Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

攻める人間は美しい。

2014-03-06 17:28:48 | アメリカ生活雑感
退院の時、一番に先生に聞いた質問は

「お酒飲んでもいいですか?」


だった。
だって、今回何が楽しみって、青森から送っていただいていた大好きな地酒を夜中にオリンピック見ながらちびりちびりと飲ることだったのだから。
「念のため、2週間はアルコールを控えてください」と言われ、またもや大ショック。
無事に田舎に帰ったものの、ビール抜きで退院祝いのスキヤキを食べるのは結構つらかった。
しかも横で両親がおいしそうに飲んでるし。

さて、気を取り直してオリンピック観戦に戻ろう。
残念ながら日本選手団は、ソチオリンピックの前半でまったくメダルが取れなかったのだが、私が日本に着陸したとたんスノボのティーンコンビに始まって、入院中は羽生がついに金メダル。続々とメダルラッシュとなった。
そう、私は縁起がいいのだ。
あと私の願いは、なんとかオリンピック最後の真央ちゃんにメダルをとらせてあげたい!だった。

そして悪夢のショートプログラム・・・。
しかし、ここまで落ちてしまったらかえってせいせいした。メダルどうこうというより思い切りやってほしい。笑顔で終わってほしい。
その気持ちだけだった。
この気持ちはきっと、全国民が持っていたと思う。
翌日のフリーの演技では、そんな私たちの希望を彼女は見事にかなえてくれた。
彼女の笑顔をみたとたん、皆が救われた、そんな気がした。

それにしてもなんという強さだろう。
アスリートは決して誰かに勝つために戦ってはいない。彼女はずっと自分と戦っていたのだ。
安全策をとってトリプルアクセルを封印することイコール自分を捨てること、自分への挑戦をやめたらアスリートではなくなることをずっと前から知っていた。
どんなにリクスがあろうとも、全世界で自分だけにしかできない演技にこだわり続けた執念の勝利だった。


同じ意味で、今回のオリンピックで深い感動を与えてくれたのは、演技の直前に棄権したロシアの“皇帝”プルシェンコだった。
4年前、4回転を飛びながらも銀メダルに終わり連盟にクレームを申し立てたときには、金メダルをとったアメリカのメディアから激しいバッシングにあった。
でも彼の「挑戦をやめれば競技がだめになる」という気持ちは4年後に見事につながった。
今や、4回転を飛ばない選手のほうが少なくなっていた。

4年前に書いた記事「みんな正論」

その皇帝が自らリンクを去った。それも、全世界が見守る中で。
体がボロボロになるまで自分の技を出しつくし、そして最後は醜態をさらすまいと去って行った。
その彼を追っていた少年が4回転を成功させて金メダルを取り、そのことを我がことのように喜んだ皇帝。
羽生自身も「4回転半を飛ぶようになってこそ真の金メダル」という攻めの姿勢を決して忘れていない。皇帝の優れた後継者だ。
また、挑戦し続けるものこそ報われるという彼の思いは、浅田真央へのエールとしても送られていた。
真央が「尊敬する選手はプルシェンコ」と言ったのもうなづける。

女子の金メダルを巡っては、素人を巻き込んでいろんなバトルが繰り広げられているが、私的にはロシアのソトニコワは「攻めて勝ち取った」と思う。
キム・ヨナは4年前からは明らかに退化していたし、ミスなく美しかったものの明らかに攻めてはいなかったからだ。
所詮人間が採点するもの。一流の選手ほどそのことを一番よく知っている。
全てが終わった後の浅田真央とキム・ヨナの表情は、何ともすがすがしかった。


そしてもう一人、私を泣かせた人物が高橋大輔。
彼のスケーティングはなんと美しんだろう。
コケてもミスしても、もうどうでもいいや。
あの、後半2分の彼の表情にすべてが表れていた。スケートができる喜びが全身に満ち溢れていた。
勝負を超えた究極の美が、そこにはあった。

エクシビションでの演技も皆すばらしかった。
特に真央ちゃんのSmileにはじいんときた。
アメリカで見ていた友人が後から教えてくれたのだが、真央が滑っている間、アメリカの代表選手だったあのジョニー・ウィアーが
「MAOちゃ~ん」と放送席で絶叫していたそうだ。

どんなにつらいときも、心が折れたときも、決して周りに嫌な顔を見せずにきちんと受け応えし、人を批判するようなコメントも一切しない彼女は、全世界の選手から愛されていた。

どうかこれからの人生も「攻めの真央」でいてほしい。
つまらない日本のメディアや芸能界なんかにまみれないでいてほしい。
できれば雑音のない海外でのびのび活躍してほしい。これからは自分だけの満足のために生きてほしい。
オバサンはそう願うばかりである。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする