限りなき知の探訪

40年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

沂風詠録:(第213回目)『真夏のリベラルアーツ3回連続講演(その1)』

2013-11-17 21:14:18 | 日記
今年(2013年)の夏に You See Lab(遊子ラボ)にて3回連続のリベラルアーツ講演会を行った。開催日は大抵の企業人が夏休み休暇を設定している 8/3日、8/10日、8/24日、いづれも土曜日であったが、毎回20名近い方々が参加された。
ちなみに、この『遊子ラボ』の第一回目は出口会長が「歴史を学ぶ ~日本史はない?~」というタイトルで講演された。

私のリベラルアーツ3回連続講演の共通テーマと基本概念(Key Concepts)は次の通り。

【共通テーマ】『既存概念からの脱却』
【基本概念】(Key Concepts)
 1.身にこびりついている既存概念をふるい落とす。
 2.リベラルアーツの奥の深さより、幅の広さを知る。
 3.講義を聞いた後で、自立的にリベラルアーツを深める方法論を知る。

【講演テーマ】
 A.『暗記モノ歴史ではなく、人物伝を』
 B.『流行の経営本ではなく、科学史・技術史を』
 C.『TOEIC英語ではなく、多言語の語学を』

講演の最後に、長めのQ&Aセッションを予定したが、毎回かなり活発な議論が展開できたのではないかと思っている。

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この講演の概要はすでに『遊子ラボ』のサイトに掲載されているが、講演者の立場からテーマの選定意図や講演の内容などについての私の考えを述べたい。

○共通テーマと基本概念について

3回の講演は、社会人を対象して企画された。業種や身分は問わないが、年代的には20代後半から40代前半までのビジネスパーソンである。私は自分の経験に照らして、このような若い年代の社会人が本格的にリベラルアーツを学ぶことは非常に重要だと従来から考えてきた。それで、今回の講演は私の念願に適っているので、講演する機会を与えて頂いて、大変ありがたく感謝している。また時間的にも、3時間 X 3回という、かなりまとまった講演時間を頂けたので、この機会を利用して、常々考えている『既存概念からの脱却』を共通テーマに掲げ、上で述べた3つの講演テーマを選んだ。

さて、『既存概念からの脱却』というのはいかにも抽象的で分りにくいが、具体的には、次の3つの【基本概念】(Key Concepts)として表現される。
 1.身にこびりついている既存概念をふるい落とす。
 2.リベラルアーツの奥の深さより、幅の広さを知る。
 3.講義を聞いた後で、自立的にリベラルアーツを深める方法論を知る。


我々は子供のころからの家庭や学校、あるいは社会から知らず知らずの内に感化されている。感化に止まらず、洗脳されていると言ってもいいほどの場合もある。そして、自分の持っている既存概念を正しい規準として行動している。しかし、日本人のつ既存概念を知らない外国人とぶつかって初めて自分の価値観が通用しない世界もあることを知る。そしてさらに、このような体験を何回か重ねると、ようやくいままで正しいものと信じていた既存概念の普遍性について疑念を持ち始める。

この点に関して、以前のブログ
 沂風詠録:(第118回目)『未来から届いた一冊の本』
で、ライフネット生命の出口社長(当時、現在は会長)の新刊書『常識破りの思考法』の読後感想として次のように述べたことが当てはまる。

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世界に出て初めて、日本の社会で考えられている常識が必ずしも普遍性を持っていないことが分かる。例えば、同書のP.123ページに触れられているが、日本の社会では遅くまで残業し、休暇も取らないことが、評価されるが、それは世界からみれば一種理不尽な『奇習』に過ぎない。『なぜ、残業し、休暇も取らないのか?』と問われて、理路整然と答えられない。また、同書のP.136に述べられているが、社会人で出世しようとすれば必須要件であるとされていたゴルフを拒否したことも日本社会の特殊性に対する出口さんの理性的反発が感じられる。

実は私自身もサラリーマンとして20年近く勤めていたが、ゴルフを勧められて、渋々やり始めたものの、暫くしてそのバカバカしさに完全に放棄をした。つまり、練習に取られる時間や、その後付き合いゴルフに取られる時間や出費など、全く理不尽のように感じられた。そして、その時に考えたのは、『もし、ゴルフが出来ないことで出世コースから外れるなら、それはそれで良い』という開き直りであった。更にはゴルフコースが日本では農薬の大量散布などにより、自然破壊の最たるものだということを知って一層ゴルフをする気がなくなった。そのようにして、私も出口さん同様、ゴルフが出来ない人種ではあるが、今振り返ってみて、ゴルフをしない方で正解であったと考えている。

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この連続講演で、私はまず既存概念をゼロリセットで考え直す必要性を強調した。それは、既存概念を一旦、離れた立場から見ないことには、その既存概念のもっている妥当性、すなわち長所や短所が分からないからである。



例えば、ユダヤ教徒の既存概念からすれば、食べてもよい動物は旧約聖書・レビ記・第11章に書かれている。(例:獣類では有蹄で反芻する動物、魚貝類ではひれと鱗のあるもの。。。)ユダヤ教の食事規定に従えば、豚やタコは食べてはいけない。それで、ある敬虔なユダヤがいて栄養価的に豚肉が必要であったとしても、既存概念(ユダヤ教)の制約によって豚肉を拒否してしまうであろう。このように、既存概念に染まってしまうと、物事の本質を見極めて理性的に判断することが出来なくなってしまう。

既成概念の打破、これが自由人、つまりリベラルな人間がリベラルアーツを学ぶ時の根本的な姿勢である。この考えに基づき3回の講演を行ったが、それぞれのテーマは次のような意図で選択した。

A.『暗記モノ歴史ではなく、人物伝を』
 既存概念:「歴史は出来事や人名を暗記するもの」「歴史は政治史が中心」  
 ==>歴史とは人としての生き方を知るためのドキュメンタリーだ。出来事や人名をいくら正確に暗記したところで自分の生き方を考える上で少しの足しにもならない。事項を棒暗記するのではなく、歴史上の人物の生きざま(すなわち人物伝)を読み、感動する人をみつけよう。

 B.『流行の経営本ではなく、科学史・技術史を』 
 既存概念:「ビジネスパーソンなら優良企業の経営者の経営本を熟読すべし」  
  ==>今後の世界および日本の産業界の方向性を見極めようと思うなら近視眼的な経営本などではなく、社会の基底を支えてきた科学・技術を発展を歴史的に俯瞰することが必要だ。現在の視点では見えなかったことが、2000年レンジのタイムスパンで実務的観点からみると、将来の産業のありかたがくっきりと見えてくる。

 C.『TOEIC英語ではなく、多言語の語学を』
 既存概念:「グローバル社会では英語が出来なければいけない」「英語以外の語学はビジネスの役に立ちそうもない」  
 ==>日本人で本当にビジネスで英語を必要とする人は1割にも満たない。その少数は英語をもっと伸ばす必要があるが、英語だけ勉強したのでは英語は伸びない。一方、ビジネスで英語を必要としない大多数の人にとって、語学を知的刺激として捉えるなら、英語以外に、もっとスリル万点の言語がある。いずれの場合も、英語以外の語学に興味をもつことを勧める。

さて、次回から、3回講演の内容について述べることにしよう。

【参照ブログ】
 沂風詠録:(第151回目)『国際人のグローバル・リテラシーのテーマについて(その3)』

続く。。。
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