伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

証拠改竄 特捜検事の犯罪

2011-10-19 23:34:22 | ノンフィクション
 朝日新聞が新聞協会賞を受賞した郵便不正事件における大阪地検特捜部の前田検事によるフロッピーディスクのファイルの更新日時データの改竄の調査報道の経緯をまとめた本。
 冒頭に書かれている朝日新聞大阪本社社会部の検察担当記者が2010年7月のある日に検察のディープスロートから前田検事の改竄を聞き出した経緯というか、そういう人脈をどのように発掘したかが、私には一番興味がありますが、そのあたりはニュースソースの秘匿のため書かれていません。
 その次に興味を持ったのは、2010年7月に情報を得てから2010年9月21日朝刊での報道までの経緯というか、報道まで2か月かかった事情ですが、そのあたりが読みどころの本かなという気がします。フロッピーディスクの所在探索、業者鑑定などの裏取りという本筋の他に、他社はもちろん社内にも気付かれないよう神経を使い、検察のでっち上げ逮捕を警戒し(「読書が趣味の板橋は書店に入る際、カバンを持ち込むことをやめた。何者かに本をしのばされ、万引で逮捕されることまで考えた」(102ページ)って・・・)といったあたりも興味深いですが、私は、職業柄、改竄対象文書の作成者である上村被告人の弁護人の心理というか思惑というか揺れる思いというかが気になりました。
 あくまでも朝日新聞記者の目で書かれているので、隔靴掻痒の感のある部分もありますし、朝日新聞としての配慮もあるように感じられますが、歴史に残る事件の経緯を記したものとして一読に値するかと思います。


朝日新聞取材班 朝日新聞出版 2011年3月30日発行
コメント
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