寺の町一身田をあとに、旧街道を40分ほど歩き三重大学に向かいました。三重大のキャンパスには、三重高等農林学校の開校10周年事業として昭和11年に建設された洋風の同窓会館が現存しています。お目当ての建物は正門を入り右手奥の公園に隣接した木立に囲まれた一画にひっそりと建っていました。
建物外壁は下見板張りで、爽やかなクリーム色に塗られた外観はいかにも学校建築らしく、当時の高農時代の雰囲気を伝えています。2階建の本館は正面中央に大きな切妻破風と車寄を配し、かなりファサードを強調した造りになっています。また外壁に施された幾何学模様の装飾や、車寄の庇、持送り、照明などにも当時流行のセセッションや表現主義風のモダニズムの影響がうかがわれ、昭和初期の典型的な木造学校建築の姿を見ることができます。
現在建物は「三重大学三翠会館」と呼ばれ、集会や校史関係資料展示室として利用しながら大切に保存されており、戦前の三重大の歴史を語る唯一現存する建物として登録有形文化財に指定されています。
■西側正面外観~正面中央に切妻破風、その下にも立派な車寄を設けてファサードを強調。
向かって右側(南側)には平屋の会議室が付属する。
■外壁の幾何学模様の装飾や、車寄の細部の意匠が見どころ。
妻壁の三連の六角形や窓枠のデザインが面白い。
■北側外観~大きな車寄が洋館らしさを演出
■西側正面~玄関・車寄廻りデザイン
■説明看板
◆三重大学三翠会館(旧三重高等農林学校同窓会館)/三重県津市上浜町1515
竣工:昭和11年(1936)
設計:的場久壽雄
施工:加藤組 加藤要作
構造:木造2階建、鉄板葺(旧スレート葺)
撮影:2015/05/03
※国登録有形文化財