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武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

「PCRは、感染症の検査に使ってはならない」 マリス博士の伝えたかったこと  大橋眞(感染症研究者・徳島大学名誉教授)

2020-09-19 | 社会批評



 PCRは、遺伝子の断片を調べるものであり、病原体ウイルスを検査ことには、適していません。PCRが、感度と特異性が非常に高いために、病原体ウイルスの検査にも使えるという誤解があるようです。

 PCRの発明者キャリーマリスも、PCRは、感染症の検査に使ってはならない」という趣旨の発言をされていたようです。この発言の出処について議論があるようですが、この発言の意味についてはあまり議論がされていません。今回の騒動の中心的役割を果たしているPCR検査の何が問題なのかを明らかにすることが必要です。

 PCRの検査する遺伝子断片は、わずか100塩基ほどの長さであり、PCRの高い特異性は、この範囲内のことにすぎません。全長3万塩基の新コロゲノムの300分の1に過ぎないのです。残りの300分の299の領域について、何の情報も得ることはできないのです。300分の1が似ているからと言って、全体が似ているという保証はどこにもないわけです。

 むしろ、病原性は強いといって恐れているウイルスを保有していれば、多くのPCR陽性者が無症状であるという事実を説明できません。PCRは、新コロウイルス以外のウイルスを引っかけていると考えたほうが自然です。ウイルス数も少ないことからも、病原性を有するとは考えられません。現在のPCR陽性者は、ほとんどが偽陽性の可能性が高いのです。これを明らかにするために残りの300分の299の情報を開示する必要があります。

 現在無症状感染者がたくさん出ているわけですから、その情報を集めることはできるはずです。もし、仮に完全に中国論文と一致したとしても、その病原性の確認が重要です。無症状と病原性の関係を明確にする必要があります。

 また、たんぱく質の構造に変化を与えない遺伝子の同義的置換は、理論的には、非常に多くの変異体があることになります。PCRで、確認できるのは、この変異体のごく一部に過ぎません。すなわち偽陰性が非常に多く発生する可能性があるのです。すべての変異体を検出するには、数万種以上のプライマーで検査を行う必要があります。しかし、これは実際には不可能でしょう。そのために、多量の偽陰性の発生は、避けられないのです。 

 このような偽陽性、偽陰性を防ぐには、PCRに反応するウイルスの現地調査、変異体の存在の地域分布などをあらかじめ調べておく必要があります。遺伝子バンクに登録されているのは、病原性ウイルスなど医学的に重要なものだけです。それ以外の無数とも言える常在ウイルスについては、遺伝子バンクには、基本的に何の情報もないのです。

 PCRを病原体ウイルスの検査に使うためには、このような地域ごとのウイルス分布についての基礎調査が必須です。しかし、このような調査は、莫大なお金と時間が必要です。病原性もよくわからないウイルスの調査を、莫大な予算をつかっておこなうのは現実的ではありません。したがって、PCRは、病原体ウイルスの検査に使えないのです。マリス博士の発言には、このような背景があるのです。


 

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