浅草文庫亭

"大哉心乎"
-大いなる哉、心や

アメコミ映画論

2013-06-21 00:08:04 | DVD、映画
ちょっとここでまとめて「アメコミ映画」について書いておきます。何のために?いや、目的なんて無いんだけど。オチも無い。

いまハリウッド映画においては「アメコミ原作もの」というのはひとつの文化になってきていると思う。「アメコミってあれでしょ?ヒーローが出てきて悪者をバーンとかやっつけるやつでしょ。あんなの子供っぽくて」と思う人もいるかも知れない。

僕だって昔はそう思っていた。

でも、今は時代が違ってきていると思う。それについて書きたい。

言っときますけど僕は専門家ではなくて、単なる興味から、浅い知識で書いています。だから考察が浅いとか間違ってるとかにご容赦くださいね。ご指摘はありがたく承りますが、バカ丸出しとか言われても困っちゃいますからね。

論点は2つ。

1)なぜアメコミ映画がこれほどまでに作られているのか
2)アメコミ映画がなぜ人気があるのか

本題に入る前に、少し前提を説明させてください。

「アメコミ」というのは「アメリカンコミック」の略でアメリカで出版されている漫画。「日本の漫画」というとスポーツ漫画から恋愛モノ、料理漫画までいろいろあるのと同様、アメリカの漫画だってもちろんいろんな話があるんだろう。でも、ここではいわゆる「アメコミヒーロー物」に限定します。僕が知識がないから恐縮なんだけどヒーロー物以外のアメコミをあまり知らないし。ここで「アメコミ」と言ったらアメコミヒーロー物のことだとご理解下さい。


【1)なぜアメコミ映画がこれほどまでに作られているのか】

さて、最近はアメコミヒーロー物を原作にした映画が本当に多いです。

特に去年がすごかった。「アベンジャーズ」、「ダークナイト・ライジング」、「アメージング・スパイダーマン」、とメイン所がバンバン公開された。それに比べると今年は「アイアンマン3」、「マン・オブ・スティール」くらいか。

僕の感覚だけど最近のアメリカ映画はアメコミ原作映画が3割くらいを占めているんじゃないかと思う。あと3割くらいが過去のリメイク。なにせ「グレート・ギャッツビー」もリメイクされるんですよ。

確実にこの流れというのは数十年後、映画史の流れとして歴史に残っているだろうと僕は思っている。下手すると経済史にも残っているんじゃないかと思う。(もちろん芸術的にそれぞれの映画が意味がある、とまでは言わない)

確実に我々は大きな歴史の流れにいる。つまり我々はいま「アメコミ映画全盛期」にいるのだと思う。

では、なぜいまこれほどまでに「アメコミ映画」が流行っているのか。その原因は何か?

まず、一つには最近の不景気が原因であると言えるんじゃないかと思う。

映画を作るためには資金が必要なんだけど、昔はある意味ワイルドな出資者がいて「君が映画作るならお金を出したるわい、ガッハッハ」とポーンとお金出してくれていた。昔はそういう人たちがポンとお金をだし、当たれば大儲け、外れれば破産、という状態だった。

しかし、そんな豪気な人は今の時代にはもういない。

映画作りは既に「ギャンブル」ではなく、出した分しっかり回収できないといけない「投資ビジネス」になっている。

余談だけど、日本映画の製作が最近「○○製作委員会」になっているのもそういう理由。一社だけじゃ映画作りのリスクを負いきれないので、複数の会社が共同で委員会を作り、映画を製作する。映画を製作している、というのはつまり「金を出している」ということです。

このように、今の時代に誰が映画にお金を出しているかと言うとそれは「会社」です。アメリカの会社はもちろん、ドバイの投資会社とか中国の会社とか。最近は中国の会社が多いらしいね。だから最近の映画は意味なく主人公が中国に行くことが多い。007だって上海行ってたし。

つまり現代はビジネスマンが映画にお金を出している、ということになる。そして、そういう人たちは映画の専門家ではないのでシナリオを読んで「いい映画になりそうかどうか」ということなど判断できない。

では、彼らビジネスマンが何を基準にお金を出すかどうかをどう判断するか。それは「数字」しかない。つまり「出したお金がいくらになって返ってくるか、返ってきそうか」ということ。その割がよければ出すし、悪ければ出さない。

