★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

華下天満宮を訪ねる(香川の神社70-2)

2019-04-11 00:56:00 | 神社仏閣


雪洞を吹き消して拜殿を下りると、夜はもう曉に近くて、星の影も薄くなつた。拜殿の横から、ぐるりと神殿の後に廻ると、こんもりとした神域の木立は、紫の雲が垂れ下がつたやうで、梟が一聲けたゝましく啼いた。
 横の方の玉垣の側で、何やら白いものがチラと動いたやうなので、道臣は足音を偸んで近づいて行くと、其處の大きな杉の幹へ、蝉のやうにピタリとくツ付いてゐるのは、寢衣姿の京子であつたから、道臣は慄然として棒のやうに突つ立つた。


――上司小剣「天満宮」


 


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