伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

オードリー・ヘップバーン 世界に愛された銀幕のスター

2015-10-16 22:13:44 | ノンフィクション
 ティーンエイジャー向けの伝記本「ちくま評伝シリーズ<ポルトレ>」のオードリー・ヘップバーンの巻。
 オランダの男爵家の娘を母に持ち、再婚同士でイギリスに渡りファシズム運動の熱狂的な支持者だった夫婦の下に生まれ、6歳で父が失踪した後バレエに傾倒した少女時代、オランダに戻りナチスに財産を没収された上に親族を殺害されて反ナチスとなった母とともにレジスタンス運動に協力した戦中、イギリスに渡りバレエを極めながら師からセカンドバレリーナとしてやっていくことはできてもプリマにはなれないと言い渡されて生活のためにミュージカルに出演していたらブロードウェイミュージカル「ジジ」の主役に抜擢され、映画「ローマの休日」でスターダムにのし上がり、映画出演を繰り返した栄光の日々、ユニセフ親善大使として世界各地をまわった引退後、そして結腸癌による63歳での死亡するまでを綴っています。
 2度の離婚をはじめ、5人の男性との関係が語られ、過食症と極端なダイエットを繰り返す様が書かれていますが、そういうこともマイナスにならない時代となったということか、評価が確立されているのでその程度のことは問題視されないというところでしょうか。
 華奢で胸が薄い(グラマーでない)オードリーに、「豊満な欧米の女性が現実的な憧れの対象とならない日本女性にとって、新しい理想像となったのでしょう」(105~106ページ)、歯並びの悪さをカバーするために前歯にキャップをしてはどうかという撮影所の提案を拒み、濃すぎる眉毛を抜くことも承知しなかった(107ページ)オードリーはコンプレックスを逆手に取り、男性に媚びるような造られた美しさではなく持って生まれた自然な美しさを追求したと位置づけています。
 美しさ、ちゃんとした主婦などの概念/価値観が強調されているのが鼻につく感じもしますが、運命と人間関係に翻弄されながらも、自分の個性を見据えてそれを活かしていこうとする姿に希望を見出せる、そういうところで読後感のいい本になっていると思います。


筑摩書房編集部 筑摩書房 2015年9月20日発行
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