Liner Notes

素人感覚で自由にあれこれ思うことを綴ってみました!

§106「王妃マリー・アントワネット」遠藤周作【1980】

2020-06-30 | Book Reviews

 時は国王が絶対的な権力を行使したアンシャン・レジーム。中世より欧州に君臨した名家・ハプスブルク家最後の当主マリア・テレジアの娘、マリー・アントワネット。そして、うりふたつの容貌をもちながらも、生まれた時から孤独と貧困に耐え続けてきたマルグリット。
 
 そんな彼女に文字と言葉、そして信仰を教えた修道女・アニエスがつぶやいた言葉。

「社会の改革、貧しき者との連帯を伴わない信仰は一片の紙屑に過ぎぬような気さえした」(下巻p49)

「革命は正しい、でもそれは人間を尊重するためで、人間を侮辱するためにあるのではないんだわ」(下巻p326)

 生まれや身分による差別や偏見がもたらす妬みや怨みは、自由という名の下に無慈悲で理不尽な暴力を生み出しかねず、生まれや身分によらぬ平等な社会を実現するために戦う人々を抱擁する覚悟を顕したのが、三色のトリコロール「自由、平等、博愛」だったのかもしれません。

 マリー・アントワネットが断頭台の露に消えた時、うりふたつの彼女をあれだけ妬み、怨み続けたマルグリットが流した涙と「すべてが終わった」とつぶやいた言葉は、自らの無意識に潜む「影」との決別だったような気がします。

初稿 2020.6.30
於 奇跡の星の植物館(兵庫・淡路)
  ~マリー・アントワネットの庭~

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