もう騙されないぞ(Won't Get Fooled Again)

旅、音楽、日常・・・まったり雑談します

初めてのバックパック旅行(2)

2004年09月25日 | 1997ネパール
9月に入ったにもかかわらずバンコク行エア・インディアには多くの旅行者が搭乗していた。
僕は窓側の席に座っていたが、隣に座った日本人も学生旅行者だった。
隣に座った旅行者はインドのデリーに向かうらしく、到着時刻が深夜になるのをしきりに気にしていた。
「なんか、白タクの車に乗せられて、あやしい旅行代理店に
連れて行かれるっていう話を聞くんですけど、どうですかね・・・」
「うーん。デリーで降りるのはあなただけじゃないはずだし、
他の旅行者と相乗りして安宿街に行ったほうがいいんじゃないですか?」
今の僕は自分の旅が始まったのが嬉しくて仕方がなく、
他人の心配を気にしている余裕などなかったので、適当なアドバイスを彼に送った。

エア・インディア機は予定どおり夕方にバンコク・ドンムアン空港に到着した。
デリーに行く彼に「よい旅を」と言って別れ、空港内に足を踏み入れた。
バンコクの空港はエアコンがよく効いていた。効きすぎているといったほうがいいかもしれない。
イミグレーションの列に並んでいると、一人の日本人が僕に声をかけてきた。

「あのぅ、これからタイですか?」
「ええ。でも、明日の便でネパールに行きます」
「僕、これからチェンマイまで飛行機で行くんですよ。国内ターミナルってどこにあるんですかね」
「うーん。たしかもう一つのターミナルが国内用だったと思うんですけど」
「もし暇でしたら、一緒にその国内ターミナルに行ってもらえませんか?」
「え?まぁ、明日の朝まで暇といえば暇なんですけど・・・」
「お願いします。実はこれが初めての海外なんで、不安なんですよ」
「そうなんですか。僕も一人で海外は初めてなんでちょっと不安でねー」

そういうわけで、僕と日本人旅行者(この人も学生だった)は国内ターミナルまで移動した。
念のために言っておくが、この旅行者は男性である。
もし女性であったら、僕は喜んで彼女の願いを受けとり、
時間が許すまで近くのカフェテリアで喋っていたことだろう。
しかし現実は、メガネをかけた、商学部風の芸術系大学の男子学生だった。
僕にはそれを断る理由はあったはずだ。

ごめん、今日は疲れてるからバスでカオサンに行って宿で寝たいんだよ。
ほら、明日は8時の便でネパールに行かなきゃ行けないし、今だってもう17時になろうとしている。
もし空港で時間をつぶし、夜になってカオサンに行っても
ひょっとしたら宿が全て埋まっているかもしれない。
今はもう9月だけどこんなに旅行者がいるからね・・・

結局どういうわけか、僕は彼と国内線ターミナル内にあるケンタッキー・フライド・チキンで
彼が乗るチェンマイ行きの便が出るまでとりとめもない話をして盛り上がった。

彼を見送った後、僕は時計をもう一回確認した。20時を過ぎてる。
今からバスで安宿の多いカオサンに行っても、着くのは21時を過ぎる。
明日の便は朝8時だ。せめて5時にはカオサンを出なければいけない。
僕は早起きが大の苦手だ。初めての海外一人旅というのもあってか、疲れている。
5時に出るということは、4時に起きなければいけない・・・

結局僕はドンムアン空港内で夜を明かすことに決めた。

東南アジアを代表するハブ空港であるドンムアン空港は夜になっても
飛行機の離着陸が続き、搭乗予定の客も数多くいた。
20時過ぎといってもまだ眠気はおきず、僕は手ごろなカフェを見つけてテーブルにつき、
日本ではまずやらない日記を書き始めた。

日記を書き終え、夜食もとった僕は寝床を探し始めた。
幸い空港内には人が横になれるようなベンチがいたるところに存在する。
しかし、あまりにも人気のない場所で寝ると、貴重品を取られる心配があるので、
なるべく明るくて人もいる場所を選ぶことにした。
空港内をとぼとぼ歩いていると、CNNを流しっぱなしにしているテレビの前に
ベンチが数列並んでいたので、そこで寝ることに決めた。
最初は横になりながら英語で話されるニュース映像を眺めていたのだが、
30分置きに同じニュースをやるので、いい加減飽きてしまい、
僕はいつの間にかバックパックを枕にして眠っていた。