宝島のチュー太郎

酒屋なのだが、迷バーテンダーでもある、
燗酒大好きオヤジの妄想的随想録

築地玉寿司

2021年02月04日 16時58分23秒 | 徒然

 むすひのことを書いてて思い出したことがある。
そいつは築地玉寿司(当ブログ検索で上がる記事全て)という赤坂TBS前にあった寿司屋のこと。
 
 そこでは色んな事を教わった。
ハワイ帰りの店長が赤坂店にだけ出していた「ワインクーラー」。
これ、白ワインを7upで割っただけの代物で、ハワイ店を任されていた店長のお土産だった。
でも、40年余り前のこと、それはかなりお洒落な位置づけだった。

世に出始めの「貝割れ」
ウイスキーはロンドンにある超有名デパート「ハロッズ」のプライベートブランド・ スコッチ。

清酒は「ねのひ」の升酒。
これをそのまま読むと笑われた。
「ねのい」と読むのだと。
「むすひ」は「むすび」と読むんだけど、どうもその名残があって、つい「むすい」と読んでしまうのだ、という繋がり。







 その赤坂店は、今ではもう存在しないらしいが、本店のこの感じとよく似てた。





 懐かしさの余り、2006.02.13.に、ここにアップした赤坂一ツ木通りという記事の一部を以下に貼り付ける。
しかし、それすらももう15年になるんだねえ・・・




タイムマシンは移動する。
時は1977年。
場所は赤坂一ツ木通りにある喫茶店。
たしか、「一心」とかいう店名だった。
私は3年生になっていた。
新聞配達員を丸1年勤めて辞めた私は、サークルは何?と問われれば、「アルバイト部」と答えるくらい、様々なバイトに精を出していた。



学校から移動して、バイトに入るまでに時間があった私は文庫本を読んでいた。
すると、向かいのボックスで、「初めまして、宇崎です。」という声がする。
でもって、その声があの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」なのである。
見ると、おお本物だ。
流石につなぎ姿ではなかったけれど(笑)

この頃私は赤坂の寿司屋でバイトをしていた。
「築地玉寿司」というチェーン店で、その赤坂店は、TBSの前にあるビルの地下にあった。

因みにその1階は「不二家」で、2階は「ヘンリーアフリカ」という喫茶店だった。
この「ヘンリーアフリカ」にも、バイト前の時間を読書で過ごすためによく入った。
店内の中空部分に模型の列車が走っているのが特徴の、当時はトレンドな喫茶店だった。
後年、「不ぞろいの林檎たち」のワンシーンでそこが使われていた。
それは私の好きな脚本家、山田太一の作品で、TBSの看板ドラマだった。
真ん前だものね、TBSさん。

寿司屋のバイトってなんだい?って思うでしょ。
そこは、弧を描いたカウンターに板さんが5人ほど貼り付いていて、お客さんは専用板さんに注文をするというシステムになっている。
カウンターの奥が広くとってあり、冷蔵庫、中央台、そして更に奥に厨房がある。

私はその中央台を仕切る役回りで、板さんのアシスタントをするのである。
これは、バイトの筆頭でなければ任せてもらえず、板さんとバイトのパイプ役でもある。

飲み物を作る、出す。
海苔をあぶって板さんに渡す。
赤出汁、お吸い物を出す。
それ用のあしらいの準備をする。(例えば白髪ネギ)

ワインクーラーという飲み物もここで知った。
当時の店長は、ハワイ店帰りで、ハワイではそれが流行っていたらしく、赤坂店だけのメニューとして供していた。
白ワインを7upで割るだけの単純なもので、現在取り上げられるカクテルのそれとはまた別物だが、結構女性に人気があった。

海苔に裏表があるのもここで知った。

板さんが賭け事好きなのも体験。
こんな話がある。
休憩時間に一緒に煙草を買いにいったときのこと。
煙草を手にするなり板さんどうしが自分の煙草を取りだして見せ合っている。
そして、「今日は俺の勝ちだ。」などと笑いながら千円札のやりとりをしている。
訳がわからない私がキョトンとしていると、一人の板さんが教えてくれるには、煙草の裏にある数字でオイチョカブをしているというのだ。
勉強になった。

