ココロの欠片 “ LOVE Late SKY & OVER THE SKY ”

普通の日記
とか
なんか詩的なモノを書いていこーかと。

空と二人の 7

2024年01月30日 | 空と二人の
♪キーンコーンカーンコーン♪
放課後を知らせる鐘の音と同時に、「一緒に帰ろ〜」「どっか寄ってく〜?」色んな声が飛び交う教室。さっさと教室を出て帰る生徒や部活に行く生徒、先生と雑談したり…教室も廊下も下駄箱のある玄関だって一番ザワつく時間。少しだけ生徒が少なくなった教室の一番後ろ窓側に座る流歌が夕夏に話しかける。
『夕夏、もう一回屋上に付き合ってくれない』「イイけど、何かあった?」
『うん、もう一回、確かめたい事があって』
そう言うと流歌はキュっと唇に力を込めた。一緒にパタパタと屋上へ向かうが、流歌の方が少し早足になっている気がした。
屋上に出ると少しだけ蒼く暮れゆく空が広がっていた。いつもであれば流歌の方が
綺麗な空ー
と眺めているのであるが、『夕夏、これ見て』と中央ソファーの雨除け屋根の裏側を指差した。その空より大事な言葉がそこにあった。
「なんか書いてあるね。あ、なるほど〜。これが気になってたんだ?」
『うん。触れてみて。』「…うーん。何か起きるの〜?」『何か感じない?』
「書かれた文字から何かを感じとるスキルは生憎持ち合わせてなくて。次に転生する時は持てるとイイけど。」『んもう、夕夏ったら』「あはは、ごめんごめん。だけど、わたしにはやっぱりただの文字にしか…」『わたしには触れると書いた人の意思とか意識とか…そんなモノを確かに感じたの』「それはルカが言葉を大切にしているからじゃない?」『そうなのかな。』「綺麗だとか汚い言葉とかあるけどさ、全部含めて大切なんでしょ?ルカが素敵な言葉を探してるのは間違い無いから、きっと共鳴してるんだよ。」『ありがとね、夕夏』
照れてる夕夏を横目に、流歌は右胸のポケットからメモ帳を取り出すと書かれた文字を書き写しだした。「え?スマホという現代機器を駆使してカメラ機能を使いこなせば、すぐ写せるでしょ?」『うん。でもそれは申し訳ない気がして。』「ま、そこがルカらしいとこだね。」『その人らしいってさ、なんか難しいよね。言われて気付く気がするね。だからわたしも、夕夏しか出来ないところを見たら、夕夏らしいって何度でも言ってあげるね』
書き写しながら、親指と人差し指でペンを持ち、中指と薬指と小指の3本で耳に髪をかけるその指がなんとも艶やかで、きゅっとしながら夕夏は頬を染めた。「んもぅ、そうゆうことをさ自然にやっちゃうんだから!1秒くらい心臓止まったわ」『え?なにが?』顔を振るとまだほんのり頬を染めた夕夏と目が合ってまた1秒、夕夏は上瞼を少しだけ伏せ、イイからイイから、と流歌の顔を後ろから両手で包み、書き写せるよう戻してやった。「やっぱりさ、自分が自分を一番分かってないのかもね?」
キャッキャウフフとはしゃいでいると、空から蜘蛛の糸で吊るされているかの如く、すーっとサクラの花弁が流歌の手に落ちてきた。
『サクラも最後…かな』
そう言って手を静かに閉じた。
ー季節は春。でも、季節よりも人の想いに起こされている桜たち。気の早い花が先に咲いて、足並み揃って満開になる時には、散る花が居て…最後は街並みを君色に染める。君の本当の美しさはどこに在るんだろう。きっとどれも美しい。でもわたしにはまだ分からないかな。うん、咲いていても、そうで無くても、貴方は美しいよー
『わたしに付き合ってくれてる、夕夏のココロも美しいね』「いや、まぁまぁ。わたしは美しいわよ。で、涙の訳は分かったの?」
どきっ
「ゴミが目に入った、ってベタ過ぎだよ笑」『あは。バレてたかー。すごく優しいココロに触れた気がしたんだけど…でもやっぱり理由はわからないや』
「そっか。日も暮れてきたし帰ろっか♪」
二人が屋上から降りてくると、4人の天文部員が階段を登ってきた。流歌があれ?あの人は確か…と想ったが、結人は素振りも見せず屋上へ行ってしまった。「ん?結人に何か用だった?」『あ、いえ、用というか何と言うか…』
結人。その名を聞いて左胸の奥の方が温かくなった。ポッと小さな火が灯るように。
(ん〜。この感覚は…あの時の嬉しさに似てる…?)
「てか君、可愛ねー♡とりあえずLINE交換しよ♪」
『ごめんなさい。LINEしてないので』「先輩、すみません。わたし達急いでるので、失礼します〜」と、夕夏が流歌の手を引いてバタバタと駆けて行く。なぜか自然と口角を上げながら、透明だった水面に初めて色が付いた瞬間でもあった。

