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さまざまなことを「流さずに」考えてみよう。"slow-thinking"から"steady-thinking"へ

週刊新潮に「『放射能ヒステリー」を煽る『武田邦彦』の正体」という記事が

2011-07-25 21:23:45 | 白河アーカイブス

案の定というか、とうとうと言うか、週刊新潮が武田邦彦を批判する記事を載せた。一色正春氏問題では軽率な記事を載せたが、やはり、ここ一番の新潮社であった。週刊文春との吊り広告を比べれば、その違いはよくわかる。

 

 

 

なでしこジャパンの扱い一つ取っても、文春はべた褒め、あるいは「苦悩から立ち直った」系の記事一色な一方で、新潮は「ピッチ裏余聞」と名づけ、岩渕をめぐる厳しい周りからの扱いや、娘である宮間あやに「来るな」と言われた宮間選手の父親の話など、赤裸々である。そして何より、文春は坂本龍一のインタビュー記事「私はなぜ『脱原発』を訴えるのか」を2番目に大きな扱いにし、バ菅総理のたわごとである脱原発を結局は後押しするような紙面作りに終始している。

そもそも、なぜ日本に住んでいない人間の「脱原発論」なんぞを、ありがたがって読まなければならないのか。坂本龍一も、脱原発を語りたければ日本に戻ってから言えよ。しかも、そういう、日本に住んでいない人間を、著名人だからと言ってセコセコとインタビューしに行く文春記者の間抜けさも脱力することしきりである。要は「文化人が脱原発って言えばみんな読みたがるだろう」という、実に浅薄で頭の悪い編集者根性である。

 

さて。新潮の当該記事に話を戻すが、この記事のポイントはここだろうな。

 

6月22日には、

「内部被曝+外部被曝」で1年1mSv(ミリシーベルト)を越える可能性のあるところなどの人に対して、「健康に問題はない」、「特に注意はしなくて良い」と言っている人は、放射線障害が起こったときに最終的な責任を取る準備をしておいてください」

と脅迫口調だ。要は、発がんリスクを隠蔽する政府と、真実を語る武田教授という構図で、その前提に立てば、日本中が不安に陥って武田教授の訴えに耳を傾けるのも無理はない。(ここまで)

 

反原発派から見ればこれほどかつぎやすい御輿もないわけで、今や首都圏も含め、1年で、空間を飛び交っている放射線量が1mSvを越える地点は普通にある。柏や守谷、野田だけではなく、東京都でも、ざっと言えば、山手線の田端~秋葉原あたりの南北ラインより東側は、局地的なものも含め、年間の放射線量が1mSvを越える地点は出てきている。前にここでも紹介した、日本共産党東京都議団による調査などでそのことは明らかになっている。

日本共産党の調査結果によると、「ホットエリア」「ホットゾーン」という認識の方が正確になるだろう(2011.05.27)

※追記:しかし、この数値も、各放射性物質が半減期を迎えたことなどで、数値が低くなっている地域が多い。東京都保健福祉局が6月中旬に測定した結果はこちら。例えば葛飾区でも、最高値のポイントでも、地表1mのところで0.2μSv(=マイクログレイ)/時に下がっている。地表5センチメートルのところでも放射線量はほとんど変わらない。

 

したがって、「年間1mSvを越えた地域はみな危険だ!」と、反原発派が武田邦彦を御輿に担いで騒ぎ立てることで、東京東部も含めた、数百万人、ヘタをすると1000万人単位の人間が、あたかも東電や政府に対して原発被害の損害賠償を求められるかのような動きを作ることができる。実際に、広瀬隆というどうしようもなく狂った人間(自称「作家」)が、「業務上過失致死傷」という罪状で、東電の原発関係者や政府関係者、そして福島県の放射線管理リスクアドバイザーであった山下俊一氏や、原子力安全委員会メンバー、文科省幹部、原子力安全・保安院幹部など、20人を対象として告発を行っている。告発は誰でもできるので、警察または裁判所が刑事事件として受理するかどうかに関係なく、こういう動きは今後しばらく続くであろう。