ここで漫画の「数字」が効いてくる。たとえば「この漫画は1000万部売れているんです」ということになれば、「じゃあ、それだけ売れているならそのうちの●パーセントが観たとして、一人1,800円で、そのあと●パーセントがDVD買うとして、、、」と計算が出来る。

リメイクが多い理由も同様。「この映画のオリジナルは昔いくら儲かりました。それをリメイクするからこれくらい儲かることが見込めます」と言える。もちろんそれが正解かどうかは誰にも分からないけどね。ポシャッたアメコミ映画はいくらでもある。

これが、アメコミ原作の映画が増えている理由なんじゃないだろうか。

【2)アメコミ映画がなぜ人気があるのか】

いくらビジネス上の理由でアメコミ映画がたくさん作られても、それが観客に受け入れられなければ、つまり「多くの人が観なければ」、この流れというのは一時的なもので、続かないだろう。これが作られ続けているということはアメコミ映画の人気がある、ということだと思う。

では、なぜアメコミ映画が人気があるのか。

以前であれば「強いヒーローが悪をやっつける」から、という単純な話だったと思うけど、現代のアメコミものというのはそういう話ではないと、僕は思っている。

これまた説明になってしまって恐縮ですが、アメコミヒーロー物には大きく2つの流れがあります。

一つは「マーベル・コミックス」。ここが権利を持っているヒーローがスパイダーマン、X-メン、アベンジャーズ、など。もう一つが「DCコミックス」。ここが持ってるのはスーパーマン、バットマン、など。

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ちなみにいまマーベルはえらいことになっています。以前はコミック出版が主業務だったんだけど、映画作りに進出した。それでスパイダーマンとかX-メンを作って大当たり。更に「アイアンマンを映画にします、キャプテン・アメリカも映画にします、ハルクもソーも作ります。そして最後にそれを全部集めて1本の映画にします」と言っただけで600億円くらい集めた。その結果、世界最大の映画制作会社になってしまった。更に2009年にはそのマーベルをディズニーが買収した。こないだディズニーはルーカスフィルム(スター・ウォーズシリーズの権利を持っている)も買収したし、傘下にピクサー(トイ・ストーリーなど。ディズニーとピクサーの関係はめちゃくちゃ面白いのでまた今度)もあるので、本当に超巨大なエンターテイメント・コングロマリットになりつつある。つまり、スパイダーマンもダース・ヴェイダーもトイストーリーもミッキーマウスも同じ会社、と言うこと。
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一方のDCはこれに比べると少し落ちる。メインはバットマンとスーパーマンの2大ヒーローに頼らざるを得ない。グリーン・ランタンとかザ・フラッシュとかもいるけどねぇ。。映画に関しては、バットマンは「ダークナイト三部作」で盛り上がったものの一旦終了している。スーパーマンは80年代に当たったものの、2006年の「スーパーマン・リターンズ」は無かったことになっている。立て直しのためにダークナイトの監督クリストファー・ノーランを製作総指揮にしてスパーマンの新シリーズ「マン・オブ・ザ・スティール」が今年公開される予定。

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ちなみに、「三部作が終わってもう一回仕切り直し」みたいなことを「リブート(再起動)」という。バットマンもティム・バートン版をいったん終了させて、「ダークナイト・シリーズ」が始まったし、「スパイダーマン」もサム・ライミのシリーズをリブートして今は「アメージング・スパイダーマン」となっている。あと「無かったことにする」というのもアメコミおよびアメコミ映画の得意技。「ハルク」は2003年版は「無かったこと」になっていて2008年に「インクレディブル・ハルク」というのが作られている。
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とはいえ、これは僕の意見だけど、今のアメコミ映画の人気はDCが作ったものなのではないかと思っている。それについて少し書きます。

僕の子供の頃のアメコミ映画と言えばなんと言っても「スーパーマン」、悪は滅び正義は勝つ、という単純なものだった。

それがおそらく変わってきたのはティム・バートンが監督した「バットマン」なんじゃないかと思う。これは今までは単なるヒーローだったバットマンを孤独で病んだ一人の男として描いたので当たった。その集大成が続編「バットマン・リターンズ」でこれなんて明らかに異端の悪役であるペンギンに監督が思い入れていて、人に理解されないこと、それでも人と交わろうとすること、そして社会から排除される姿が描かれていた。はっきり言ってこの映画の主役はペンギンじゃないかとすら思うほど。

