oregonian way of life. 

オレゴンでの学生生活から南下して社会人生活へ。IT産業でホットなサンフランシスコ・ベイエリアで地味~に文系の仕事してます

オーガニックは産業?運動?

2006-06-03 | 
アメリカで最近出版された『Organic, Inc.: Natural Foods and How They Grew(オーガニックInc.---自然食品はいかに成長したのか)』(写真上)。19世紀までさかのぼる起源から現代まで、オーガニック運動がどう成長(変遷?)したのかをレポートしています。現代オーガニック運動は元々、1970年頃に対抗文化の一環として始まりましたが、今では食品産業の主要部門になるまで急成長。先日、世界最大の小売業者であるウォール・マートが、オーガニック食品を売り出すとまで発表しました。ヒッピーが中心に始めた「怪しげな」オーガニック市場に、ウォール・マートが参入するまでになった・・・。これを成長と呼ぶのか変遷と呼ぶのかはともかく(筆者は「成長」と呼んでいますが)、この成長/変遷には色んな問題が絡んでいるようです。その問題のひとつが、この記事のタイトル。

「オーガニックは産業になったのか?それとも運動のままなのか?」 2004年にアメリカ中西部で開かれたオーガニック農業の会議で、ある参加者が1,500人の聴衆へ問いかけた疑問です。オーガニック「運動」参加者にとっては、オーガニック食品を栽培して消費者に届けるだけでは「オーガニック」とは言えないのです。作物を(出稼ぎ労働者などを使わず)自分たちだけで栽培し、それらを自分たちだけで消費するか、せいぜい地元で販売する。そうすると、巨大な食品産業が生産する農薬&添加物だらけの「プラスチック食品」に頼る必要がなく、食を自分たちだけでコントロールできる。自分たちは土に触れて、シンプルな生活を送る・・・。オーガニックとは、無農薬で作物を育ててそれを消費者に届けるだけではなく、社会の仕組みを変え、ライフスタイルや世界観を形成するイデオロギーそのものだったのです。

それが21世紀になった現在では・・・コカ・コーラ、ケロッグ、タイソン食品などの大企業もオーガニック市場に参入。多くの出稼ぎ労働者を雇って作物を大量生産し、巨大な流通ネットワークを通して製品を全国に送る。オーガニックの基準を含めた規制の取り決めにおいても、大企業の声が幅を利かすようになる・・・。オーガニック「運動」参加者からみれば、「そんなのオーガニックじゃない!」という事になるようです。

オーガニックは産業なのか、運動なのか?この問いかけこそが、わたしの町で大論争になったWhole Foods Market進出問題を理解する鍵かもしれません。オーガニック「運動」の成果として、ローカル経営の自然食品店が多くあるこの町。それらの自然食品店がこの町のアイデンティティである、と言い切っても差し支えないかもしれません。それらの運動に関わった人たち、またはそれらの自然食品店を愛する人たちにしてみれば、多くのローカル経営の自然食品店を統合して成長したWhole Foods Marketは、オーガニック「産業」の象徴。「身内の裏切り者」に他ならないのです。


わたし行きつけの自然食品店

今や巨大産業になったヨガもそうですが、金を持っている上流/中流階級に受け入れられたものが巨大市場に成長するのは、市場経済の定めなのかもしれません。そのような「現実」を受け入れず、30年以上前の理想論に固執するオーガニック「運動」支持者は、naiveで時代遅れ(anachronistic)なのでしょうか?

わたし自身、この問いに対する答えはすぐには出ません。その問いについてはゆっくり考えるとして、この『Organic Inc.』、アメリカにおけるオーガニック運動/産業の始まり、成長、そして変遷について興味ある方、一読をお勧めします(日本語版が出るのかどうかは知りません)。


(先日訪れたミネアポリスにあった、ある生協。以前紹介した、「運動系」の香りがした生協とは別です。対照的にこの生協、Whole Foods Marketみたいに垢抜けたスーパーマーケットのようでした。このような生協は、「運動」を支持する人から見たら邪道なのでしょうか?)

人気blogランキングへ

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。