伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

日本のNPOはなぜ不幸なのか?

2008-11-22 23:06:44 | 人文・社会科学系
 特定非営利活動促進法(いわゆるNPO法。著者はNPO法に値しないと述べているが)制定後、NPOが法人格を得る道ができたものの、なまじ法ができたために法人格を取得しないと活動しにくくなり、法人格取得のための認証手続には種々の制約と役所からの煩瑣な指導に応じて何度も書類を作り直す手間がかかり、認証後は監督を受けることとなる上、法人格を取得しても税制上の優遇も受けられないという状況の下でNPOが悩まされている問題と法改正のあり方を論じた本。著者は民主党の国会議員。
 寄付金控除を受ける要件が財務省の抵抗により極めて厳しく元々寄付の習慣の薄い日本でNPOが個人や企業から寄付金を集めることは難しく、他方、役所からの助成金や委託事業は役所の事業の下請けに近く、しかも役所の都合ですぐ切られて財政的な自立の困難な状況が繰り返し語られています。
 特にNPOが最も多い福祉分野では、障害者自立支援法という名の自立を要求して福祉を切り捨てる法律の制定によって補助金が削減され、立ちゆかなくなっていくNPOが多いことが指摘されています。
 著者は、日本では個人の寄付が根付いていないことから、NPOへの寄付金を税額控除(税金として支払うべき金額の一部を寄付に回せる=個人の負担増なしで寄付できる)を提言しています。それにより自治体側にも住民税の受取額を増やすために競争意識が生じるという指摘もされています。是非実現して欲しいと思うのですが。


市村浩一郎 ダイヤモンド社 2008年9月19日発行
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犯罪被害者保護法制解説{第2版]

2008-11-22 01:25:54 | 実用書・ビジネス書
 犯罪被害者基本法をはじめとして、犯罪被害者保護法、刑事手続への被害者参加制度、犯罪被害者等給付金支給法などの犯罪被害者保護に関する法制度の解説書。
 比較的薄い本でたくさんの法律を解説し、被害者保護関係の法律をハンディに学ぶという観点では優れもの。しかし、説明がほとんど法律の条文・法律用語そのままで、法律実務家や学者以外の読者にはかなりハードルが高いと思います。
 著者が犯罪被害者保護立法運動の中心にいた弁護士ですから、立法の経緯や必要性に関する説明は簡潔でありながらきちんと書き込まれているように思えます。
 他方、弁護士向けという観点からすると、法律の説明に終始していて実務的なノウハウはほとんど書かれておらず、そこは不満が残ります。犯罪被害者給付金制度などは、ただ煩雑で計算が難しそうという印象になってしまいますし。
 刑事手続への被害者参加制度は施行直前ですし、他の法制も多くが改正法施行前後というタイミングは、勉強したい需要にはマッチしているものの、事例の集積がなく実務的な話が書けないということになるのは仕方ないと言えますが。


高井康行、番敦子、山本剛 三省堂 2008年10月10日発行 (初版は2005年)
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