先日、ホームセンターに行った時のこと。家電のコーナーでテレビを見ていたら、一瞬、場の雰囲気が変わったのに気がついた。『あれ?』と思って周りを見渡すと、ぼくのいる場所から少し離れた通路を歩いている、女性の後ろ姿が見えた。場の雰囲気を変えたのは、その女性が醸し出すオーラだった。そしてそのオーラに打たれたぼくは、すごい懐かしさを感じた。瞬時にそれが誰だかわかった。学生時代好きだった人だ。
『たしか最後に会ったのは、もう十年近くも前だ。しかし、何で彼女がこんな所にいるんだろう』
と思いながら見ていると、突然、
「おねがいだから、声をかけないで」
という声が聞こえてきた。その声は昔聞いたことのある声、そう彼女の声だった。だけど彼女は既に、ぼくから見えない所に移動している。周りを見ても誰もいないし、『空耳かな』と思った。しかし空耳にしては、はっきりした声だ。しかも動揺している波長まで伝わってきたのだ。ということは、テレパシーなのか。
まあ、ぼくとしては別に彼女に用はなかったし、追いかけてまで話すネタも持ち合わせてなかったので、その人の思い通りに関わらないでおいた。
しかし何でぼくは、その人の存在を感じ取ることが出来、さらに心の声まで聞こえてきたのだろうか。恋愛感情はとっくの昔に消え失せてしまっているので、その人に対する意識は既に敏感さを欠いているはずなのに。
『そういえば、その人との最初の出会いは、夢の中だったな。不思議な出会いだったので、現実にその人に会った時は、衝撃が走ったものだった。もちろん、それがきっかけで好きになったんだけど』、などと考えていくうちに、
『もしかしたら彼女とは、生まれる前から、潜在意識だとか魂だとかいう深い所で繋がっているのかもしれないな。そう捉えないと、出会いの時や今回の不思議な現象が理解できない』という考えに至った。
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