方(彼)方より此人を頼ミ、内しようにて右之様子申こし、人
しちに御出候様にと度々ちやうこん申候へ共 三斎様御
為にあしく候まゝ、人質に御出候事ハいかやうの事候とも
中々御とうしんなきよし仰られ候、また其後まいり
申され候ハ、さ様に候ハゝうきた(宇喜田)の八良殿ハ与一郎様おく
さまニつき候て御一門中ニ而御座候間、八郎殿まて御出
候へハ、其分にてハ人質ニ御出候とハ世間にハ申ましく候
まゝ、さ様に被遊候へと申まいり候事
一御上様御意被成候ハ、うき田の八郎殿ハ尤御一門にて
候へ共、是も治部少と一味のやふに被聞召候間、それまて
御出候ても同前に候まゝ、是も中々御同心なく候ゆへ、
内せうにての分にてハ明埒申不申候事
一同十六日かの方よりおもてむきの使参候て、是非/\
御上様を人しちに御出し候へと、さなく候ハ押かけ候て
取候ハんよし申越候につき、少斎・石見申され候ハ、餘り申
度まゝの使にて候、此上ハ我々共是に切腹いたし候共
出し申ましき由申遺候、それゟ御屋敷中の者共覚悟
仕り居申候事
一御上様御意にハ誠押入候時は御自害可被遊候まゝ、其時
少斎奥へ参、御かいしやくいたし候様ふと被仰候、与一
郎様 御上様へも人しちに御出し有ましく候まゝ、是も
もろ共に御しかいなさるへきよし内々御やくそく御座候事