私が花園に住んでいるころ本妙寺参道に入れ墨を入れたおじさんが住んでいて、今頃の季節になると団扇を持ってステテコ姿で表へ出て涼をとっていた。
当時70歳くらいではなかったかと思うが、張りのない皮膚の中にある入れ墨が痛々しかった。
挨拶をすると「あつかなあ、たまらねえな」と返してくれた。ときには朝から歯ブラシを咥えて立っているのも見かけた。
本妙寺参道はほとんどが何らかの商売のお店が並んでいたが、おじさんの家は弐間間口ほどの単なる住まいだったように覚えている。
ステテコや彼にも昭和立志伝
これは小沢昭一の俳句だが、まさにその通りの世界観であった。おじさんの生業が何であったのかは知る機会もなかったが、奇妙に入れ墨を入れたステテコ姿の小さなおじさんを思いだすのである。
本妙寺の頓写会が近くなってきたが、あそこに夜市が建ったりすると、あのおじさんがテントの奥に立っているのではないかと思ったものだ。
ステテコも最近は派手な柄で若者が普段着として使っているようだが、おじさんにはやはり昭和の白いステテコがお似合いだ。
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