詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

19 石棺(嵯峨信之を読む)

2018-06-19 11:03:16 | 嵯峨信之/動詞
19 石棺

稲妻が走るたびに
闇の中に盲人の顔が浮かぶ

 なぜ、「盲人」の顔なのだろうか。
 「盲人」は闇を見ている。私は闇のなかでは何も見えないが、「盲人」は闇のなかで私以上のものを見るだろう。
 「盲人の顔が浮かぶ」というと、「盲人の顔が見える」ということになるが、ここでは嵯峨は「盲人の顔を見る」というよりも、「盲人」になって世界を見るのだ。
 「稲妻が走る」はふつうの人が見る風景。
 「盲人」には「稲妻が走る」様子は見えない。しかし、「暗闇」になってしまえば、「盲人の見えない視線」が「稲妻」のように「走る」。「盲人」には「暗闇」が「真昼の明るさ」である。「盲人」の視力が力を持って、「顔」を浮かび上がらせるのだ。




コメント
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