漢方処方と漢方の証の相違

漢方的病理の把握の仕方により漢方処方が違ってきます。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

1.汗出

2007年08月08日 | Weblog

證というのは、容態の事であります。病んだものが、訴えるあらゆる苦しみの状態を證といいます。例えば、
太陽病、項背強几几、無汗、悪風、葛根湯主之 の条文で

(太陽の經が病んで項背がこわばって、汗が出なくて、ぞくぞくと寒気がする者は葛根湯で之を治してやりなさい。)

太陽病とは、病を起こしている場所のことで、項背強几几、無汗、悪風とは其の病気から発している病者の苦しみで、これが證と名づけるものであります。
葛根湯はの證を目標にして、この病を治す為に作られた薬方であります。このような病で、このような證を現したものを葛根湯で治すことを證に従って治すといいます。
これはちょうど
鍵穴に鍵をつっこんで扉をあけるようなものであります。このことから、扉が開かない方がおかしいのであります。

ここではまず氣・血・水の中で水の変調について考えます。

人間の体は約60%が水分で出来ております。汗をかいたら水分を補給しなければならないし、取りすぎると、また問題が出てまいります。五行色体表から汗は、心の液であり、体の上の方からは汗として出しやすく、体の下の方からは出しにくいのであります。
胃腸の強い(脾胃の強い)人は、汗で水分を出します。胃腸の弱い(脾胃の弱い)人は、水分を小便や下痢から出そうとします。

汗出とは、古文献「傷寒論」の「脈法第6条」に

其脈浮而汗出如流珠者衛氣衰也

(其の脈浮にして汗出づること流珠の如き者は衛氣衰えるなり)

汗の出ている様子がまるで真珠を肌にいっぱい布き散らしているようなのは、これは外を守る衛気が衰えているのだということであります。

古文献「傷寒論」の「辨太陽病脈證併治中篇第34条」に

発汗過多其人叉手自冒心心下悸欲得按者桂枝甘草湯主之

(汗を発したること多きに過ぎ其の人手を叉み自ら心を冒えば心下悸し按を得んと欲する者は桂枝甘草湯之をつかさどる)

強く発汗させた為に汗が うんと出て病人は心臓が動悸して苦しいので自分で手を叉して心臓を蔽い其の動悸を鎮めようとしたら今度は其の動悸が心臓より下の方までも広がったのでその所も誰かに押して鎮めて貰いたいと思うようなのは桂枝甘草湯で之を主治するという事であります。

汗が出すぎたために、表の陽気、つまり熱量、エネルギーが不足した為に、表虚の状態になっております。ここで表のもつれ、表を調える桂枝が必要となってきます。

汗出の場合に次のような漢方病理があります

①表邪のある場合 〔太陽病上・中篇

汗出で悪風する者、自汗出づ者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 桂枝湯
反って汗出で悪風する者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・桂枝加葛根湯
●表未だ解せず、喘して汗出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・葛根黄連黄芩湯
汗出でて喘し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・麻黄杏仁甘草石膏湯

②虚労病の場合 〔金匱要略・血痹虚労篇

●夫尊栄人骨弱肌膚盛重因疲労汗出・・・・・・・・・・・・・・黄耆桂枝五物湯
●虚労不足汗出而悶脈結悸行動如常・・・・・・・・・・・・・・炙甘草湯

③水氣病のある場合 〔金匱要略・水氣病篇

●黄汗の病為る、身体腫発熱汗出・・・・・・・・・・・・・・・・・黄耆芍薬桂枝苦酒湯
●食已って汗出で、腰従り以上必ず汗出
・・・・・・・・・・・・ 桂枝加黄耆湯

●風湿、脈浮、身重く汗出で悪風する者・・・・・・・・・・・・・防已黄耆湯
●風水悪風し一身悉く腫れ脈浮渇せず続いて自汗出で 越婢湯

④水毒のある場合 〔太陽病中篇

大汗出で胃中乾燥す、汗出で渇す・・・・・・・・・・・・・・・
五苓散
汗出づるも渇せず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
茯苓甘草湯

⑤内熱のある場合 〔太陽病下篇

●桂枝湯を服し、大汗出づる後、大煩渇解せず・・・・・・・白虎加人参湯
自汗出づる者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 白虎湯

⑥表証の已に解している場合 〔太陽病下篇

汗出で悪風せず…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・十棗湯

⑦少陽の場合 〔太陽病中・下

汗出で解せず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大柴胡湯

⑧少陰の場合 〔少陰病篇

汗出で解せず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真武湯

⑨裏実のある場合 〔陽明病篇

●手足濈然として汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大承氣湯
●発熱汗多し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大承氣湯

●其の人汗多し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・小承氣湯
自汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大黄硝石湯
自汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大黄牡丹皮湯

⑩病が陰位の場合 〔太陽病上・下・少陰病篇・霍乱病篇

発汗、遂に漏れて止まず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・桂枝加附子湯
●悪寒し汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
附子瀉心湯

汗出で短気す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・甘草附子湯
自汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・烏頭煎

大汗出で熱去らず・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四逆湯
●吐利汗出づ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・四逆湯
汗出でて厥す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・通脈四逆湯
汗出でて厥す・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
通脈四逆加猪胆汁湯

 病気の元である邪がどこにあるか、熱の証か冷えの証か、水氣によるか、労によるか、内熱か、裏実か、治法の陰陽表裏を見極めて処方していかなければなりません。


この記事についてブログを書く
   | トップ | 2.頭汗 »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事