詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」

2018-10-22 00:16:51 | 映画
スタンリー・キューブリック監督「2001年宇宙の旅」

監督 スタンリー・キューブリック

ユナイテッドシネマ・キャナルシティ博多のIMAX(スクリーン12)で見た。製作50年を記念しての、2週間限定の上映。
 他の劇場はどうか知らないが、ユナイテッドシネマ・キャナルシティ博多のIMAX(スクリーン12)では、見てはいけない。がっかりする。私は地方都市に住んでいるので巨大なスクリーンで、70ミリのフィルム版を見たことがない。最初に見たのは小倉の古い映画館(いまは、もうない)だった。フィルム上映で、横長のスクリーンだった。そのときの印象がいちばん強い。あと何回か見た。午前10時の映画祭でも2010年4月3日に見ている。これはフィルム版だ。このときも横長のスクリーンだ。私の感覚では、縦1、横2という感じ。ところが、ユナイテッドシネマ・キャナルシティ博多のIMAX(スクリーン12)はかなり正方形に近い。横のサイズが完全に不足している。これでは昔のテレビを大きくしただけである。「宇宙」の感じがしない。
 私は、昔からユナイテッドシネマ・キャナルシティ博多の音が大嫌いである。大きければそれでいいだろうという感じで、がんがん鳴らしている。耳が痛くなるだけである。月の基地で全員が耳鳴りに襲われるシーンの衝撃が台無しである。「青きドナウ」はまるで洪水だ。

 大好きな映画を見るとき(再映を見るとき)は、よほど注意しないといけない。
 「午前10時の映画祭」では「ゴッドファザー」のフィルム版が無残だった。漆黒の黒が安い喪服の黒になっていて、私は大変なショックを受けた。「七人の侍」は、デジタル版がよくない。かつらがつけていることがくっきりわかる顔が、かつらの境目を処理して目立たないようにしている。「映像」は「狙い」に近くなるのかもしれないが、手作りの力強さがなくなる。クライマックスも映像処理してつくったんじゃないか、と思ってしまう。(最初のフィルム版は、そういう処理ができなかった。)

 私は、この映画では、ハルが「デイジー……」と歌うところが大好きだ。ハル頑張れ、負けるな、と思わずコンピューターを応援してしまう。で、大好きだから、大変な勘違いをする。8年前の「午前10時の映画祭」のときの感想で、あのデイジーの歌はハルが記憶が壊れていくことに抵抗して(何とか記憶を保とうとして、知性を保とうとして)自発的に歌ったのだと思っていたが、違っていたという感想を書いた(と、思う)。それなのに、私はまだやっぱりハルのことを勘違いしている。コンピューターをつくった博士に歌を教わるシーンがあって、そこにはデイジーが一面に咲いているという映像があると思い込んでいた。そんなシーンなどない。2010年に見たときは、しかし、それには気づいていない。記憶が間違っていたとわかったのに、記憶間違いに気づきながらも、そこに昔の記憶をひきずっていた。
 で、変なことを書くのだが。
 映画にしろ、他の芸術にしろ、「間違って覚えている」というのは大切なことだと思う。衝撃が、「間違い」を引き起こして、それが記憶になる。その間違いの中には、間違うことでしかつかみとれない何かがある。私は、いまでも(いつでも)、ハルが大好きだ。デイジーを歌う場面が大好きだ。そのときハルはデイジーの花畑を見ていないが、私は見ている。見える。スクリーンにないものまで見てしまう。このとき、私は、ほんとうに映画の中にどっぷりと浸っていたのだと思う。デイジーの花畑が見えなかったのは、私が映画に浸っていない証拠である。つまり、この映画は、私を勘違いさせるほどの魅力を持っていない。これは、すべてユナイテッドシネマ・キャナルシティ博多のIMAX(スクリーン12)のせいだ、と断言する。
 ほかの映画館は、どうか知らない。この映画館では、絶対に見るな、と言いたい。特に、フィルム版を見たことがある人は、がっかりしてキューブリックの映画を見る気持ちがなえてしまうかもしれない。


