Liner Notes

素人感覚で自由にあれこれ思うことを綴ってみました!

§100「死海のほとり」遠藤周作【1973】

2020-02-03 | Book Review

 海抜マイナス約400 m、地上で最も低い場所に位置する中東の塩湖「死海」。そのほとりから流れ込む塩分は、その土地で生きた人々の血と汗の歴史をたどり、とても深くそして厚く沈殿しているのかもしれません。

 奇跡を起こすこともできず、まわりからの期待を裏切り、誰からも見捨てられていくイエス・キリストを描く「群像」。そして、まわりから期待すらされず、なにもできない修道士の足跡を探す「巡礼」。時を隔てて織りなす二つの物語の舞台は死海のほとり。

 イエスや修道士のあるべき姿は、永い歴史のなかで教会や信者が意識的に作り出したものかもしれません。ひょっとしたら、その真の姿は人々の血と汗の歴史をともにたどり、人々の無意識に深くそして厚く沈殿しているのかもしれません。

 そのあるべき姿とは全く正反対の姿を描くことで、苦しみや悲しみをともに分かち合おうとする等身大の人間に迫ろうとしているような気がします。

初稿 2020.2.3

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