夏目漱石の「草枕」を読みながらふと思った。「漱石」というペンネームの由来についてだ。
「石を漱ぐ」とはどういう意味なのか、ほかに読みようがあるのかと思って調べたのは四半世紀ほど前の事だ。
インターネットの世界は誠にありがたく、すぐさまその回答を得ることが出来た。
賢明なる諸兄はすでにご存じの事かと思うが、これは漢詩の錯誤に由来していた。漱石はどうやら「錯誤」の言葉をさかてにとって自分のペンネームとしたらしい。
中国の故事に、「枕石漱水」(=流れに漱(くちすす)ぎ石に枕す)という言葉があり、「俗世間から離れて川の流れで口をすすいで、石を枕として眠るような引退生活を送りたい」という意であるという。
ある人物が自らも引退するにあたってこの言葉を引用したが、間違って「漱石枕流」としてしまった。
友人が間違いを見つけてはやし立てると、本人は「石で口を漱ぐのは歯を磨くため、流れに枕するのは耳を洗うため」と強弁した。
つまるところ「漱石枕流」は「負け惜しみ、頑固者」の意味となってしまった。
漱石はこれをよく承知したうえでペンネームとしたというが、今手元にある小説「草枕」の「枕」や「流=情に棹させば流される」という文字も案外「枕流」のこじ付けかもしれない。
古文を読んでいるとたまに「雪ぐ」という文字に出くわす。例えば「汚名を雪ぐ」といった具合だが、これは「すすぐ」というよりも「そそぐ」である。
「雪辱」という言葉があるが、同様の意味を持つ。これらの場合においては「そそぐ=すすぐ」は雪でなければならない。
降り積もる雪できれいに覆い隠そうとでもいうのであろう。
日本各地の寒波もそろそろ打ち止めに願いたいものだが、落雪事故で亡くなる人が出たり、路面凍結で交通事故が発生したり、こちらの汚名は隠し切れない現実だ。






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