Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

アメリカの龍馬が行く。

2009-01-25 08:35:28 | アメリカ生活雑感
やけに長く感じた1週間だった。
アメリカが、長いブッシュの呪縛から解放され、憑き物が落ちたのように未来に向かって歩き始めたのを身をもって感じる。
毎日、ニュースを見るのが楽しみになってきた。

歴史が今、オバマ氏を呼んだのだとすれば、日本はどうなっているんだろう。
「日本を変えてやる」と命を懸けた幕末の志士たちは、もう現れないのだろうか、と悲しくなる。

世間がまだダンスの余韻に浸っている間にも、「アメリカの坂本龍馬」オバマ氏は新政策のもと、“dust ourselves off(ほこりを払って)”さっそく次々と新しい大統領令に署名している。



1.キューバ・グアンタナモ基地のテロ容疑者収容施設を向こう1年で閉鎖。

2.テロ容疑者に対する「水責め」など過酷な尋問方法を禁止。

3.中央情報局(CIA)が東欧など海外に設けた尋問施設の閉鎖

さらには、昨日(1月24日)、ブッシュ政権が制限を設けていた胚性幹細胞(ES細胞)研究への連邦予算の支出制限の緩和にもGOサインを出した。
このES細胞をめぐっては、アルツハイマーなどの難病治療法の解決につながるとして、長年科学者がその研究のサポートを訴えてきた。
しかし、ES細胞の研究には受精卵を用いることから、ブッシュは“宗教的観点から”2001年に研究費支出を禁止。
06年と07年に、研究を助成する法案が議会で可決したが、ブッシュは2度にわたって大統領の拒否権を行使して法案を葬ったといういきさつがある。

「受精卵にはすでに“魂”が宿っており、それを他の細胞組織の再生に使うのは神が許さない」
という、エバンゲリカル(キリスト教原理主義者)の立場を押し通したブッシュ。
それによって、どれほどの命を救えるのかを考えもせずに。
個人的に何を信仰しようがかまわないが、それを国家の法案決定に使ったのがブッシュ政権の決定的な過ちであり、このことはアメリカならずとも全世界の科学者を敵に回すことになった。

またオバマ氏は、女性の地位・権利の向上のため、妊娠中絶に関しても「選択できる権利」の支持を表明した。
ブッシュがかたくなに守ってきた「アボーション反対」に、風穴を開けたのだ。
保守派のアホなやつらはすぐに「オバマは人殺しだ」とわめきだすだろう。
しかし、中絶が倫理的に正しいと思っている人は誰もいないのだ。その“議論”の余地を、初めて「女性の権利」という立場から示したオバマ氏には、多くの支持が寄せられている。


オバマ氏の就任演説のなかで最も注目された一説のひとつに、
「We will restore scientce to its right place」(我々は科学を本来あるべき場所に引き戻す)

というくだりがある。
この一文で、アメリカ中のサイエンティストがどれほど救われたことだろう。

戦争が大好きだったブッシュ政権は、国防総省系研究機関への予算を重視し、大学や独立研究機関など学術機関を軽視してきた。その結果、多くの大学や企業系研究機関は資金難に悩み、行く先も見えぬままベンチャービジネスは衰退の一途をたどった。
Pちゃんの職場であるFermilab(フェルミ国立研究所)でも大幅な予算削減が行われ、多くのサイエンティストが職を失い我が家も戦々恐々としていた。

一方、オバマ次期大統領は、学術機関やベンチャーを重視すると約束している。
地球温暖化政策や代替エネルギー政策にも積極的に取り組む姿勢を打ち出しており、新政権のエネルギー省長官には、1997年にノーベル賞を受賞したスティーブン・チュウ(Steven Chu)博士が着任した。
チュウ博士は、Pちゃんの前の職場だったローレンス・バークレー国立研究所(LBL)の研究部長だ。
このことによって、サイエンティストに与えた希望、インパクトは計り知れない、とPちゃんもうれしそうだ。



人々がずっとやってほしかったことを、彼はこの2~3日でやってくれたのだ。
あの夜、ミシェル婦人と踊る彼の頭の中は、翌日からの任務遂行でいっぱいだったにちがいない。
彼にはダンスホールよりも、ホワイトハウスがよく似合う。
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