「ふーん。1年生が、結人に…ねぇ。」






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空と二人の 6

2024年01月13日 | 空と二人の
ルカ、急いで〜〜!と夕夏が手を引いていこうとするが、流歌は何故か彼から瞳を離せなかった。
『どう…しました?』
はっ!としながらも『す、すみません。理由は無いんですけど…』お互いに?と首を傾げ、何故か気まずい空気がまた二人を動けなくする。
「えっと先輩!?すみません。ほら〜ルカ、行くよ!」と夕夏が二人の引力にも似た空気を散らす。たぶん時間にすれば数秒、ただ、たしかにその間は二人の時間は止まったのだ。その刹那時間、初対面ながらも二人のココロの深い深い奥底がコトンと無意識に音を立てていた。
そんな小さなちいさな音と一緒に、流歌は夕夏とパタパタと教室へ走っていく。
ーあの人が僕の…?ー
教室に向かう廊下を曲がりながら、流歌はまだ居てくれたら…と保健室の方を横目で見ると、彼が視界に入ってきた。もう一度、視界に入れておきたかった人と目が合った。そう、何十メートルも離れた2人なので本当に目が合ったかはさておき、男子生徒も流歌を見ていて、二人にしか分からない世界で、また時間が止まった感覚がした。あの人が見てくれていた、これはどんなに嬉しいことだろう。二人の胸の空は今までのどんな空より青く、一瞬で春の温かさに包まれた…そんな永遠の一瞬で、流歌は不思議と左胸の奥の方がくすぐったいのと同時に、自然と口角が上がっていた。
ー あれ?この気持ちは…何?初めてでよく判らないけど、なんか嬉しいってことだけは分かるわ。うん。わたしはこの気持ちが嬉しいのね。ー
名前のない透明な時間と気持ち。それは大多数の人がきっと通る道。近道も正解も目印もない道だけど、それでも不思議と恋と呼ばれるココロに辿り着くが、それを証明できるものも、色も温度もそれぞれ違うのだろう。見ることも医学的に取り出すことだって出来ない、でもあなただけはちゃんとここに在ると感じられるものが、ひっそりと宿り始めた流歌なのであった。
男子生徒は扉をノックし、天使です。呼びましたか?と保健室の扉を半分ほど開け、顔だけ出してはにかんでいる。あ、結人くん入って入って、と共通の友人である九音(くおん)について聞きたいことがあるから、と花緒莉に呼ばれたのだった。九音はスピリチュアルカウンセラーであり花緒莉の恩師で、十儛の姉にあたる。
「最近はどう?落ち着いてる?」
『うん。でも誰かに触れるのも触れられるのもやっぱり苦手。あとは色んなモノがたまに見えるかな』
そう言いながら男子生徒は苦笑いしたが、自分自身については悲観している訳でもない。どこか達観すらしているようだった。
それで九音はなんて?
・・・
・・・
・・・
「そう、九音がね・・・。で、また夜更かししてるのね?眠そうだけど?」
『あ、あんまり遅くなるつもりは無いんだけど、夢中になっちゃって』
隠してるつもりでも無いが何故こんな時はドキッとするのだろうか。ココロが平穏ではないから寝れないといった類の理由でもないのに。
「夢中もイイけど、心の休みも大事にね。横になっていいわよ」
促されるままソファーに仰向けになった結人に、花緒莉は事務仕事をしながら話しかける。
「入ってくる時に可愛い子に逢ったでしょ?天羽流歌ちゃんっていって、膝まくら出来なくて。結人くん…膝まくらさせてくれない?エヘヘ…」
結人は気心知れた花緒莉が居る空間ということと、睡眠不足が重なり、あっという間に寝息を立てていた。
「…って、もう寝てるのね…。始まりを恐れちゃダメよ。」
そう言って割れないように結人の眼鏡を外し、そっとブランケットをかけた。大好きなコーヒーを淹れ、行く末を案じるかのように、暫し結人を見つめる花緒莉であった。






