★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

赤面逆上的混乱苦痛とともに、誤謬の訂正的発狂状態が起る(坂口安吾)

けしつぶほどのお百姓が時々

2018-06-07 23:49:39 | 文学


静かに朝が立ちそめて、小鳥がチクチク鳴きはじめました。ふっと気がつくと、とんび岩は、いままでのように、山の頂きにちゃんとすわっているのです。とんび岩はあッと喜びの声をあげました。
「ああ、前のところにいる。前のところにちゃんといるぞ……これはどうしたことじゃ。みようなことだぞ……」
と、まわりを見ました。とんび岩は夢をみたのです。とんび岩はむくむくとこおどりして、
「ああ、神さま! 神さま、ありがとうございます。」といいました。自分の場所くらい、いいところはないのです。見はらしのいい海の上に、いくつも船がはいって来ています。畑ではけしつぶほどのお百姓が時々、とんび岩をみあげては土をたがやしていて、平和な平和な朝でした。

――林芙美子「ふしぎな岩」
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