反原発で日本のエネルギー政策を麻痺させ、産業をますます空洞化させ、雇用をますます悪化させることで、日本の国力を長期的に削ぐことで、原発反対派が正しいと信じて止まない社会主義を日本でも樹立しようとでも企んでいるのだろう。本気でそう思っているように見えるところが怖い。そういう彼らには、中国の貧富の差や北朝鮮の核開発、支配者一族による放漫政治やそれに基づく国民の飢餓状態など目に入らないらしい。その証拠に、反原発派の代表者である京大助教の小出裕章は、「朝鮮には原爆は作れない」という主旨の「論文(なのか???)」まで出している。オイオイ、北朝鮮自体が「核開発に成功した」って宣言してるじゃんかよ(苦笑)。

朝鮮の核問題(2003.06.14 京都大学・原子炉実験所 小出裕章)(PDF)

 

小出裕章が万年助教なのは、反原発派だから「原子力ムラ(笑)」から睨まれて昇進できないからではなく、単に学問的な論文が書けないから万年助教なのだということがよくわかる。その証拠に、この「論文(なのか???)」には参考文献一覧すらない。すなわち、従来の学問的研究の成果を踏まえ、その上にどのような知見を積み重ねるかという学問の基本的姿勢が全く存在していないのだ。その証拠に、原子力とは全く関係ない「星条旗が示す米国の成り立ち」というサブタイトルで、「アメリカ合衆国」を「アメリカ合州国」と修正させることができない日本社会こそが歪んでいるなどと書いてご満悦だ。

・・・アメリカ「合衆国」の表記と、原子力研究は、何がどう関係しているの?反原発派の諸君よ、だれか教えてくれよ。

 

とまあ、こんなイカれた人間が旗振り役をしているのが反原発運動らしいのだが、広瀬隆や小出裕章だけでは御輿としては足りないのだろう。「年間1mSv」を金科玉条のように繰り返す武田邦彦が「重宝」しているわけだ。

 

ところが、年間1mSv以上の被曝が、どのような危険(リスク)をもたらすかについて、武田は何も語れていない。新潮はこの部分を引用する。

 

僕のデータでは、年間4シーベルトで50%の人間が死ぬ。年間6シーベルト浴びれば70%の人が死にます。コンセンサスです。

(別の部分)

強大な被曝はだいたい白血病になる。そのデータはものすごくある。250mSv以上で白血球が減少し、被曝で骨髄が損傷し、白血病になるんです。

 

いや、だから、「年間100mSv以上」だと害になるという点ではみんな一致しているんだから、「1mSv~100mSv」のデータを出しなよ。

 

100mSv・・・慢性的な疾患がみられるようになり、1000人に5人が放射線によって過剰発がんになります。(中略)100mSvまでは、がんになる確率は完全に比例すると考えられています。1mSvで1億人に5000人、10mSvで1億人に5万人、20mSvで10万人と増えていきます(ここまで)

 

分母を1億人にしているからさももっともらしく聞こえるが、福島県の子どもの数は多くて40万人。分母を40万人とすると、100人ががんになるという計算だ。

え!多い!!と思うなかれ。これは一年のリスクではなく、一生を通してのリスクであり、一生を通せば、3割もの人間ががんで亡くなっている。このブログで何度も掲載した、放医研(放射線医学総合研究所)の示す、下の図の通りだ。

 

 

したがって、福島の子ども40万人のうち、一生を通し、その中の3割の12万人がガンになる中で、「年間1mSvの被曝」により、その12万人に100人が加わる、というのが武田邦彦の仮である。

そこで考えていただきたいのだが、12万100人のがん患者の中で、誰が、どうやって、「このがん患者は、放射線被曝に基づく100人の一人だ!」などと決定できるのだ???

