くまだから人外日記

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【偽書】虹メイル・アン 〔第八話〕藍深き深海より聖者は鐘を打つ 9

2018-03-18 11:58:37 | 【偽書】シリーズ
「画像からはそう見えるな」
責任者の正宗誠志朗は努めて冷静にそう答える。
「何故こんな海中に存在出来るのでしょうか。もうひとりの私さんは?」
カレンは呆気にとられてその場に居合わせた人々が抱く疑問を口にする。
「セイラ、その窓の外の“人物”とコンタクトは可能ですか?」
ー「無理を言わないで下さい。アン。私には“人魚姫”とのコンタクトするプログラムは設定外なんですから」
「モールス信号とか?」
「パントマイムだろう」
「リンダもメルティもおばかさんね。こんな時はテレパシーでしょ」
いや。ルナにだってテレパシーは無理だよね。

ー「ねえ。あなたは誰?」
モニター画面の向こうで海底のその“人物”にサニーが語りかける…が、やはり反応は無い。キョトンとした顔をしてみせるモニター画面の向こうの“人物”。

「まさかこの“人魚姫”が探査挺を操舵不能にしたとは思えないが、敵意の有無さえわからなければ無視する訳にもいくまい」
「捕獲を目的に攻撃を仕掛けますか?正宗主局」
救助挺の運行を管理する技師が正宗誠志朗に尋ねる。
「存在も敵意も不明な相手にか?そもそもあの救助挺に積載している器具はあくまで鉱石や他の探索挺を引き上げるアームしかあるまい」
「最悪の事態に対応する為、自機と同程度までの機体を包む事の出来るクレーンネットなら装備してありますが」
プロジェクトリーダーが答える。
「訳の分からん未確認物体に使って肝心の要救助挺に使えなくなっても困る。攻撃を仕掛けて来ないならあくまでも救助が優先する」
正宗誠志朗は冷静に指示を出す。
「聞こえますか?セイラ、サニー。そのまま救助の為下降を継続して下さい」
ー「了解です。アン」
ー「待って、セイラ。何か言っている」
セイラを制してサニーは外部カメラのモニターをアップにし、僕等の居るベースのデータ画面に映像をリンクしてきた。

「正体不明の人魚姫の口が動いている?」
「地球上の多言語に適応する口述ソフトにて解析中します」
「何それ?」
「音声に表さなくても唇などの動きを分析して言葉を解析するソフトウェアですよ、ルナ」
カレンは自身のデータをアップロードしなからモニターの向こうのそっくりさんを見つめる。
それにしても本当によく似ているね。
「もしかしてあのそっくりさんもカレンと同じくメイルなのかな?」







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筆者敬白