津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

夢酔独言

2006-02-09 23:31:06 | 書籍・読書
 昭和50年頃だと思う。東洋文庫の「夢酔独言」という本を購入している。勝海舟の親父さん小吉が書いたものだ。当時、江藤淳が「海舟余話」という本を出した際、一緒に購入したのだろう。

 坂口安吾は「堕落論」の中の「青春論」で、宮本武蔵と勝小吉とを対比して、次のように書いている。
   夢酔の覚悟に比べれば、宮本武蔵は平凡であり、ボンクラだ。武蔵六十
  の筆になるという「五輪書」と「夢酔独言」の気品の高低を見ればわかる。
  「五輪書」には道学的な高さがあり、「夢酔独言」には戯作的低さがある
  が、文章にそなわる個性の精神性深さというものは比すべくもない。
  「夢酔独言」には最上の芸術家の筆をもってようやく達しうる精神の高さ
  個性の深さがあるのである。

 この前後の文章と共に、武蔵を「虚仮」にしたとも思える有名な一文である。
久し振りに「夢酔独言」を読んだ。小吉のこの文章は、放蕩を尽くした故に達した無我の心境なのだろう。しゃべり言葉で書かれて、べらんめえで洒脱な文章は中々面白いのだが、安吾の論評を「お説ご尤も」というには、こちらがボンクラでついていけない。
敬愛してやまない安吾先生は、こんな文章をかいて読者をどぎまぎさせる。
コメント
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