当然のことながら、子どもにもライフスタイルがある。この子らが将来成人したときに喫煙する人間も出てくれば、受動喫煙で肺がんになる人間も出てくるだろう。そして、一番忘れてはならないのは、新潮も指摘しているように、「放射線を過剰に恐れること」が子どもたちにとって「無視できないストレス」となり、そのせいで体内の免疫細胞の活性を低下させることによる、発がん性増加のリスクである。例えば、抗がん剤についての著作がある医師の梅沢充氏は、ブログでこうお書きになっている。

 

「ガンとストレス」(2008.10.09)

発ガンのメカニズムは、
イロイロと考えられています。

発ガンを免疫だけで捕らえている奇妙な学者さえいます。
しかし、
免疫力の低下が発ガンの原因であるならば、
多重ガンがたくさん発生してくるはずだ、
と、まっとうな医者は反論しています。
後者の方が正しいように思います。

また、巷では、
発ガンにはストレスが関与してるというようなことが、
よく言われています。

ストレスは、
免疫力を低下させる、
然るに、ストレスをたくさん感じるとガンが発生する・・・

本当に発ガンとストレスに因果関係があるのか否かは知りませんが、

すでにガンを宿している患者さんでは、
その病勢とストレスには、
明らかに因果関係があるように感じます。


現在診ている患者さんの中でも、
明らかにストレスにより病勢が左右されているかたが何人もいます。

まったく同じ病気・病態であっても、
病気にビクビク怯えて生活している患者さんと、
そんな病気を笑いと飛ばすような患者さんでは、
明らかに予後が違います。
当然、後者の患者さんの方が長生きします。

家庭内の事件で、
安定していた病勢の急速な悪化を見て、
それが解決すると、
病気も快方に向かう。
これは珍しいことではありません。

「私はストレスが溜まると再発する。
過去何回かの再発は、
いずれも、ストレスの極致で爆発しそうになったときだ。」
と言われる患者さんもいます。

それは事実だと思います。

実際に現在診ている患者さんの中にも、
明らかに、家庭内や職場でのストレスが原因で
再発をきたしたと思われるかたが何人もいます。


痛いガンの代名詞のような膵ガンを宿した患者さんに対して、
アメリカでの実験?があります。
痛みをできるだけ我慢してもらった患者群と、
痛みを感じさせないように徹底的に麻薬で、
疼痛管理をした患者群を比較しました。
痛みをとってあげたグループのほうが
長生きをするというデータが出ています。
ラクをする方が長生きをするのです。

我慢したらソンです。
先進国の中では、
最大の麻薬後進国である日本には、
いまだに「麻薬は寿命を縮める」という迷信が
信じ込まれていますが、
それは大きな間違いです。

恐らく痛みのという激しいストレスが、
ガンの進行を早めたのではないかと想像されます。

多分そこには、
免疫力も関与しているように思います。

(赤字白河、以下略)

 

「ストレス 発がん」などで検索をすると、大きなストレスが短期間に強くかかることで、発がんリスクが5倍になるという書き込みまで見られるので、武田邦彦の仮説が完全に正しいとしても、「低線量の放射線からも徹底的に逃げようとするアレルギー的行動に基づく強いストレス」によって増加するがん患者は100人どころではない。なぜなら、国民の3割ががんで死んでいる現状があるからだ。仮に、その1割が、「低線量放射線アレルギー症候群(勝手に名付けた)」によって新たにがん患者になるとすれば、それは福島県の子ども40万人の3割の10%、12000人となる。

100人の新たながん患者を抑えるために、ケタの違う、12000人もの新たながん患者が生まれるリスクを背負う。武田邦彦が掲げている「仮説」とやらは、医師目線で見れば、「ただ騒いでいるアホ」としか見えないわけだ。しかしその「騒いでいるアホ」の文章を一日50万人が見ており(by新潮)、彼の著作の発行部数は30万部を越えているわけだ(by新潮)。

