なあむ

やどかり和尚の考えたこと

「土人」発言

2016年10月21日 07時17分42秒 | ふと、考えた

随分久しぶりに「土人」という言葉を耳にしました。
そんな言葉今でも使う人がいるんですね。
しかも20代の人というじゃありませんか。
逆に、よく知っていたねと驚きましたね。

私の子供の頃は耳にしていました。
「南洋」の原住の人々を指す蔑視、差別語だと記憶しています。
「ちびくろサンボ」や「ダッコちゃん」が差別的だとされて規制された頃までは使っていたかもしれません。
ですからおそらくは30年ほど前までの言葉なのではないかと思われます。
それなのになぜ、20代の若者がそんな言葉を使って沖縄の人を侮辱したのか。
それは明らかです。
周りの先輩方、年配者がそう呼んでいたのをマネたのでしょう。
つまりは、大阪府警の同僚、あるいは彼の生活環境の周囲の人々が発していた言葉を、それが差別的な言葉であることを知りながら、だからこそ使った確信的蔑視の感情表現だったでしょう。
まさか、大阪では若い者にも普通に使われている言葉だという訳ではないですよね。

機動隊として派遣される人々の間ではおそらく、その任務に対する嫌悪感があるのではないでしょうか。
反対運動をする沖縄の人々の厳しい発言にイライラする気持ちも分からないではありません。
沖縄の人にとっては、次から次へと、本土から理不尽な扱いをされているので、沖縄を守るために必死に抵抗しているわけで、言葉も厳しくなるでしょう。
機動隊員は上からの指示で、任務としてやっているだけで、「俺たちに言われても困る、上に言ってくれ」と言いたい気持ちもわかります。
しかし、イライラするのと蔑視は全く別物です。
任務が終わって、宿舎までの帰りの移動の車中で、あるいは宿舎の中で、どのような会話がなされているのでしょうか。
想像できるだけに嫌気が差します。

「土人」のような蔑視の言葉は、沖縄の人々に対する他民族意識がなければ出てこない感情です。
そして、それは彼だけの問題ではなく、表に出ない数多くの人々の意識の問題だと感じます。
彼に、そのような言葉を使わせた周囲の問題です。
そのようにして、差別意識は若者にも伝えられ広められていくのです。
きっと、「よく言った」と彼に拍手を送っている人も、残念ながらいるに違いないと思います。
しかも、そのような人々がこの時代増えているとも感じます。

差別意識の矛先は沖縄県人だけに向けられているのでしょうか。おそらくは違います。
中国人、韓国人、「黒人」、自分と違うそして自分より下だと思っている人々にも、蔑視の感情は向けられているのだろうと想像されます。どのような言葉で呼んでいるのでしょうか。
白人に対してはきっと違う感情なのでしょう。白人は日本人より上だと思っているのでしょうね。その時点で負けていると思いますが。

坂上田村麿に始まる「征夷大将軍」は、その名の通り、「夷狄(いてき)」を「征服」する責任者の官位でした。
当時の朝廷にとって、白河以北の「蝦夷(えみし)」は、未開の人々であり、野蛮人であり、征服されるべき存在でした。
おそらくは現在も、関東以西の人々の中に、東北の人々に対する感情にその残渣があるように思います。
東北人の見えないところで、「東北は遅れているから」というような、蔑んだ会話がなされているのではないかと思っています。
大阪の彼と同じような感情です。「土人」と同じです。
そうでなければ、東京の原発が福島につくられなかったはずだし、現在までも、見て見ぬふりをするようなことはなかったと思います。
それでは、東京や大阪人は高貴な日本人か、土人とは違う上の人間なのかといえばそんなことはないでしょう。
どちらも地方から人が集まって大都市になっているだけなので、蝦夷と土人と異国人の寄せ集め、と言ったら言い過ぎでしょうね。

自分より下の人を作って見下げて笑う人は、結局上の人から見下げられて笑われることを自認しているのです。
とても残念な人です。
この問題、結局は彼一人が悪者になり、あとは口をつぐんで感情を陰に隠して過ごすのでしょう。
外国人に対する感情も、障害者に対する感情も、老人や子どもに対する感情も、沖縄・福島の問題と根源は同じなのに、何も改善されずに暗闇を残してしまうのでしょうね。そうやって、次の彼を生み出していくのでしょう。
残念な日本人、残念なこの国。どんどん劣化してしまっているようで口惜しい限りです。

日本人の特徴は、他を受け入れる度量の広さだと私は思ってきました。
他民族も、他文化も、他言語も取り入れて自分のものにしてしまう、寛容の心が日本人の特徴だと。
川の水を拒まない海の姿。
「故によく水あつまりて海となるなり」
そんな日本人が失われようとしています。


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