勉強と言えば、隠語も面白い。
少し披露すれば、
「やま」→ネタ切れ(寿司屋は海の物ばかりだから)
「わかい」→新しいネタ

数字は、
ぴん、りゃん、げた、だり、めのじ、ろんじ、せいなん、ばんど、きわ、そく
だったかと思う。
それぞれに言われがあって、覚えているのは、げたは下駄の穴の数、めのじは目の画数などである。

なんでそんなややこしいことをするかというと、数字を伝えるにあたって、聞き間違いのないように、ということらしく、事実、板さんは中央台責任者の私にお客さんの注文を伝えるのに、「かわばた~ 赤出汁りゃんこ 貝割れぴんこ」と声を掛け、私は「ハイ、赤出汁りゃんこ 貝割れぴんこ、承知しました~」とやるわけである。

この「かわばた~」も板さんの出身地で微妙にイントネーションが違う。
ある日、お客さんが少ないときに「かわばた~」と声が掛かる。
見ると、板さんが向こう向きのままマグロの切れ端を手に持ってブラブラしている。
すかさず私は黙ってそれをもらって厨房に入っていただく。
その阿吽の呼吸が面白かった。

厨房で時々鰯のつみれ汁の中のつみれを頂戴していたのは、内緒である(笑)
どっちも妙に美味かった。



因みに、貝割れは当時、世間では認知されておらず、割烹筋で扱われ始めたばかりだから、バルサの箱に恭しく並べられていたもので、それを一口ビアグラスに立てて供し、板さんが必ず新規のお客さんにこう言うのである。

「それ、なんだと思います?」

大抵のお客さんは即答できない。

「何かの味と似ていると思いませんか?」

敏感なお客なら、
「大根?」

すると、板さん、大仰に、
「凄い!違いの判るお客さんだあ。」
と褒め称える。
お客は鼻高々。

当たらなくても、「実は大根の芽なんですよ。」と教えれば、「へ~」となって、場が盛り上がるのである。

色々と勉強させてもらった。



チェーン店とはいえ、TBSの真ん前だったから、有名人も時々来られる。
当時のワイドショーのメインキャスターであるアナウンサーは常連だったし、先の宇崎竜堂の奥さんである阿木耀子も来られた。
当時、丁度作詞家として売り出し中で、その美貌をかって、TVでの露出も増えかけていた頃だったかと思う。

実は、夫婦の出会いが我が母校であることから、後輩として勝手に親しみを持って眺めたのである。

学校からの便の都合で、丸の内線の赤坂見附の駅で降りる。
地上に上がると、まず赤坂プリンスホテルが視界に入り、焼ける前のホテルニュージャパンの前を歩いて右に折れる。

私の記憶がねじ曲がってなければ、マンモスキャバレーとして有名な「ミカド」もそこにあったのではなかろうか。

飲食店の家並みを歩いていくと、芸能人とすれ違うこともままあった。

そして、一ツ木通りに出るのである。
私の記憶では、一ツ木通りの端の方にTBSがあって、その前がバイト先、TBSの袂に地下鉄の赤坂駅が、そして、一ツ木通りはほどなく終わり、その先は乃木坂だったのだが、「ウラをとろう」とネット検索してみると、なんだかその記憶はひどく曖昧でズレがあるようである。

新居浜的に言うと、「ズタボロ」なのである。

もしかすると、バイト先の店は一ツ木通りにあったのではなくて、赤坂通りだったのかも知れない。
ならば、乃木坂の件は符号する。
でも、そうすると、TBSの位置が変だ。
え?TBSって微妙に移動した?


ま、いっか~
どうせタイムトリップなんだから。
あの頃の赤坂も私も、今は遠い昔・・・・・


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