児玉真の徒然

峠にたつとき
すぎ来しみちはなつかしく
ひらけくるみちはたのしい
(真壁仁 峠)

岩手県北上にて(北上、前沢、大船渡)

2011年05月04日 | 各地にて

先週は北上市にいって打合せ。北上市、奥州市、大船渡市で行う予定だった今年の事業の研修会を個々でやるはずだったのだけれど、震災で延期をすることにした。とはいえ、現地の雰囲気を知らないでやる事も不安があって一度様子を聞かせてもらおうという趣旨ででかけた。ちょうど東北新幹線が全通する直前で、羽田から臨時便で花巻空港へ。花巻空港を使うのは多分2度目。北上川の川に沿って作られた滑走路である。前の時には、ぐるっと北側の方に回って降りたような記憶があって、その真下に花巻農業高校が見える、という立地だったような気がするのだけれど(何しろ間違いなく20年以上昔のこと)。

北上のさくらホールは新しいホールだけれど、非常に熱心。出来る直前にNPOの人と市議会議員さんとがトリトンアーツネットワークを視察にきて色々と話をしていった事がある。特にトリトンのサポーターシステムに非常に興味を持って,感心してくださった記憶があるが、今回の震災についての岩手県の各会館の情報はここから聞いたことも多く、情報センター的な役割を持ってくださったと感じている。もちろん公文協の幹事である県民会館も各会館の被害状況を写真付きで情報収集し纏めてくれていて(今回さくらホールで頂いた)、それは有り難い情報だった。ここも、ロビーの天井から少しものが落ちてきたり下らしいが、もう回復している(多分5月から開館)。ここは「被災地ではない」という気持ちの持ち方でやろうとしているようだが、北上川沿いのさくらは満開でとてもきれいだったとはいえなかなか祭りにはならないみたいだ。

奥州市は合併で市内に開館がいくつもあるが(水沢とか)、前沢ふれあいセンターは小粒だが良い企画をしていたと記憶がある。今は地元商工会が指定管理を受けていて、事業についてはなかなか厳しいものがあるようだ。でも担当する二人は熱意がある。ここは隣の建物がまだ避難所になっていて、もう少し時間がかかるかも。前沢は4月9日の余震でのダメージがあって被害を受けた建物がそばにあるといっていたが、会館はそれほどではないようだ。

翌日大船渡を訪れた。途中陸前高田にもよったけれど、ここはテレビで映されているのと本当に同じ。海産物で観光地としても賑わっていたという話だけれど、やっとがれきが整理されたという段階。何もないので言葉もでない。

大船渡は比較的深い入り江の奥の町で、少なくともリアスホールのある入り江の南側は低いところとそのちょっと上との被害の落差が大きいという感じがした。高田とはやはり印象が違う。大船渡リアスホールはまだ出来てから数年しかたっていない新しいホール。新しいのと丘の中腹にあったおかげで津波の被害はなく、建物もそれほどではないようだけれど、舞台と客席の境目のあたりにダメージがあり、どの程度の修繕が必要かまだきちんと業者が来て把握するという段階に至っていなかった。会館もほぼ全部が避難所となっていて、会館の館長さんも担当者もその対応で事業どころではない感じ。避難所へのアーチストの訪問もいくつもあって、その対応もしているとのこと。有り難いけれども大変そう。ただ、今回の事業そのものへの意欲は強く感じられて力強い。7月に行う予定の研修会にも是非出たいと言っていて、実際のアーチストの訪問は12月はじめなので、意義のあることが出来そうな予感。沖縄の方なのでなんかウマが合いそうに思った。

大船渡へは行けて良かった。なんとなくだけれども感覚的に納得した事がいくつかある。到底東京にいては解らないと思う。楽観的過ぎても悲観的すぎてもいけないその感覚はやはり現場でしか感じられないように思う。中越の時にも1年半後とはいえ自家用車が土砂崩れに巻き込まれて川に落ちた現場の横を通った時に感じたある生々しさは強烈な印象だったが、そのことと音楽がどのようにコミュニケートできるのか・・・。それができる能力を持ったアーチストでないと超えられない事かもしれない。

今はいわきにいるけれど、いわきでも色々と動きがある。ただアリオスの事業として行うにはもう少し把握をして行かないといけないだろう。想像力の問題。