限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

百論簇出:(第95回目)『失敗した壮大な社会実験(その2)』

2010-11-30 22:26:39 | 日記
前回から続く。。。

さて、社会主義や中国に対する非難はこれぐらいにして、我が日本に目を向けてみよう。

 1945年に太平洋戦争が終わり、日本は奇跡の復興を遂げた、とつい20年前までは、世界中から称賛されていた。ところが1990年にバブルがはじけて以来、ここ20年間は経済が低迷している。結果的に税収の大幅減に加え、少子高齢化で社会保険の負担が大きくなっている。そうなると、頼みの綱は、ワンパターンの国債発行と無駄な公共投資による経済活性化策だ。

これら一連の政策の根本にある考えが、次の式である。

【幸福の方程式】 経済成長=国家全体の所得増大=個人の所得の増大=個人の幸福増進

この式が正しいとすれば、個人個人が充実した幸福な生活を送るためには経済成長が不可欠だ、ということになる。しかし、歴史的にみて本当にそうだろうか?



近頃、幸福度指数なるものが議論されているようだ。いろいろな団体が調査し発表しているが必ずしも同じではない。

英NEFの 「幸福度指数、Happy Planet Index、HPI2.0」
1位 コスタリカ
2位 ドミニカ
3位 ジャマイカ
4位 グアテマラ
5位 ベトナム
6位 コロンビア
7位 キューバ

全米科学財団NSFの幸福度ランキング(住民満足度)
1位 デンマーク
2位 プエルトリコ
3位 コロンビア
4位 アイスランド
5位 北アイルランド
6位 アイルランド
7位 スイス

これらの国を見ると、必ずしも上の【幸福の方程式】に則っていないことが分かる。

戦後数十年の日本経済の発展を現時点で総括してみよう。
【1】世界第二位の経済大国となった。(但し、2010年には既に中国に追い抜かれて世界第三位になっている。)
【2】国民一人のGDPは世界17位(2009年)
【3】国債は国と地方公共団体で合わせて1120兆円。一人当たり878万円。
(参照:リアルタイム財政赤字カウンター
【4】自殺率は世界第6位(10万人あたり24.4人)
【5】日本列島の海岸線の長さは、カナダ、ロシアなどに次いで世界第6位にあるが、なんとその70%がコンクリートで固められている。(調査対象は西日本
(参考記事:環境の世紀に、自然海岸は21%に減少

これから分かることは、結局、戦後日本の経済発展は、生活面の向上には寄与したものの、海岸だけでなく、山、川をコンクリート漬けにした過ぎなかった、と私は考える。自殺率の上昇、国全体の借金が国家予算の15年分に相当し、一人当たりも900万円になろうとしている。つまり、稼いだだけ浪費したというのではなく、未来の子孫にまで多大な借財をして、美しい自然を取り返しのつかないほど大破壊をしたのだ。その尻拭いを今の世代ではなく、次世代にさせようと、少子が問題だ、子供を増やせ、と言っている。

上に掲げた、『幸福度指数ランキング』(英NEF)の上位の国々を見て欲しい、これらの国の経済は日本とは比較のならないほど小さいはずだ。しかしそこに生きる人々の暮らしは満足度の高いものである、と評価されている。

戦後一貫して【幸福の方程式】を正しいと盲信して突き進んできた日本であるが、2010年の時点でどうやら、おかしな所に来たことを確信させられた。この意味で、日本もまた、社会主義の失敗同様、70年近くかけてた壮大な社会実験で【幸福の方程式】が成り立たないことを証明したに過ぎない。

しかし、最も情けないことに、いまだに政治家と国民の大多数はこの偽の【幸福の方程式】にしがみついて、経済成長を後押しする政策を望んでいる。この虚妄から醒めない限り日本に再生はないと私は考えている。
コメント
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