六浦道」(鎌倉道)で鎌倉へと続いています。鳥居手前から逆方向に向かって延びていくのが「金沢道」(金沢の人にとっては「保土ヶ谷道」)。瀬戸神社境内にはうっそうと木々が繁っています。この道は、現在は国道16号線になっていて、車が激しく行き交っています。この鳥居前から左手に、琵琶島弁才天へ続く平潟湾に突き出した突堤があり、道左側手前の岸辺には「千代本」という旅宿(茶屋)があり、その「千代本」は今でも料亭として健在です。

 境内を出て、国道16号線を観音崎・横須賀方面へ向かいます。

 右手奥に「京急金沢八景駅」を見てしばらく進み、途中で通りを渡って左手に折れると臨済宗建長寺派の昇天山金龍禅院の前に出ました。ここが有名なビューポイントである九覧亭があるところ。

 しかし門は固く閉まっており、中には入れない。お寺の門が日中閉ざされているというのは珍しい。

 やむなく国道に戻り、やや進んで、金沢警察署六浦交番の手前で左折。

 九覧亭があったと思われる金龍院裏手の丘陵、平潟湾側にある住宅街の中を歩いてその真下あたりに着くと、その丘陵の斜面はコンクリートの壁で覆われ、その手前に、「瀬戸町やぐら群・横穴墓」と書かれたガイドパネルがありました。

 九覧亭の下の丘陵斜面には、中世からのお墓(横穴墓)がいくつもあって、平潟湾側に(すなわち入江や海、野島などの島々を見晴るかすようにして)その穴が開いていたのです。

 これはおもしろい「発見」でした。

 歩いているからこそ、「発見」できたといえる。

 しかし、その穴(横穴墓)は、現在は崖崩れを防ぐためかぶ厚いコンクリートで覆われています。


 続く


○参考文献
・『図説かなざわの歴史』(金沢区制五十周年記念事業実行委員会)
 ※この本は、かなり力を入れてまとめられた本で、金沢の歴史の変遷が原始・古代から詳しくまとめられています。大変参考になりました。この地域ならではの視点が随所に見られました。

・『金沢八景』(神奈川県立金沢文庫)
 ※この本も、「金沢八景」について詳しくまとめられています。古写真や浮世絵なども豊富に掲載されています。広重の浮世絵についての記述が詳しい。

・『F.ベアト写真集2』

 ネット
・「長崎大学附属図書館 幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベース」(横浜) 


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