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空と二人の 5

2023年12月18日 | 空と二人の
「あ、ルカ~?そこに居たんだ~」
夕夏がパタパタと小走りで近づいてきた。
『え?なんで泣いてるの?』
『あ、あ、いや、これはちょっと違って』
『なにが違うの??』
『ちょっと瞳にゴミが入っちゃって』
『え?ホント?擦ったらダメだよ!保健室いくよ!急いで急いで!』
『あ、え、いやちょっと~~』
ガラガラと保健室の扉を開け切る前から、夕夏が大声で話しだす。
「花緖莉先生ぇ~ルカの目にゴミ入ったって~!」
そこには薄いピンクのドクターコートを着た女性の保健師が
ーはいはい、騒がしい午後になりそうねー
と想ったのは定かでは無いが、「そこに座って♪」と、二人を見つめてきた。
栗色の髪をキュッと纏め、流歌の静かな澄んだ瞳を見つめながら、
「天羽さん、ちょっと触るね。どれどれ・・・ん~何ともないけど?」
流歌のほんのりピンク色に染まった頬に手を当て、めくった瞼を優しく戻す。
『うん、もう取れたんだけど夕夏が・・・ね』
「えー、早く言ってよ~」
たしかに彼女なりの親切心で行動しているだけなのだが、保健室まで過保護過ぎるくらい強引に引っ張ってきたのは夕夏なのだ。
「柊さん。」
と花緒莉先生が夕夏に諭すように静かに話しかける。
「柊さん、貴女の行動力はホントに素敵よ。でもね、もう少しだけ、ほんの少しだけ落ち着いて行動できたらもっと素敵かしらね?」
「はーい」(*´з`)
「天羽さんは念のため目薬ね。はい、上向いて」
流歌は固まったまま動かない。
ーあ、あぁ。なるほどなるほど。膝枕がイイのね?ー
花緒莉先生はー仕方ないなぁーと少し頬を染めながらソファーに移動し、太ももに頭乗せてイイわよ?と指を差す。
『花緒莉先生、わたし目薬がダメで・・・瞳を開けていられなくて・・・』
シーン・・・
花緒莉先生の立場や如何に!?
「意外な弱点ね」
『だって瞳に入ってくるんですよ?いくら薬とはいえ、開けた瞳の中に入ってくるんですよ?薬の中に瞳が入っていく洗浄薬なら百歩譲ってイイですけど!』
ーあぁ、そっちはイイんだ・・・ー
「目薬は上からじゃなくてイイの。目尻から注してあげると簡単だから・・・ほら♪あまりたくさん注しても意味ないから、そこだけ気を付けてね。甘いからって注し過ぎないようにね」
ー甘い?花緖莉先生大丈夫?ー不思議がる二人。
「え?目薬って甘いわよ?特に赤いやつが・・・」とガサゴソと探しだした。
『いえ、花緒莉先生、そろそろ予鈴なので~~』と夕夏が手をひきそそくさと退散する二人。保健室の扉を閉め普通科に戻ろうとすると、逆側から男子生徒が一人保健室に入ろうとやってきた。
瞳が合う流歌と男子生徒。
♪キーンコーンカーンコーン♪
予鈴が鳴り響く。





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空と二人の 4

2023年10月22日 | 空と二人の
『ねぇ、ルカ。この学校の屋上に行ってみない?すごく見晴らし良くて気持ちイイらしいよ♪そこでイケメンの先輩とかに逢っちゃってさ、瞳が合ってちょっと何故か分からないけど、ドキドキしちゃう!緊張し過ぎて、ちょっとナニ言ってるか分からない、とかあるかもよ〜?』

『そんなパン咥えて走ったらぶつかって、運命の出逢いみたいな事、ある訳無いでしょ』


在るかも知れない・・・これは恋愛小説なのだ。


『じゃ、とりあえず屋上行くまで、まずは螺旋階段でぶつかるの期待しますかっ♪』

と、夕夏はどんどん歩いていく。
これは夕夏にロマンスが訪れるパターンでは?
そもそも螺旋階段ではぶつからないのでは?