それ以降、スーパーヒーローものはその背景に様々な社会情勢や人間心理を描くようになったんじゃないかと僕は思う。

お金を出す側は「まぁ漫画原作ならそれなりに当たるだろうからお金出すよ」とお金を出す。金をもらった製作会社は、有名な監督や脚本家に「これで作ってくれ」と依頼する。(非常にざっくり言ってますが)

そうなると、監督や脚本家、つまりクリエイター側は「せっかく作るのだから」と自分なりの考えや作家性を入れ込んで映画を作る。あるいはそういうつもりがなくてもどうしてもそのクリエイターの「作家性」がにじみ出てしまう。この時点で単なるヒーローものが非常に深いテーマを持つことになる。

例えば「ダークナイト」は単なるヒーローと悪者の対立という話以上に、善悪の基準を揺るがすジョーカーと善を行いながらも警察に追われる「堕ちたヒーロー」バットマンという構図だった。しかもこの作品には聖書の話である「失楽園」が大きく影響している。更にはバットマンには「普通の一般人(大金持ちだけどね)が正義を行うことの問題」というテーマもあるけどこれは話が長くなるので割愛。そのあたりは「ウォッチメン」でも描かれる。

X-メンは「超能力を持ってしまったミュータント」という原作を基に差別される人たちの姿を描いた。主要人物のマグニートーはユダヤ人で昔、ナチスに迫害されていたという設定だし、ミュータントの多くは差別されるゲイの姿に重ねられている。更に言うとマグニートー役の役者さんも作品の監督自身もゲイであることをカミングアウトしている。

アベンジャーズの一員でもあるソーというヒーローは元々、北欧神話の雷神をモデルにしている。彼が主人公の「マイティ・ソー」という映画は非常にトラディショナルな「兄と弟の葛藤」を下敷きにしている。(しかしさ、ヨーロッパの人たちってほんとこのテーマ好きよね) 監督はシェイクスピア映画で実力のあるケネス・ブラナー。ケネス・ブラナーがアメコミヒーロー物を監督する時代が来るなんて昔は本当に考えられなかった。

「キャプテン・アメリカ」はもともとは第二次世界大戦中にアメリカの戦意高揚漫画として誕生した。それを現代に映画にするにあたって「戦争におけるプロパガンダとは何か」というテーマが付け加えられている。

と、このように一見お気楽極楽な単純ヒーローものに見えて、製作者のいろいろな意図も楽しめる。こうなるとヒーロー好きな子供も観るし、大人が観ても十分楽しめる物になる。それは当然、入場者数増にもつながりビジネスとしての成功にもつながる、ということになる。

あと追加で言っておくとティム・バートン版「バットマン」が作った潮流としては「大物俳優が演じる魅力的な悪役」という要素もあるんじゃないかと思う。ジャック・ニコルソンが演じるジョーカー、ダニー・デヴィ―トのペンギン、M・ファイファーのキャットウーマンなど。(1978年「スーパーマン」でも悪役をジーン・ハックマンがやっていたのでここから始まっているともいえるけど)

あくまで一見、分かりやすいヒーロー物に見えて、実は奥深いテーマがある、これがアメコミ映画の人気が高い理由なんじゃないかと僕は思う。


もちろんなーんにも考えてないカラッポなものもあるんだけどね。それはそれで僕は好きですが。

とにかく、アメコミヒーロー物だからと敬遠するにはちょっともったいないレベルの映画はたくさんありますよ。
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2 コメント

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案外奥深いものです (通りすがり)
2015-07-15 23:46:17
こんにちは。
Xメンは映画の第1作を見た時、ああなるほどな、と思いました。
米国の差別の病巣から生まれた映画だなと。
ミュータントが非白人の暗喩と思っていましたが、実はセクシャルマイノリティとまでは気づきませんでした。
スパイダーマンは人間ドラマ、スポーンは復讐劇という具合に、まだまだ人生の機微を知らない子供には理解できないものです。
その点で日本の場合、石ノ森章太郎氏の漫画版を除けば、仮面ライダーの幼稚な事!
まああれは玩具の宣伝広告に過ぎませんが。
案外、アメコミ映画は社会派ですね。
Unknown (show)
2015-07-17 15:44:46
ありがとうございます。意外とアメコミ映画は社会派なんですよね。。なーんにも考えていないアメコミ映画も多々ありますが。ついつい裏の意味を勝手に考えてしまいますね(^^)

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