ひとひらの雲

つれづれなるままに書き留めた気まぐれ日記です

義経の最期

2018-04-30 18:54:24 | 日記
 前回、『奥の細道』にある芭蕉の句から、義経の最期の地・高館(たかだち)へ思いを馳せましたが、今回は『平家物語』や『義経記(ぎけいき)』、『吾妻鏡(あづまかがみ)』、『玉葉(ぎょくよう・九条兼実の日記)』などから義経の最期を考えたいと思います。

 高館にある義経像


 まず義経が平泉へ行くまでの経緯ですけれど、これは梶原景時(かじわらかげとき)の讒言によって義経が頼朝の嫌疑をうけることとなり、ついには刺客が放たれるというところから始まります。武勲が称賛されるどころか、兄頼朝から迫害される立場になったことについて都の人々は理解しがたく、「勧賞(けんじょう)おこなはるべき処に、いかなる子細あってか、かかる聞えあるらんと、かみ一人(いちじん)をはじめ奉り、しも万民に至るまで不審をなす」と『平家物語』は語ります。『吾妻鏡』にもこのことは「伊予守義経を誅す可(べ)きの事」として「土佐房昌俊(とさのぼうしょうしゅん)を遣(つか)はさる」とあります。

 土佐房は捕らえられて梟首となりますが、頼朝から討手がかかることを察した義経は都を落ちていきます。その時後白河院から頼朝追討の院宣をもらうんですね。『玉葉』にも「伝へ聞く、頼朝追討の宣旨を下さると云々」とあります。
 ところが平家を打ち滅ぼしてからの義経には全くといってよいほど運がありません。大物(だいもつ)の浦から船出をすると大風が吹いて住吉の浦にうちあげられ、五百余騎いた軍勢も散り散りになってしまいます。これは平家の怨霊の祟りといわれました。次に吉野へ入るのですが、ここでは吉野法師に攻められ、奈良へ逃れれば奈良法師に攻められて都へ戻り、ついに平泉を目指すことになるのです。
 大物の浦については『玉葉』にも記事があり、「伝え聞く、義経、行家等、去る五日夜乗船し、大物辺に宿す、…夜半より大風吹き来たり、九郎等乗る所の船、併(しか)しながら損亡、一艘として全きもの無し。船の過半海に入る」とあります。

 絵巻の一部・大物の浦

 義経にとってさらに悪かったのは、頼朝の代官として北条時政が上洛し、義経追討の宣旨を申請したことです。それに対して後白河院はすぐに宣旨を下すんですね。義経に頼朝追討の宣旨を下してから十日もしないうちに、今度は義経追討の院宣を下したわけです。『玉葉』の作者九条兼実(かねざね)は「世間の転変、朝務の軽忽(けいこつ・きょうこつ)、之を以て察す可(べ)し」と批判しています。


 これが文治元年十一月のこと、それから一年以上かかって義経は平泉へ入っています。秀衡(ひでひら)に迎えられ、歓迎されて過ごした平穏な日々は短く、『吾妻鏡』では文治三年十月に秀衡が死去しています。
 そこで頼朝は思案するんですね。秀衡がいなくなったところで一族郎党が欠けることはあるまい。これらが義経の指揮のもとで戦をするならば、「日本国中の勢を以て、百年二百年戦ひ候とも、…容易(たやす)く打靡(なび)け給はん事叶(かな)ふまじく」(『義経記』)と考え、それより秀衡の子泰衡(やすひら)に義経を討たせた方がいいと考えるわけです。そして後白河院に、義経追討の院宣を泰衡に対して出させるんですね。ずるいです。


 『義経記』によると、院宣が下ったことを知り、泰衡が攻めてくることがわかっても、義経は応戦しようとはしませんでした。「さればとて、矢をも一つ放つべきにても候はず」とあって、自害する支度をします。恩を受けた秀衡の子に弓を引くのを憚ったともいえますが、院宣が下り、頼朝と敵対しては、逃げ隠れする場所などないと諦めたといった方がいいでしょうか。

 衣川の合戦が始まると武蔵坊たちは奮戦しますが、みな討死し、義経は北の方や子供たちとともに自害して果てます。『義経記』では久我大臣の姫となっているのですが、実際は河越重頼の娘で郷御前(さとごぜん)と呼ばれた方が北の方として最期をともにしたようです。


 さて、頼朝は義経の最期を聞いて何といったと思いますか。『義経記』にはこうあります。「頼朝が兄弟と知りながら、院宣なればとて、左右(そう)なく討ちぬること奇怪なれ」といって泰衡の使者を殺し、泰衡追討の軍を奥州へ向けるんです。義経を討つように自分で仕向けておきながら、討つと今度はそれをけしからんというわけです。怖いですね。今でもどこかにありそうな話ですけれど…。

 判官贔屓(ほうがんびいき)になる理由、お分かりいただけたでしょうか。

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