・・・
・・・
・・・屋上入り口に無事着である。

ガチャ。
扉を開けると円形校舎の形そのままの屋上が広がり、みな想い思いに過ごしている。
友達同士だったり恋人同士だったり、吹奏楽部が練習していたり。
共通して言えるのは、みんな屋上から見える街並みが好きで、高台にあり街から少し離れているためか湿度が低く、初夏の吹き抜ける心地よい風も大好きだった。

「ルカに合う人は居ないね」

勝手に品定めを始めた夕夏を他所に、流歌は中央にあるソファーに向かう。屋外クッションが敷いてあり、3人くらいなら座れる長さで、2つ並んで置いてあるが、運良く誰も座ってない。それならと、うーん!と腕を上げて伸びをすると、そのままゴロンと仰向けになり、空を見て詩を浮かべる。


ーサクラ散る6月の水色の空。散乱して人の瞳には本当の君の蒼は届かないー


「ん?何か書いてある。」

雨除け用の屋根の裏側に誰かの言葉が書いてあった。ーはしたないなーと想いながらもソファーの上に立ち、そっと爪先でなぞると微かに熱を感じる。そんな錯覚に陥るような想いがたしかに在った。他の人は感じないかも知れない。だけど、流歌にはちゃんと伝わりその琴線に触れたのだ。


ー織姫と彦星とデネブを別つ理由はどこに在るんだろう。
織姫ベガと彦星アルタイルは天の川で逢瀬を重ね、デネブは二人を照らしながらどこかを目指している。
その瞳に涙を溜めながら。
あぁ、そうだったね。君はいつか北極星になるんだったね。
いつかみんなが君を見上げて進むんだ。北極星が道標となって迷わず行ける!と。
君が光となって星々を照らし、他の星たちの目印になるんだよー

なんて儚くて、なんて切なくて、どうしてこんなに力強いの・・・。
自分が織姫と彦星に割って入れないのは、未来が約束されているからだとしたら、未来を捨てたなら結果は違ったの?
ねぇ、こんな素敵なココロを標した貴方。わたしならどうしただろうか・・・と、自然と涙が溢れ落ちた。

恋なんてした事ないのに不思議ね。

あれ?続きかな・・・小さく小さくそれは誰からも読まれたくないかのように、ひっそりと書かれていた。

ーその涙の理由を話してよー
ーその涙の理由を離してよー

それは運命であるかのように伝わり、ココロを揺さぶられた流歌。
ここから流歌のまだ見ぬ恋が始まった。





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空と二人の 3

2023年10月01日 | 空と二人の

夕夏、帰ろう。

夕夏の彼氏が教室に迎えにきた。二人は幼馴染…ケンカして泣いて、仲直りして笑い合う…そんな普通を何度も繰り返して、いつしかお互いが大切な存在と気付いて付き合うことに。

ルカは〜?『わたしは遠慮しておくよ。本屋さんに寄りたいから二人で仲良く帰りなよ♪』

『そっか。また明日ね!あのルカの顔を見れるのは誰なのかしらフフ』

「夕夏、なんかご機嫌だね!?イイことあった?」

『内緒。その時がきたらね♪』

夕陽が作った長い影と一緒に、ふたり並んで帰っていく。教室の窓に映る二人を見送り、

ー恋ってどうやって気付くのかな…その気持ちはみんな同じなのかなー

この気持ちはあの影の所為だね!と少しだけ降り注いだ哀愁を振り払うように『うん!』と席から勢いよく立ち上がる。教室の後ろの扉を開けると、廊下の冷たい風と教室の温かい空気が混じりながら、流歌の髪を揺らす。

鞄を両手で持ちスカートを揺らしながら、それでも周りからは凛として見える所作で、ゆっくり螺旋階段を降りていく。

下校時間の街はいつもと変わらず賑やかで、少しだけ落ち着かない。雑踏を潜り抜けた先、幹線道路に面した本屋が見えてくると、いつの間にか足早になっていた。なぜか雑踏から逃げるように。

ふぅ、すっかり遅くなっちゃった。本屋ってどうしてこう時間が過ぎるのが早いのかなぁ。

そう言いながらも手にはとある詩集を持ち、るんるんと帰りの汽車に揺られていたが、ふと夜の窓に映る自分を見つめ『恋か』とふいに呟くのだった。

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