とてもありがたいことに、このブログを読んでいただいた方から、ご質問をいただきました。これから本格的にパネルシアターに取り組もうという方なのですが、その方はパネルボードの(向かって)左側に立ったほうが演じやすいとのことです。その場合は、作品によっては、絵人形を反転させて作らないといけない・・・ということを書いたのですが、その説明が少し分かり辛かったというか、つまり説明不足だったみたいですね。
そこで、できるだけ広く知られている作品を選んで、実際の絵人形の画像を参考にしていただきながら、ご説明してみたいと思います。
まず、こちらの画像をご覧ください。ご存知の方も多いでしょう。古宇田先生の名作のひとつである「しゃぼん玉とばせ」です。この作品の場合は、動物によって絵人形の向きが違います。仲良く遊んでいる雰囲気を出すためにも、パネルボードの真ん中に向かって、お互いの動物が向き合うように貼っていきます。互いの動物がソッポを向いているようでは困りますからね。そうしますと、この作品のような場合は、パネルボードのどちら側に立って演じても、特に問題はないということが言えると思います。ただし、最後に登場するぞうさんのように、手に持って動かしながら(演者も動きながら)登場させたりするのであれば、向かって左に立って演じる方は、絵人形を右向きに作ったほうが良いでしょう。ぞうさんを後ろ向きで登場させないために・・・。
次の作品も同様です。こちらをご覧ください。やはり古宇田先生の作品「きれいなお窓」です。この作品は歌に合わせて進めるのですが、ひとつひとつの絵人形を独立して、つまり特にお話のつながりがない形で登場させていきますから、これなどは、パネルボードのどちらに立って演じても問題のない作品の、代表的な例でしょう。「ポンポンポケット」とか「やおやのおみせ」なども同様です。
もうひとつ、こちらをご覧ください。ご存知「大きな大根」です。この作品(の絵人形)は、お話が向かって右から左へ展開していくように作られています。ですから、パネルボードの(向かって)左に立って演じる場合は、絵人形を反転させて作る必要が出てきます。おじいさん・おばあさん・むすめさん・いぬ・ねこ・ねずみの、合計6枚の絵人形です。下絵(型紙)通りに作ると糸止めの仕掛けで動く左手は、反転させて作れば右手ということになります。そして、まずパネルボードの左端に登場し、続いて大根抜きに参加するという展開になります。お話が、左から右へと流れていくわけです。
以上見ていただいたように、作品によっては絵人形を反転させて作る必要がある・・・という点は、ご理解いただけましたでしょうか?
この点さえ注意すれば、パネルボードのどちらに立って演じても、まったく問題はないように思います。ちなみに、絵人形の下絵(型紙)を左右反転させることは、とても簡単にできます。下絵(型紙)を、いったん裏からも透けて見えるような紙(トレーシング・ペーパーなど)に写し取り、それを裏返せば左右反転した下絵(型紙)に変身します。
舞台の上手・下手(かみて・しもて)に拘ることは、鉛筆や箸を持つ手を、右手だけに統一しようとすることに、少しだけ似ているように思います。一般的な演劇舞台のように、舞台の造りそのものが従来からの原則に則っているような場合、例えば下手(しもて)に花道が造られているとか、そういう建造物(固定物)としての舞台ならば、これは動かすことができませんから拘って当然です。しかし、パネルシアターにおける舞台(正確に言えば、舞台の一部分)となるパネルボードは、従来の演劇や人形劇などの舞台とは、まったく違うもののように思います。パネルボードの上や下から絵人形を登場させたりすることもあります。あるいは絵人形を手に持って、例えば踊らせたりするだけで、あえてパネルボードに貼らないこともあります。つまり、パネルボード自体に天地(上下)左右があるわけではなく、それを表現するのは演者自身と絵人形なのです。
何十年か前までは、左手で字を書いたり御飯を食べたりすることは、あり得ないことであるかのように言われていました。しかし、今は違いますよね。才能教育などのために、あえて左利きにしようとする風潮さえある、そんな社会になりました。
何だか変に大きな話になってしまいましたが、お伝えしたいことはひとつだけです。パネルシアターを演じるに当たっては、左右どちらに立つべきかを無理に決め付けることなく、演者ひとりひとりの個性に任せていけば良いのではないかということです。