 

(別の部分)

誰かがこう言っているからといって、ほかの人の健康を阻害する原因にはならない。20mSvでガンが増えるとICRPが言っている(言っていない。白河註)。その根拠の直線仮説は世界中で認められているんだ。それを覆す説をまず示すべきではないか。

 

ちなみに、これも、3ヶ月前の朝生で、石川正純教授によって否定されている。

 

 

武田邦彦が依拠しているのは、下の方の図の赤い点線で表されている「LNTモデル」で、今では黒い曲線で表されている「曲線モデル」で発がんリスクが近似されている。

武田邦彦が、「いや!私が依拠しているのはこの黒い曲線の方だ!」と言いかねないから、あらかじめ、ストレスによる発がんリスク増加を完全に無視していることを指摘しておいたのだ。

 

ここまで考えていくと、今度は2ヶ月前の朝生に出ていた、東工大の松本義久准教授の発言が、結局は「結論」になると言わざるを得ない。

 

 

松本:やはり見解の違いということになるんでしょうが、年間20mSvという被曝量で、がんの増加が見られるかというと、見られないと。今の、飯田さんがおっしゃったように、考え方の一つとして、どんなに低い放射線量であっても、がんの発生確率を増加させると。具体的には、1シーベルト(1000mSv)で5%と。そのあたりの数値というのは、かなり具体的に見られている数値であるわけですが、その下の数値というのは、実は、いろいろな疫学の難しさ等で、確かめられていないというのが実情です。ところがそれを(計算として)ずーっと下まで引っ張っていっています。そうすると、20mSvというのが、(がんの)0.1%の増加ということになるわけです。

飯田:確かめられていないことと、「ない」と言い切ることは全然違います。

松本:それはそうです。はい。(がやがや。田原が仕切る。「ちょっと待て二人(飯田と福島)は遮るな!」)もう一つ大事なことは、今の計算上で出るか出ないかということではなくて、実際に出さないことなんですよ。それはどういうことかと言うと、がんのリスクというのは放射線だけで起こされるものではありません。他にもいろいろな要因があるわけです。

福島:もちろん。だからと言って、

松本:それ(がんの様々なリスク)を減らせばよい。そしてもう一つ、医学で、密な健康診断とかをすること、あるいは病気を早く見つけることによって、治療の確率は上がります。そういうことで、トータルで最終的にリスクをゼロかマイナスにすることができます。(ここまで)

 

詳しくは当ブログのこちらの記事を。

 

松本氏は、医師でないにもかかわらず、現状ではまだ確認されていない「低線量被曝による発がんリスク」について、「もし存在するにしても早く見つけることが政治の役目だ」と、正鵠を射ている。こんなに優秀な学者を、頭の悪い反原発派は「御用学者」などとレッテルを貼り、彼の発言力を落とそうと必死である。

 

おい、反原発派よ、本当は、福島で早く放射線によるがん患者が出てほしいんだろ?そのためには、松本氏が言うような対策はジャマなんだろ?

 

 

そして、反原発派が騒いでいる間は、一切責任を取らない「自称科学者」という立場で、好き勝手なことを書いて銭を儲けようとしているのが、武田邦彦だということになるか。新潮もこう結んでいる。

 

根拠のない幻想も、繰り返し説かれるうちに人を洗脳しうることは、歴史が証明している。今、こんな主張を真に受けて多くの人が右往左往しているとは、まさしく日本の危機である。

 

まだまだ勢いが衰えない、山本太郎を始めとする「年間1mSv以上はダメ!」運動が、今後かえって子どもたちの発がん率を高めることとなる「魔女狩り」とならないことを祈っている。山本太郎も、少しは自分でいろいろ調べて考えてから発言しろ。ただ怒っていれば誰かが自分の話を聞いてくれると思ってる点は、マスコミから「マザコン」扱いされている、そのまんまの精神的幼児性をさらけ出しているだけだぞ。

 

 



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