 *

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13 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-11-29 12:08:32
IMAXを理解していない方の鑑賞と感想は迷惑なだけですね
Unknown (Unknown)
2018-12-01 23:43:22
IMAXが正方形に近いというのは、大阪のエキスポくらいです。キャナルのIMAXはビスタサイズ程度です。
そもそも、IMAXという企画が、そういうサイズです。
知らないのにけなすのはやめたほうがよろしいと思いますよ。第一、恥ずかしいですよ。
「2001年宇宙の旅」の上映方法 (谷内)
2018-12-05 09:48:20
私の友人は、成田の映画館でIMAX方式で見ています。
彼の報告によると、スクリーンの天地に黒い空間(?)をつくって上映しています。
オリジナルサイズの横長の比率で上映しています。
キャナルシティの上映方法は、大昔のテレビ(洋画番組)のスタイルです。
「2001年宇宙の旅」のオリジナル版を知らないひとは何も感じないだろうけれど、映画は上映サイズを意識してつくられるのが基本。
左右をカットしたり、偏平をかけてしまえば、監督が描きたかった作品とは違ったものになります。
映画はストーリーよりも、映像と音楽が命です。

私はIMAX のことは何も知りません。魅力も感じません。
匿名の投稿者は、IMAXには詳しいのかもしれませんが、たぶん、「2001年宇宙の旅」のオリジナルを見ていないのでしょう。
私が見たときも、若い世代のグループが後ろの席で見ていました。
「初めて見た」「時計じかけのオレンジも見たい」というような会話をしていました。
どんなに技術が進んでも、デジタルはデジタル。
フィルムの魅力には勝てません。もっとも、フィルムは劣化するため、画質はどんどん低下します。
修復も、ときには無残なものです。
もっともっと技術が進み、フィルムで撮られた映画は、フィルムで完璧な修復が進むことを私は祈っています。
そして、映画館でリバイバル上映されることを願っています。
東京では、フィルム版が上映されたけれど、小さな画面なので、それが残念だったという声を聞きました。
Unknown (Unknown)
2018-12-09 00:21:58
キャナルのIMAXで上映された2001年宇宙の旅は、天地に黒味が出ていませんでしたか?
きちんとオリジナルのアスペクト比で上映されていますよ。
左右をカットしたりはしていません。
何を言っているのでしょうか?
いつ、見ましたか? (谷内)
2018-12-11 09:07:02
あなたは何日に見ました?
私は11月21日(水曜日)に見ています。
そして11月22日に、ブログに感想を書きました。
私が批判を書いたから、キャナルシティ13があわてて間違いに気づいて上映方法を変更したということが考えられます。
あなたの私への批判は、私が映画を見てから1週間たっています。
1週間あれば、上映方法は簡単に修正できます。
11月21日の上映がどのようなものだったか(それ以前の上映がどのようなものだったか)、確認してから書いてください。
Unknown (Unknown)
2018-12-11 20:51:05
は?
公開は10月19日から2週間で、私は翌日の20日に観ていますよ。
11月21日にはとっくに公開は終わっています。
まあ、11月は誤記で、10月21日に観たとしましょう。
それでも、DCPを変えて、私が観た翌日には、IMAXスクリーンいっぱいに上映されていたとでも仰るのですかね?
お知り合いの方に、IMAXでの2001年が、オリジナルサイズだったか、左右のトリミングだったか、確認を取られてはいかがですか?
どこのIMAX? (谷内)
2018-12-12 19:51:25
10月21日の書き間違いです。
で、あなたは、どこのIMAXで見たんですか?
福岡のユナイテッドシネマキャナルシティですか?
成田ではオリジナルサイズを尊重し、それに近い比率で上映されたと聞いています。
だからこそ、キャナルシティの上映がおかいしい、と書いているのです。
あなたは、ほんとうにキャナルシティ13で見たんですか?
Unknown (Unknown)
2018-12-14 03:13:53
もちろんキャナルのIMAXで、上下黒味のオリジナルサイズで鑑賞していますよ。
オリジナルサイズのアスペクト比は、スーパーパナビジョン70で、2.21:1です。
シネマスコープではないのですよ。
そこは分かってますか?
貴殿は2重に過ちを犯している。
まず、キャナルのIMAXは正方形ではなく、ビスタサイズよりもすこし縦長の1.78:1です。
次に、キャナルの2001年は天地黒味で、オリジナルのアスペクト比で上映されました。
お知り合いに確認はとれていないのですか?
Unknown (谷内)
2018-12-14 09:32:27
「お知り合いに確認はとれていないのですか?」
とは、どういう意味ですか?

あなたが、キャナルシティのIMAXで、オリジナルサイズの相似形すくターンで見ることができたのでしたら、それはよかったですね、としか言えません。

私が見たときは、天地に「黒」はありません。
Unknown (Unknown)
2018-12-14 22:04:35
ご自分の過ちを頑なに認めようとはしないし、他の方に確認しようともしない。
そして、何の瑕疵もないキャナルシティのIMAXを、ご自分の勘違いで不当に貶めて、訂正もない。他の方に確認を取ろうともしない。
自分のしていることが恥ずかしくはないのでしょうか?

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