第一部も第三部の「ナウシカ」と同じく以前、新橋演舞場でスーパー歌舞伎「オグリ」として上演されました。
そのときは、主役の小栗判官を猿之助と隼人君のダブルキャストで勤め、若手主体の華やかな舞台だったと記憶しています。
今回は歌舞伎座なので正統派と言いますか、「當世流小栗判官」という三代目猿之助四十八撰の内という位置づけ。
こちらも通し狂言ではありますが、短縮バージョンになっていたため、ちょうど学生(中学生?高校生?)の団体さんが近くにいて、
「よく分からない」という声が聞こえてきて、思わず解説してあげたくなりました。
私は演舞場バージョンでじっくり見ていたので、十分理解できたのですが、登場人物が多く、しかも一人二役とかになると混乱するのは当然。
しかし余計なことをして不審人物に思われるといけないので、幕間も無言で聞き耳だけ立てていました。
だって女子高生の会話って面白いんですもの。
猿之助@小栗と笑也@照手姫のカップルがクライマックスで天馬に乗って宙乗りする場面では、隣の女子高生二人がしきりに心配してました。
「お姫様でも横座りは危ないよ~、恐いよ~、跨がないと!」とハラハラしながら見ていたのでしょう。
優しいね、でも大丈夫だよ、宙乗りは彼ら澤瀉屋さんの専売特許だから。
そして、今月も巳之助が違う意味で魅せてくれました~。
出てきた瞬間、誰だか分からないほどの醜男メイクの巳之助、サイコー!
ここまで振り切っているのがすごい。
こんなこなれたお役ができるようになったのねぇ。
「先月はここで梅王丸やってたのに。その前は南郷力丸とかカッコいい役が続くなぁと思ってたら、何ですか?これは」と。
学生さんには分からなくても、毎月通う歌舞伎ファンは吹き出してました。
確かに梅王丸は松緑@松王丸を喰うほど良かったですから。
「猿之助の兄さんに騙された。ミッ君、いい役があるのよと言われたんですよ」と花道でぼやくわ、ぼやくわ、止まりません。
以前はからかわれる側で居心地の悪そうな、落ち着かない様子だったのが、堂々と長々と情けない役を勤められるようになって立派。
猿之助はウソついてません。
新境地のいいお役。
こういうミッ君も素敵ですよ~。
それに最後は二役で、ちゃんと美しい化粧と立派な衣装で口直しをしていましたし。
他にも歌六さんをはじめ芸達者な役者が揃ってテンポ良く、アッと言う間におしまい。
眞秀君、いとこの丑之助君に負けないように頑張ってます。
「お母さん(寺島しのぶ)がしごいてるからねぇ」と別の舞台の時に劇中でからかわれるほど、猛特訓しているのでしょう。
お顔が相変わらず、凛々しい。
少しの間に一段と背も伸びました。
足が大きいからまだまだ伸びそう、将来は立役がいいかもと客を楽しませてくれます。
今月は右近がとても綺麗でした。
最後は二役で立役を勤め颯爽としてカッコいい。
兼ねる役者として今後も活躍するであろう彼には、いつか照手姫をやってほしい。
こうして多くの役者が登場するとコロナの問題が再燃するわけで非常に難しい状況ですが、数人でできるものとなると舞踊などに偏り、
興味が半減する客も少なくないでしょう(私がそう)。
三部全てを見たところ各部とも客の入りは悪くなく、徐々に客も演目も戻ってきていたのに千穐楽まで行けず実に無念だろうと思われます。
八月歌舞伎の幕が無事に開くことを祈りつつ、今月も観劇できた幸運を思い返しているところ……。